着替えやすい服を選ぶ(前開き、ゴム等)
自立を支援する衣類の工夫
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
着替えやすい服(前開き、マジックテープ、ゴムウエストなど)を選ぶことで、自立を支援できます。
体験談
母は認知症が進んでから、ボタンやファスナーの服を嫌がるようになりました。着替えに時間がかかり、イライラして途中で諦めてしまうこともありました。
ケアマネージャーさんのアドバイスで、前開きでマジックテープやスナップボタンの服、ゴムウエストのズボンに変えました。すると、母は自分一人でスムーズに着替えられるようになり、「一人でできた」と自信を取り戻しました。
服選びの工夫で、母の自立を支援できたことが嬉しかったです。
— 80歳の母(アルツハイマー型認知症)を在宅介護する55歳の娘
詳しく知る
認知症が進行すると、手指の細かい動作(巧緻性)が低下し、ボタンやファスナーの操作が難しくなります。また、着替えの手順を忘れてしまうこともあります。
これは筋力の低下が主な原因ではありません。アルツハイマー型認知症では、動作の手順を計画・実行する働きを担う頭頂葉(特に角回を含む領域)に病変が及びやすく、「失行(しっこう)」と呼ばれる状態が起こります。手や指の力・感覚は保たれているのに、「ボタンをつまむ→穴に合わせる→押し通す」という一連の動作の組み立てがうまくいかなくなるのです。ボタンと穴の位置関係をとらえる視空間認知の障害や、複数の手順を順序立てて進める実行機能の低下も同時に関わります。
着替えやすい服の特徴:
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前開き: 頭からかぶるタイプより、前開きの方が着やすい。
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マジックテープ: ボタンの代わりにマジックテープやスナップボタン。
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ゴムウエスト: ファスナーやベルトではなく、ゴムウエストのズボンやスカート。
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伸縮性のある素材: 体にフィットし、着脱しやすい。
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大きめサイズ: きつい服は着脱が困難。ゆったりしたサイズを選ぶ。
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シンプルなデザイン: 複雑なデザインは混乱を招く。
服の選び方一つで「できないこと」が「できること」に変わる場合があります。本人の自尊心を守るためにも、着替えやすさを意識した服選びを検討してみてください。
実践のステップ
前開きの服を選ぶ
ボタンをマジックテープやスナップボタンに変更
ゴムウエストのズボンやスカートを用意
伸縮性のある素材を選ぶ
ゆったりしたサイズを選ぶ
靴は脱ぎ履きしやすいスリッポンタイプに
介護用品店で専用の衣類を探す
注意点
ただし、本人の好みも大切です。着やすさだけでなく、本人が気に入るデザインや色も考慮しましょう。また、季節に合った素材を選び、体温調節に配慮してください。失行による着替えづらさと、関節の痛みや麻痺による着替えづらさは見分けが必要です。手を動かす際に痛がる様子や、左右どちらかの腕・手だけ動きが悪い場合は、失行ではなく身体的な原因の可能性があるため、服の工夫の前に医師に相談してください。
応用・バリエーション
介護用品店では、見た目は普通の服でも、着脱しやすい工夫がされた衣類が販売されています。パジャマや下着なども、介護用のものを選ぶと便利です。
まとめ
このヒントのポイント
手指の細かい動作が困難に
原因は筋力低下ではなく「失行」(頭頂葉の障害による動作計画の障害)
視空間認知・実行機能の低下も関わる
前開き、マジックテープ、ゴムウエストを選ぶ
伸縮性があり、ゆったりしたサイズ
自立を支援する衣類選び
本人の好みも尊重
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