分類4|代謝・内分泌・栄養の異常約6分で読めます
副腎白質ジストロフィーとは?
脂肪酸代謝異常による白質変性疾患
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
中川誠二さん(仮名・35歳)は、10歳の息子・太一の「学校の成績が突然落ちた」「歩き方がおかしい」という訴えに驚きました。半年前まで活発だった太一が、授業中に聞き返すことが増え、視力が落ちたと言います。
小児神経科を受診し、MRIで大脳白質後部に広範な変性が確認されました。「副腎白質ジストロフィー(ALD)」の疑いで血液検査を行うと、超長鎖脂肪酸(VLCFA)が著明に高値でした。
「X染色体連鎖の遺伝性疾患です。お父さんからではなく、お母さんを通じて遺伝します。お父さんが同じABCD1遺伝子の変異を持っているかもしれません」と医師は言いました。
誠二さん自身が検査を受けると、同じ遺伝子変異が確認されました。誠二さんは現在まで神経症状は出ていませんが、副腎機能の低下が見つかりました。「自分が同じ遺伝子を持っているとわかったとき、複雑な気持ちでした」と誠二さんは振り返ります。
太一には骨髄移植(造血幹細胞移植)が急いで検討されましたが、「大脳の病変が広範に広がっていたため、移植のタイミングを逸してしまった」という現実がありました。現在、太一は特別支援学校に通いながら、徐々に進行する症状と向き合っています。
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基礎知識の解説
副腎白質ジストロフィーとは
副腎白質ジストロフィー(ALD)は、ABCD1遺伝子の変異により超長鎖脂肪酸(VLCFA)の代謝が障害され、脳の白質・副腎に蓄積するX連鎖性の代謝疾患です。小児型(大脳ALD)は5〜12歳に急速進行する白質脳症を引き起こし、成人型(副腎脊髄ニューロパチー)は20〜40代に緩徐進行する脊髄症を呈します。
主な症状
- 1小児大脳型:行動変容・学習障害・視力低下
- 2小児大脳型:歩行障害・聴覚障害
- 3小児大脳型:急速な神経退行・痙攣
- 4成人脊髄型:痙性対麻痺(脚の突っ張り・歩行障害)
- 5成人脊髄型:末梢神経障害・膀胱直腸障害
- 6副腎不全(皮膚色素沈着・倦怠感)
- 7認知機能低下(特に小児型では著明)
原因・メカニズム
ABCD1遺伝子変異によりペルオキシソーム膜のABC輸送体が機能せず、VLCFAがペルオキシソームでβ酸化されずに蓄積します。VLCFAが白質ミエリン・副腎皮質に蓄積し、炎症・変性を引き起こします。小児大脳型では急速な炎症性脱髄が特徴的で、成人型は非炎症性変性が主体です。
診断
血漿VLCFAの著明な上昇が診断の第一歩です。ABCD1遺伝子変異の確認で確定診断します。MRIで大脳白質後部(頭頂後頭部)の特徴的な病変を確認します。副腎機能検査(コルチゾール・ACTH)が副腎不全の評価に重要です。
治療・ケア
小児大脳型の早期(症状が軽度の時期):同種造血幹細胞移植が進行を止める可能性があります(タイミングが重要)。ロレンツォの油(VLCFAを低下させる特殊な油の混合物)は予防的効果の可能性があります。副腎不全:コルチゾール補充が必要です。成人型にも造血幹細胞移植の効果が研究されています。
予後・経過
小児大脳型は適切なタイミングでの移植がなければ数年以内に重篤な神経障害・死亡に至ります。成人脊髄型は緩徐進行で、数十年の経過をたどります。
この疾患の重要ポイント
- •「学校でのパフォーマンス低下+MRIの白質後部病変」を見たら小児ALDを疑う
- •造血幹細胞移植はタイミングが全て——白質病変が軽度の早期段階でのみ有効
- •X連鎖性——母親が保因者で、息子の50%に発症。父の遺伝子変異を持つ娘は保因者になる
- •副腎不全が神経症状に先行することがある——ホルモン補充で副腎クリーゼを予防
- •「ロレンツォの油」は映画で有名になったが、予防的効果は限定的——過信しない
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