分類3|感染症によるもの約5分で読めます
クリプトコッカス髄膜炎とは?
真菌による髄膜炎が引き起こす認知障害
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
石田修一さん(仮名・46歳)は臓器移植後、免疫抑制薬を服用していました。3週間前から続く頭痛と微熱を「移植後の体調不良」と思っていましたが、頭痛が日増しに悪化し、視力の異常を感じて受診しました。
脳脊髄液は墨汁染色で陽性——クリプトコッカス属の酵母が多数確認されました。「クリプトコッカス髄膜炎」でした。担当医は「この菌は土壌・鳥の糞に普通に存在しますが、免疫が正常な人では感染しません。免疫抑制薬で防御が下がっていたことで感染した可能性があります」と説明しました。
アムホテリシンBとフルシトシンの点滴治療が開始されました。2週間の急性期治療の後、フルコナゾールへ切り替えて長期維持療法が続きます。
治療中に「頭蓋内圧が上がっている」として、繰り返す腰椎穿刺で脳脊髄液を排出する処置が行われました。「この病気は菌を殺すだけでなく、頭の中の圧力を下げることも治療の一部」だと担当医は説明しました。
退院後、修一さんには集中力低下・記憶の問題が残りました。「感染が完全に治っても、脳への影響は残ることがある」という現実と向き合いながら、フルコナゾールの内服を続けています。
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基礎知識の解説
クリプトコッカス髄膜炎とは
クリプトコッカス髄膜炎は、Cryptococcus neoformans(またはC. gattii)という真菌が髄膜・脳実質に感染する重篤な日和見感染症です。HIV/AIDS・臓器移植後・ステロイド長期使用者など免疫低下状態の人に多く発症します。亜急性の経過で頭痛・発熱・頭蓋内圧亢進が進行し、治療しなければ致死的です。
主な症状
- 1亜急性の頭痛(2〜6週間かけて増悪)
- 2発熱(しばしば軽度)
- 3頭蓋内圧亢進(視力障害・複視・嘔吐)
- 4髄膜刺激症状
- 5意識障害・錯乱
- 6脳神経麻痺
- 7認知機能低下(後遺症)
- 8視力障害(頭蓋内圧亢進による視神経障害)
原因・メカニズム
Cryptococcus neoformansは土壌や鳥の糞(特にハト)に存在し、胞子を吸入することで感染します。免疫機能が正常な人では自然に排除されますが、免疫低下状態では増殖し、血行性に中枢神経系に達します。莢膜多糖体が免疫回避を助け、脳内での増殖を可能にします。頭蓋内圧亢進が致命的な合併症となります。
診断
脳脊髄液の墨汁染色・クリプトコッカス抗原(ラテックス凝集法・LFA)で診断します。培養検査で確定診断します。血清クリプトコッカス抗原も有用です。MRIで脳実質病変・水頭症を確認します。
治療・ケア
急性期:アムホテリシンBリポソーム製剤+フルシトシン(2週間)を標準とします。続いてフルコナゾールへ切り替えて維持療法(最低8週間)を行います。頭蓋内圧管理(繰り返す腰椎穿刺・シャント術)が予後改善に重要です。免疫低下の基礎疾患の管理が再発予防に必要です。
予後・経過
死亡率はHIV患者での適切な治療で10〜20%ですが、治療が遅れた場合や重篤な免疫低下では著しく悪化します。後遺症(認知障害・視力障害)が残ることがあります。維持療法中断後の再発リスクがあります。
この疾患の重要ポイント
- •免疫低下患者(HIV・移植後・ステロイド使用者)の慢性頭痛はクリプトコッカス髄膜炎を除外する
- •脳脊髄液の墨汁染色とクリプトコッカス抗原検査が迅速診断に有用
- •「菌を殺す」ことと「頭蓋内圧を下げる」ことが治療の2本柱
- •鳩など鳥の糞との接触を免疫低下者は避ける——予防的な衛生管理が重要
- •維持療法の長期継続が必要——自己中断による再発が危険
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