分類3|感染症によるもの約7分で読めます
クロイツフェルト・ヤコブ病とは?
プリオンによる急速に進行する致死性疾患
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
橋本恵子さん(仮名・62歳)の夫・浩さんが「なんかおかしい」と言い出したのは2月のことでした。物忘れと、なんとなく様子が変、という程度でした。
しかし翌月には、歩き方がおかしくなり、物が二重に見える(複視)と言うようになりました。精神科を受診すると「うつ病では?」と言われましたが、恵子さんには違和感がありました。これほど急速に悪化するうつ病があるのか、と。
神経内科に紹介され、MRIで拡散強調画像に特徴的な異常が見られ、脳脊髄液検査で14-3-3タンパクが陽性となりました。脳波では周期性鋭波複合(PSD)が確認されました。診断は「クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)」——異常プリオンタンパクによる、治療法のない致死性脳変性疾患でした。
「どれくらい生きられますか」と恵子さんは聞きました。「多くの場合、発症から1年以内です」という答えでした。
浩さんは急速に悪化し、4ヶ月後には意識がなくなり、6ヶ月後に亡くなりました。恵子さんは「最初から最後まで一緒にいてあげられたことが、唯一の救い」と語ります。CJDは感染性を持つため、病院スタッフも防護を徹底していましたが、家族への通常の接触では感染しないと説明を受けました。
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基礎知識の解説
クロイツフェルト・ヤコブ病とは
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は、異常なプリオンタンパク(PrPSc)が脳内に蓄積するプリオン病の代表的な疾患です。急速に進行する認知症・ミオクローヌス・小脳失調などを呈し、ほぼ全例が発症から1〜2年以内に死亡します。孤発性(約85%)・遺伝性・獲得性(変異型CJD:牛のBSEが感染源)に分類されます。
主な症状
- 1急速に進行する認知症(週単位・月単位で悪化)
- 2ミオクローヌス(突然の筋肉のぴくつき)
- 3小脳失調(ふらつき・歩行障害)
- 4視覚症状(視力低下・複視・幻視)
- 5錐体路・錐体外路症状
- 6無動性無言(後期)
- 7てんかん発作
- 8自律神経障害
原因・メカニズム
正常なプリオンタンパク(PrPC)が異常な折り畳み構造(PrPSc)に変換され、連鎖的に周囲の正常プリオンを異常型に変えます。異常プリオンは脳内に蓄積し、神経細胞を死滅させます(スポンジ状脳変性)。抗体・免疫系では排除できず、現時点では有効な治療薬がありません。
診断
MRI拡散強調画像での大脳皮質・基底核の「リボンサイン」、脳波でのPSD(周期性鋭波複合)、脳脊髄液の14-3-3タンパク・RT-QuIC陽性などが診断基準に含まれます。確定診断には脳生検または剖検が必要です。
治療・ケア
根治療法は存在しません。苦痛の緩和(ミオクローヌスにクロナゼパム・バルプロ酸)と緩和ケアが主体です。プリオン病は感染性を持ちますが、通常の接触・飛沫では感染しません。手術器具・血液・脳脊髄液による医原性感染に注意が必要です。
予後・経過
孤発性CJDは中央値5〜6ヶ月で死亡(1年以内が約90%)。変異型CJDは約13〜14ヶ月。ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)は数年の経過をたどります。
この疾患の重要ポイント
- •「急速に進行する認知症+ミオクローヌス」——週単位の悪化はCJDを強く疑う
- •MRIのリボンサイン・脳波のPSD・脳脊髄液RT-QuICが診断の三本柱
- •通常の生活での感染リスクはほぼゼロ——家族・介護者への正確な情報提供が重要
- •根治療法がなく緩和ケアが中心——早期から緩和ケアチームとの連携を
- •特定生物由来製品(硬膜移植・成長ホルモン)による獲得性CJDの報告があり、既往歴確認が重要
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