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アルコール関連認知症とは?
長期の大量飲酒が脳に与える障害
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
森本英雄さん(仮名・61歳)は30年以上、毎日焼酎を1本以上飲み続けてきました。「酒豪」として知られ、酒席では誰よりも場を盛り上げる存在でした。
50代後半から、変化が現れました。物忘れが目立ち始め、仕事のミスが増えました。「この前話したでしょ」と同僚に言われても覚えていない。書類を正しく処理できない。昔はそろばんが得意だったのに、簡単な計算もつかえるようになりました。
妻の洋子さんが連れていったもの忘れ外来で、認知機能検査を受けると中等度の低下が確認されました。MRIでは小脳・大脳白質の萎縮が目立ちました。血液検査でビタミンB1低値も確認されました。
「アルコール関連認知症」と診断された英雄さんに、主治医は明確に言いました。「お酒を完全にやめれば、一部の機能は回復する可能性があります。しかし飲み続けたら、これ以上悪化します」。
断酒支援クリニックと連携して断酒を開始した英雄さん。6ヶ月後、記憶の問題は少し改善し、歩行のふらつきも軽減しました。「もっと早くやめていれば」という後悔が、「今からでも遅くない」という前向きな気持ちに変わっていきました。
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基礎知識の解説
アルコール関連認知症とは
アルコール関連認知症は、長期の大量飲酒が脳に与えるダメージにより認知機能が低下する疾患です。アルコール自体の神経毒性・ビタミンB1欠乏(ウェルニッケ・コルサコフ症候群)・頭部外傷・肝性脳症など複数のメカニズムが重なります。断酒により進行を止め、一部の改善が期待できます。
主な症状
- 1記憶障害(特に最近の出来事)
- 2実行機能障害(計画・段取りの困難)
- 3小脳失調(ふらつき・歩行障害)
- 4末梢神経障害(手足のしびれ)
- 5処理速度・注意力の低下
- 6感情の変化(易怒性・抑うつ)
- 7社会的機能の低下
- 8飲酒への渇望(アルコール依存症の合併)
原因・メカニズム
エタノール自体の神経毒性(神経細胞膜の脂質溶解・グルタミン酸受容体の慢性変化)、ビタミンB1欠乏による乳頭体・海馬の障害、肝硬変による肝性脳症、低血糖・電解質異常、頭部外傷の繰り返しなどが複合して脳を傷めます。大脳白質・小脳・前頭葉が特に影響を受けます。
診断
飲酒歴の詳細な聴取が最も重要です(AUDIT-C、CAGE質問票)。認知機能検査・MRI・ビタミンB1・肝機能・電解質検査を行います。ウェルニッケ脳症の合併を必ず除外します。
治療・ケア
断酒が最大の治療——断酒支援クリニック・AA(アルコホーリクス・アノニマス)・抗酒薬(アカンプロサート・ナルトレキソン)・断酒補助薬(ノコサール)を活用します。ビタミンB1補充が必須です。認知リハビリ・作業療法が回復を支援します。
予後・経過
断酒後6〜12ヶ月で認知機能の一部(実行機能・記憶)が改善することがあります。ウェルニッケ・コルサコフ症候群が固定した場合は改善が困難です。断酒を維持できるかどうかが最大の予後規定因子です。
この疾患の重要ポイント
- •「断酒が唯一かつ最大の治療」——飲み続ければ確実に悪化する
- •ビタミンB1欠乏が合併していることが多い——同時に補充することが必須
- •断酒により一部の認知機能回復が期待できる——「今からでも遅くない」
- •アルコール依存症の治療なしに断酒は難しい——専門クリニック・支援グループとの連携を
- •家族も一緒に支援を受けることが断酒成功のカギ——「共依存」への対処も重要
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