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自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎など)の重要ポイント
急速に悪化する若者の精神症状——精神科疾患と思わず抗NMDA受容体脳炎を必ず鑑別する
MRI正常でも自己免疫性脳炎は起きる——CSFの自己抗体検査(cell-based assay)が確定診断の要
EEGのextreme delta brush(デルタ刷子波)は抗NMDA受容体脳炎に特徴的なパターン
若い女性では骨盤MRIで卵巣奇形腫を必ず検索——腫瘍切除が根本治療となる
早期免疫療法(ステロイドパルス+IVIG)で完全回復が期待できる「治る脳炎」
抗精神病薬は常動行動を増悪させることがある——精神症状管理には注意が必要
再発率20〜25%のため、長期フォローとリツキシマブ等の第2選択療法の準備が重要
体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎など)とは
自己免疫性脳炎は、脳の神経細胞受容体や膜タンパクに対する自己抗体が産生され、脳を攻撃することで急性〜亜急性の精神症状・認知障害・けいれん・意識障害を引き起こす疾患群です。抗NMDA受容体脳炎が最も多く、若い女性に好発し、卵巣奇形腫などの悪性腫瘍との関連があります。MRIが正常でも発症し、精神科疾患と誤診されやすい点が特徴です。免疫療法と腫瘍切除により回復が期待できる「治る脳炎」の代表例であり、早期診断・早期治療が予後を大きく左右します。
主な症状
- 1急性〜亜急性の精神症状(幻覚・妄想・行動異常・興奮)
- 2認知機能低下・記憶障害(特に短期記憶の著明な低下)
- 3けいれん発作(難治性てんかんとして出現することがある)
- 4口・手の常動行動(繰り返す無目的な動き、抗精神病薬で増悪)
- 5意識障害・過眠・昏睡(重症例)
- 6自律神経障害(頻脈・血圧変動・体温異常・流涎過多)
- 7言語障害(言葉の減少・反響言語・無言症)
- 8挿管が必要になる重篤な呼吸障害(重症例)
- 9不穏・攻撃性・カタトニア(緊張病状態)
- 10睡眠障害(過眠・不眠の交互出現・概日リズムの乱れ)
原因・メカニズム
原因・メカニズム
抗NMDA受容体脳炎では、NMDA型グルタミン酸受容体のNR1サブユニットに対するIgG抗体が産生されます。この抗体が海馬・大脳皮質のNMDA受容体に結合し、受容体の架橋内在化(receptor internalization)を引き起こして受容体密度を低下させます。NMDA受容体機能の低下はグルタミン酸シナプス伝達の障害を生み、神経回路の過剰興奮(精神症状・てんかん)と抑制(認知機能低下・意識障害)の両方の症状が混在する原因となります。腫瘍関連例(傍腫瘍性脳炎)では、卵巣奇形腫内に含まれる神経組織がNMDA受容体を発現し、腫瘍抗原に対する免疫反応が脳のNMDA受容体に対する自己免疫反応を引き起こすと考えられています(分子模倣機序)。抗体のサブタイプ(IgG1/IgG3が主体)や補体活性化の有無が症状の重篤度に影響します。
診断
診断
Graus(2016)の自己免疫性脳炎診断基準では、①急性〜亜急性(3ヶ月以内)の発症、②精神症状・認知障害・けいれんのいずれかを含む神経症状、③脳脊髄液または血清の自己抗体陽性、④他疾患の除外が必要です。抗NMDA受容体抗体はcell-based assay(CBA)が最も感度・特異度が高く、脳脊髄液での検出が血清より信頼性が高いとされます。脳脊髄液では細胞数増多(WBC 5〜100/μL、リンパ球優位)を認めることが多いです。EEGの「extreme delta brush」パターンは抗NMDA受容体脳炎に特異性が高く、25%前後の患者に出現します。MRIはしばしば正常ですが、FLAIR/T2で辺縁系(海馬・扁桃体)の高信号を認めることがあります。若い女性では骨盤MRI・腹部超音波による卵巣奇形腫の検索が必須です。
治療・ケア
治療・ケア
第1選択免疫療法:ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン1g×3〜5日)、免疫グロブリン大量静注(IVIG 0.4g/kg×5日)、血漿交換(PE)のいずれか、または組み合わせで行います。腫瘍切除が治療の中心であり、卵巣奇形腫の腹腔鏡切除により自己抗体産生源を絶つことが根本治療となります。第2選択免疫療法(難治例・再発例):リツキシマブ375mg/m²×4回(週1回)またはシクロホスファミド500〜1000mg/m²を投与します。てんかん管理はレベチラセタム(500〜1500mg/日)が選択されますが、フェニトインは奏効しない場合が多いです。精神症状に対してはロラゼパム・クロナゼパムが使われ、抗精神病薬は常動行動を増悪させる可能性があるため慎重に使用します。重症例では気道確保・自律神経管理のためICU管理が必要です。
予後・経過
予後・経過
早期に免疫療法と腫瘍切除を行うことで、約80%の患者が完全回復または軽度後遺症にとどまります。治療開始が遅れると回復に時間がかかり、認知機能・記憶の後遺症が残りやすいです。再発率は約20〜25%であり、再発時は第2選択免疫療法が有効なことが多いです。診断から治療開始までの期間が短いほど(4週間以内)予後が良好であることが示されています(Titulaer 2013)。
自己免疫性脳炎(抗NMDA受容体脳炎など)の重要ポイント
急速に悪化する若者の精神症状——精神科疾患と思わず抗NMDA受容体脳炎を必ず鑑別する
MRI正常でも自己免疫性脳炎は起きる——CSFの自己抗体検査(cell-based assay)が確定診断の要
EEGのextreme delta brush(デルタ刷子波)は抗NMDA受容体脳炎に特徴的なパターン
若い女性では骨盤MRIで卵巣奇形腫を必ず検索——腫瘍切除が根本治療となる
早期免疫療法(ステロイドパルス+IVIG)で完全回復が期待できる「治る脳炎」
抗精神病薬は常動行動を増悪させることがある——精神症状管理には注意が必要
再発率20〜25%のため、長期フォローとリツキシマブ等の第2選択療法の準備が重要
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