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分類7自己免疫・炎症性疾患7分で読めます

自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎など)とは?

自己抗体が脳を攻撃する治療可能な脳炎

この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

大島彩さん(仮名・24歳)は大学4年生でした。就職活動を終えた秋、突然「おかしな言動」が始まりました。夜中に起き上がって部屋を徘徊し、口や手を繰り返し動かす(口唇・手の常動行動)。昼間は眠そうにしており、名前を呼ばれても反応が鈍い。 「精神科の病気では?」と最初は精神科を受診しましたが、「こんなに急速に変化する精神疾患は珍しい」と担当医が神経内科へ紹介しました。 脳脊髄液検査で「抗NMDA受容体抗体」が陽性でした。「抗NMDA受容体脳炎」——自己免疫性脳炎の中で最も多い疾患です。免疫系が自分の脳の受容体を攻撃していました。 MRIでは異常が乏しかったため、「MRIが正常なのに脳炎?」と両親は困惑しましたが、担当医は「自己免疫性脳炎はMRIが正常でも起きる」と説明しました。また「若い女性ではたまに卵巣奇形腫が発見されることがある」として骨盤MRIを撮ると、右卵巣に奇形腫が見つかりました。 ステロイド・免疫グロブリン静注療法、そして卵巣奇形腫の摘出手術を行いました。3ヶ月後、彩さんは大学に復学できました。「あのとき精神科だけで診ていたら、今の私はなかったかもしれない」と彩さんは言います。

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基礎知識の解説

自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎など)とは

自己免疫性脳炎は、脳の神経細胞受容体や膜タンパクに対する自己抗体が免疫系から産生され、脳を攻撃することで急性〜亜急性の精神症状・認知障害・けいれん・意識障害を引き起こす疾患です。抗NMDA受容体脳炎が最も多く、若い女性に好発し、悪性腫瘍(卵巣奇形腫)との関連があります。免疫療法で回復できる「治る認知症・脳炎」の代表例です。

主な症状

  • 1急性〜亜急性の精神症状(幻覚・妄想・行動異常)
  • 2認知機能低下・記憶障害
  • 3けいれん発作
  • 4口・手の常動行動(繰り返す無目的な動き)
  • 5意識障害・過眠
  • 6自律神経障害(頻脈・血圧変動・体温異常)
  • 7挿管が必要になるほどの重篤な呼吸障害(重症例)

原因・メカニズム

抗体の標的となる受容体・タンパクの種類によって多くのサブタイプが存在します。抗NMDA受容体抗体はグルタミン酸受容体NR1サブユニットに結合し、シナプス伝達を障害します。腫瘍関連例(傍腫瘍性脳炎)では腫瘍抗原に対する免疫反応が脳に交叉反応します。

診断

脳脊髄液・血清の自己抗体検査(抗NMDA受容体抗体・抗LGI1抗体・抗CASPR2抗体など)が確定診断に不可欠です。MRIが正常でも除外できません。EEGで異常(δ刷子波など)が確認されることがあります。女性では骨盤MRI・腹部エコーで腫瘍検索が必須です。

治療・ケア

第一選択:ステロイドパルス療法・免疫グロブリン大量静注・血漿交換。第二選択(難治例):リツキシマブ・シクロホスファミド。腫瘍関連例では腫瘍切除が治療に直結します。てんかん・精神症状の対症療法も並行して行います。

予後・経過

早期治療で多くの患者が回復します(完全回復〜軽度後遺症)。治療が遅れると回復に時間がかかり、後遺症が残ることがあります。再発例があり、長期フォローが必要です。

この疾患の重要ポイント

  • 「急速に悪化する若者の精神症状」——精神科疾患と思わず、自己免疫性脳炎を除外する
  • MRIが正常でも自己免疫性脳炎は起きる——脳脊髄液の自己抗体検査が必須
  • 抗NMDA受容体脳炎は若い女性に多く、卵巣奇形腫の検索が必要
  • 早期免疫療法で完全回復が期待できる「治る脳炎」——診断の遅れが予後を悪化させる
  • 「口や手を繰り返し動かす常動行動」は自己免疫性脳炎の特徴的なサイン
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