体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
正常圧水頭症とは
正常圧水頭症(NPH)は、脳脊髄液の循環障害により脳室が拡大し、脳が圧迫されることで生じる認知症です。「歩行障害・認知症・尿失禁」の三徴が特徴で、脳室腹腔シャント術(VP シャント)で症状が改善する「治る認知症」の代表例です。高齢者に多く、アルツハイマー病と誤診されることがあります。
主な症状
- 1歩行障害:小刻み・すり足・磁気歩行(床に吸いついたような歩き)
- 2認知症:記憶・注意・実行機能の低下(比較的軽度)
- 3尿失禁:頻尿・急迫性尿失禁
- 4歩行障害が三徴の中で最初に現れることが多い
- 5認知症は比較的緩徐な進行
- 6表情の乏しさ・動作の緩慢化
原因・メカニズム
脳脊髄液は脈絡叢で産生され、クモ膜顆粒で吸収されます。NPHでは吸収の障害(または産生過剰)により脳室内に液が貯留し、脳室が拡大します。拡大した脳室が脳実質(特に歩行・排尿・認知に関わる領域)を圧迫し、機能障害が生じます。多くは特発性ですが、くも膜下出血・外傷・髄膜炎が原因となる二次性もあります。
診断
MRIで脳室拡大(Evans指数>0.3)と脳脊髄液の流れの乱れ(DESH:sulcal effacement with high-convexity)を確認します。タップテスト(30mL腰椎穿刺)での歩行改善が治療効果予測に重要です。脳室ドレナージテストも行われます。
治療・ケア
脳室腹腔シャント術(VPシャント)が標準治療です。脳室腰椎シャント術(LPシャント)も選択肢です。タップテストで改善が見られた場合、手術効果が期待できます。歩行障害は最も改善しやすく、認知症・尿失禁も改善が期待できます。
予後・経過
手術後に50〜70%の患者で症状の改善が見られます。病状が進行する前に手術を受けると改善率が高いです。シャントの機能不全・感染などの合併症リスクがあります。
正常圧水頭症の重要ポイント
「歩行障害・認知症・尿失禁」の三徴——特に「磁気歩行」はNPHを強く示唆
タップテスト(腰椎穿刺30mL)後に歩行が改善したら手術が有望
「治る認知症」の代表——アルツハイマーと誤診して手術機会を逃さないことが重要
歩行障害の改善が最も著明で、認知症・尿失禁も改善する
早期手術が予後を左右——「歳のせい」と放置しないことが大切