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分類3感染症によるもの6分で読めます

神経梅毒(麻痺狂)とは?

梅毒が脳に達することで起こる認知障害

この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

武田清二さん(仮名・55歳)は、10年前に梅毒の治療を受けたことがありましたが、「完治した」と思って以後の検査は受けていませんでした。 50代に入り、性格が変わったと周囲から言われるようになりました。いつも穏やかだったのに、突然激しく怒る。大言壮語が増え、「自分は特別な使命がある」と言い始めました。記憶の問題も出てきて、仕事での失敗が目立ちます。 精神科を受診すると双極性障害が疑われましたが、血液検査で梅毒の抗体(RPR・TPHA)が強陽性と出ました。神経内科に紹介され、脳脊髄液検査を行うとそこでも梅毒トレポネーマの活動が確認されました。「神経梅毒(進行麻痺)」という診断でした。 「梅毒が認知症を引き起こすなんて知らなかった」という清二さんに、担当医はペニシリンによる治療を開始しました。「早期に発見できれば、治療で改善する可能性があります」という言葉が、清二さんと家族の希望になりました。 2週間のペニシリン大量静注後、清二さんの言動は少し落ち着いてきました。記憶障害は一部残りましたが、仕事への復帰が視野に入ってきました。「感染症だから治る可能性があるという点が、他の認知症と大きく違う」と主治医は説明しました。

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基礎知識の解説

神経梅毒(麻痺狂)とは

神経梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)が中枢神経系に侵入することで引き起こされる感染症性認知症です。未治療または治療不十分な梅毒患者が感染数年〜数十年後に発症します。「進行麻痺」と呼ばれる精神症状・認知症型が代表的で、治療可能な認知症の一つです。

主な症状

  • 1人格変化(誇大妄想・脱抑制・怒りやすさ)
  • 2認知機能低下(記憶・判断力・計算)
  • 3誇大妄想(「自分は偉大な人物だ」)
  • 4神経症状(構音障害・書字障害・アーガイル・ロバートソン瞳孔)
  • 5精神症状(うつ・躁状態)
  • 6脱力・麻痺
  • 7てんかん発作
  • 8梅毒性髄膜炎の症状(頭痛・発熱・項部硬直)

原因・メカニズム

梅毒トレポネーマが血液脳関門を通過し、脳実質・髄膜・血管に慢性炎症を引き起こします。大脳皮質(特に前頭葉)の神経細胞が障害され、精神症状・認知症が生じます(進行麻痺)。梅毒性髄膜血管炎では血管が侵され、脳梗塞を来すこともあります。

診断

血液検査でRPR(非特異的)・TPHA/FTA-ABS(特異的)梅毒抗体を確認します。脳脊髄液検査でWBC増多・タンパク増加・梅毒抗体陽性を確認することで神経梅毒と診断します。MRIで髄膜炎・白質病変・梗塞巣を確認します。

治療・ケア

ペニシリンG大量静注(2週間)が第一選択です。適切な治療で多くの場合に改善が期待できます(「治る認知症」の一つ)。ペニシリンアレルギーにはセフトリアキソンが代替として使用されます。治療後も経過観察(脳脊髄液検査の定期的な再検)が必要です。

予後・経過

早期治療(進行麻痺発症前)では完全回復が期待できます。進行麻痺まで進行した場合でも、治療で一部改善・進行停止が期待できます。未治療では数年で死亡します。

この疾患の重要ポイント

  • 「治る認知症」の一つ——感染歴のある認知症は梅毒血液検査を必ず行う
  • 誇大妄想・人格変化・認知症の三徴が進行麻痺の特徴
  • アーガイル・ロバートソン瞳孔(光に反応しないが輻輳には反応する)が神経梅毒の古典的サイン
  • 梅毒は現在も増加傾向——若年者・高齢者を問わず感染リスクを過小評価しない
  • パートナーへの通知・検査が感染拡大防止に重要
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