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外出前の準備で安心感を与える

事前の声かけと持ち物確認で不安を軽減

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

前日に伝えただけでは、当日には忘れてしまっていることがあります。当日の朝や出発直前に繰り返し声をかけ、持ち物を一緒に確認しながら準備することで、見通しが持て、不安を軽減できます。

体験談

母(80歳、アルツハイマー型認知症)を病院に連れて行く日、朝になって突然「今日はどこに行くの、なんで急に」と、母がひどく不安そうな様子を見せました。実は前日の夜に「明日は病院に行こうね」と伝えてはいたのですが、母の記憶には残っていなかったようです。

急かされるように身支度をさせられ、理由もよく分からないまま外に連れ出される形になった母は、車の中でもずっと落ち着かない様子で、「本当に病院なの」と何度も繰り返し尋ねてきました。私自身も余裕がなく、つい「さっき言ったでしょう」と強い口調になってしまいました。

訪問看護師さんに相談したところ、「前日の説明だけでなく、当日の朝、さらに出発直前にも、繰り返し同じ内容を伝えてあげてください。持ち物も一緒に確認しながら準備すると、見通しが持てて安心しやすくなります」とアドバイスされました。

次の外出では、朝食後に「今日は10時に病院に行きますよ」と伝え、出発の30分前にも「そろそろ病院に行く準備をしましょうね」と声をかけ、一緒に上着やお財布を確認しながら支度を進めました。母は落ち着いた様子で身支度を終え、車の中でも穏やかに過ごしてくれました。

80歳の母(アルツハイマー型認知症)を介護する52歳娘

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なぜ事前の声かけが重要なのか

認知症になると、新しい情報を記憶に留めておく力(短期記憶)が低下しやすくなります。前日に「明日は病院に行く」と伝えても、翌朝にはその記憶が失われていることが少なくありません。

本人にとって、理由も分からないまま急に身支度をさせられ、外に連れ出されることは、大きな不安や混乱を引き起こします。見通しが持てないことへの不安は、時に強い抵抗や拒否として表れることもあります。繰り返し、タイミングを変えて伝えることは、本人が状況を理解し、心の準備をするための重要な配慮です。

安心して外出準備をする工夫

1複数回、タイミングを変えて伝える

前日だけでなく、当日の朝、出発の30分前など、複数のタイミングで同じ内容を繰り返し伝えましょう。

2一緒に持ち物を確認する

上着、お財布、保険証など、必要な持ち物を一緒に確認しながら準備することで、外出の見通しが具体的になり、安心感につながります。

3シンプルで具体的な言葉で伝える

「今日は10時に病院に行きますよ」など、時間や行き先を具体的に、短い言葉で伝えましょう。

4焦らず、本人のペースで準備を進める

急かすと不安や混乱を強めることがあります。時間に余裕を持ったスケジュールを組み、本人のペースに合わせましょう。

5出発直前にもう一度確認する

「準備はできましたか、では行きましょうか」と、出発の合図となる声かけを添えると、心の切り替えがしやすくなります。

💬 「さっき言ったでしょう、と言ってしまいました」

介護経験者からのアドバイス

「前日に伝えたから大丈夫だと思い込んでいました。当日に不安そうにする母に対して、つい『さっき言ったでしょう』と言ってしまい、後で反省しました。

複数回に分けて伝え、持ち物を一緒に確認するようにしてからは、母の外出前の不安が大きく減りました。忘れていることを責めるのではなく、繰り返し伝えることを前提にすることが大切だと学びました。」

外出が難しい様子を見せる場合の工夫

  • 無理に急がせず、少し時間をおいてから再度声をかける
  • 外出の目的を、本人にとって前向きな言葉で伝える(「お花を見に行きましょう」など)
  • どうしても難しい場合は、日程の変更も検討する

こんな時は専門家に相談

  • 繰り返し伝える工夫をしても、外出前の不安や混乱が強く続く
  • 外出そのものへの拒否が著しく、生活に必要な通院なども難しくなっている

こうした場合は、ケアマネジャーや医師に相談し、外出の頻度や方法について見直しを検討してください。

まとめ:繰り返し伝えることが、安心につながる

前日に伝えただけでは、当日には忘れてしまっていることがあります。複数回、タイミングを変えて伝え、持ち物を一緒に確認しながら準備することが、本人の不安を和らげ、落ち着いた外出につながります。

実践のステップ

  1. 前日だけでなく当日の朝、出発30分前など複数回に分けて外出内容を伝える

  2. 上着や財布、保険証など必要な持ち物を一緒に確認しながら準備する

  3. 時間や行き先を具体的かつ短い言葉で伝える

  4. 急かさず本人のペースに合わせて時間に余裕を持って準備する

  5. 出発直前に『では行きましょうか』と声をかけ心の切り替えを促す

注意点

繰り返し伝える工夫をしても外出前の不安や混乱が強く続く場合、外出そのものへの拒否が著しく通院などに支障が出ている場合は、ケアマネジャーや医師に相談し、外出の頻度や方法について見直しを検討してください。

応用・バリエーション

言葉での説明が伝わりにくい場合は、行き先の写真やイラストを見せながら説明する、実際に着る服やバッグを前もって用意しておくなど、視覚的な手がかりを併用すると効果的です。

まとめ

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最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編)認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版協同医書出版社 (2023)

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