結核性髄膜炎とは?
結核菌が髄膜に感染して起こる重篤な疾患
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
結核性髄膜炎について、「受診すべきか迷っている」「診断結果を聞いたが理解できない」という段階の疑問を、認知症を専門とする医師が丁寧に回答します。
結核性髄膜炎の重要ポイント
「2週間以上続く頭痛+微熱+項部硬直」は結核性髄膜炎を疑う——通常の細菌性髄膜炎より亜急性経過が特徴
髄液所見:糖低下(血糖比40%未満)・タンパク高値・ADA上昇が三点セット
GeneXpert MTB/RIFで迅速診断が可能だが感度60〜70%——陰性でも臨床的に疑えば治療開始
デキサメタゾンの早期追加がRCTで死亡率低下を証明(Thwaites 2004, N Engl J Med)
治療期間は最低12ヶ月——途中中断は耐性化と再燃の危険
閉塞性水頭症にはVPシャント術が必要なことがある——6ヶ月後のMRI再評価が重要
BCG未接種・HIV感染・東南アジア・アフリカ出身者はハイリスク群として意識する
体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
結核性髄膜炎とは
結核性髄膜炎は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が髄膜・脳底槽に感染する亜急性〜慢性の細菌性髄膜炎です。発熱・頭痛・項部硬直が2〜3週間かけて緩徐に進行し、放置すると脳神経麻痺・水頭症・脳梗塞へと悪化します。BCG未接種者・HIV感染者・免疫低下者がハイリスクです。抗結核4剤(HRZE)とデキサメタゾンの早期投与が生命予後と後遺症を改善します。
主な症状
- 1亜急性の発熱・頭痛(2〜3週間続く緩徐な進行)
- 2項部硬直・髄膜刺激症状(Kernig徴候・Brudzinski徴候)
- 3意識障害(傾眠から昏睡まで)
- 4脳神経麻痺(動眼神経麻痺による複視・外転神経麻痺・顔面神経麻痺)
- 5視力低下・視神経萎縮(頭蓋内圧亢進による)
- 6てんかん発作
- 7閉塞性水頭症(後期合併症:頭痛増悪・嘔吐・歩行障害)
- 8脳梗塞(結核性血管炎による局所神経脱落症状)
- 9認知機能障害・記憶障害(後遺症)
- 10聴力障害(第VIII脳神経の基底槽炎による巻き込み)
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原因・メカニズム
原因・メカニズム
肺結核巣から血行性に播種した結核菌が、脳・髄膜の軟膜下または上衣下に小病巣(Rich focus)を形成します。このRich focusが破裂し結核菌がくも膜下腔に放出されることで結核性髄膜炎が発症します。基底槽での肉芽腫性炎症(乾酪壊死を伴う肉芽腫)が脳神経(特にII・III・IV・VI・VII・VIII)を圧迫し、脳神経麻痺を引き起こします。基底槽に貯留した炎症性滲出物がくも膜下腔でのCSF吸収を妨げることで交通性水頭症が生じるのが大部分ですが、中脳水道や第四脳室出口が滲出物や室上衣炎により狭窄・閉塞すると非交通性(閉塞性)水頭症を来すこともあります。また基底動脈・中大脳動脈分枝にHeubner動脈炎様の血管炎が起こり、虚血性脳梗塞をもたらすことがあります。これらの複合した機序が多彩な神経症状を生み出します。
診断
診断
Thwaites(2002)の診断スコアリングシステムでは年齢・症状の持続期間(病悩期間)・末梢血白血球数・髄液白血球数・髄液中好中球比率の5項目を点数化し、結核性髄膜炎と細菌性髄膜炎を鑑別します。髄液所見はリンパ球優位の細胞増多・糖低下(血糖比40%未満)・タンパク高値が典型的です。髄液ADA値上昇(>10U/Lで感度78%・特異度91%)が結核性を強く示唆します。GeneXpert MTB/RIFは髄液での感度60〜70%で迅速診断に有用ですが、陰性でも除外できません。培養確定まで6〜8週間かかるため、臨床的に疑った場合は確定診断を待たずに治療を開始することが原則です。MRIでは基底槽の造影効果・結核腫・脳梗塞・水頭症が確認されます。
治療・ケア
治療・ケア
強化療法(2ヶ月):イソニアジド300mg/日・リファンピシン600mg/日・ピラジナミド25mg/kg/日・エタンブトール15mg/kg/日の4剤を同時投与します。維持療法(10ヶ月):イソニアジド+リファンピシンの2剤を継続し、合計12ヶ月の治療期間とします。デキサメタゾン(重症度により開始用量・投与期間は異なり、重症例は0.4mg/kg/日で6〜8週間、軽症例は0.3mg/kg/日で4週間などとされる)の早期追加は死亡率を有意に低下させることがThwaites 2004のN Engl J Med掲載RCTで証明されています。閉塞性水頭症が進行した場合は脳室腹腔シャント術(VPシャント)が必要になることがあります。薬剤耐性結核が疑われる場合は抗菌薬感受性試験の結果に基づいてレジメンを変更します。
予後・経過
予後・経過
早期治療開始例での死亡率は10〜30%ですが、来院時の意識障害が重篤な場合や免疫低下者では50%以上となります。生存者の20〜50%に神経学的後遺症(認知機能障害・てんかん・脳神経麻痺・水頭症)が残ります。デキサメタゾン早期使用と意識清明での早期診断が後遺症を減少させる最も重要な因子です。
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