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分類5脳の物理的な障害・圧迫5分で読めます

慢性硬膜下血腫とは?

頭を打った後に血腫が形成される治療可能な疾患

この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

杉山昇さん(仮名・80歳)は1ヶ月前に転倒し、頭を縁石で軽く打ちましたが、「大したことない」と病院には行きませんでした。その後しばらくして、娘の幸恵さんが「お父さん、最近変じゃない?」と気づきました。 右手が動かしにくそうにしている。ろれつが少し回りにくい。「おじいちゃん、大丈夫?」と孫に言われるほど、ぼんやりしていることが増えていました。「なんか最近頭が重いんだよな」と昇さん自身も言います。 救急病院でCTを撮ると、硬膜(脳を覆う膜)と脳の間に三日月形の血の塊が溜まっていました。「慢性硬膜下血腫」——転倒時の衝撃で脳の表面の血管が切れ、1ヶ月かけてゆっくりと血が溜まって、脳を圧迫していた状態でした。 局所麻酔で頭に小さな穴を開け、たまった血を吸い出す「穿頭術」を受けました。手術は30分ほど。その日の夕方には昇さんの言葉が戻り、右手の動きも改善していました。 「こんな簡単な手術でこんなに良くなるとは」と幸恵さんは驚きました。「転んだときにちゃんと病院に来ていれば、もっと早く治せたのに」という反省と、「でも今からでも間に合ってよかった」という安堵が入り混じっていました。

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基礎知識の解説

慢性硬膜下血腫とは

慢性硬膜下血腫は、頭部への軽微な外傷後(転倒・頭部打撲)に硬膜と脳の間にゆっくりと血液が貯留し、数週間〜数ヶ月後に脳を圧迫して認知症様症状・運動障害・頭痛などを引き起こす疾患です。穿頭術(小さな穴から血を抜く)で多くの場合に劇的に改善する「治る認知症」の代表例です。

主な症状

  • 1認知機能低下(記憶・集中力・判断力)
  • 2頭痛(持続性・緩徐に増悪)
  • 3片側の手足の脱力・しびれ
  • 4ろれつが回りにくい
  • 5歩行障害
  • 6意識障害(重篤例)
  • 7「なんとなくおかしい」という緩徐な変化
  • 8転倒・頭部打撲から1〜3ヶ月後に発症することが多い

原因・メカニズム

頭部への軽微な衝撃で架橋静脈(硬膜と脳をつなぐ細い静脈)が破綻し、硬膜下腔に少量の出血が生じます。この出血周囲に外膜(血腫膜)が形成され、滲出液が蓄積して血腫が徐々に拡大します。高齢者は脳が萎縮して硬膜下腔が広く、架橋静脈が伸びて切れやすいため発症リスクが高いです。抗凝固薬使用者でリスクが増加します。

診断

頭部CT(または MRI)で硬膜下の三日月形の血腫を確認します。受傷直後は等吸収域で見えにくいことがあり、MRIが有用です。頭部打撲歴が明確でないことが多く、問診で積極的に確認します。

治療・ケア

中等度〜重篤例:穿頭洗浄術(局所麻酔で頭蓋骨に小さな穴を開け、血腫を吸引・洗浄)が第一選択です。手術後の血腫再貯留が10〜20%あり、再手術が必要なことがあります。軽症例:保存的治療(経過観察・トラネキサム酸内服)が選択肢となります。

予後・経過

穿頭術後の予後は一般的に良好で、多くの患者が術前の状態に回復します。高齢・重篤な意識障害・基礎疾患がある場合は予後が悪化します。再発予防のため抗凝固薬・抗血小板薬の再開タイミングを慎重に判断します。

この疾患の重要ポイント

  • 「1〜2ヶ月前に転んだ高齢者の認知症様症状」——慢性硬膜下血腫を必ず除外する
  • 「軽く打っただけ」という転倒でも数ヶ月後に発症する——小さな受傷を見逃さない
  • 穿頭術という比較的小さな手術で劇的に回復——「治る認知症」の代表
  • 抗凝固薬・抗血小板薬使用者は特にリスクが高い——転倒後は積極的にCTを撮る
  • 再発率10〜20%——術後も数ヶ月の経過観察が必要
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