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分類4代謝・内分泌・栄養の異常6分で読めます

ウィルソン病とは?

銅の代謝異常による肝臓・脳への障害

この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

藤田祐介さん(仮名・19歳)は高校時代から「なんか手が震える」「字が上手く書けない」という症状がありました。受験のプレッシャーかな、と思っていましたが、大学に入学してからも改善しません。 ある日、眼科で目の検査をしてもらった際、眼科医が「カイザー・フライシャー輪がありますね」と指摘しました。角膜の周縁部に茶色の輪(銅の沈着)が見えるというのです。 神経内科を紹介され、血液検査で血清セルロプラスミン低値、24時間尿中銅排泄量著増が確認されました。MRIでは基底核と視床に信号異常が見られました。「ウィルソン病」の診断でした。 「銅の代謝に関わるタンパク(ATP7B)を作る遺伝子に変異があるため、銅が肝臓・脳・目などに蓄積してしまう」と説明されました。「治療を始めれば銅を除去できます。ただし一生続ける必要があります」。 D-ペニシラミン(銅キレート薬)による治療を開始しました。半年後、祐介さんの手の震えはかなり改善し、字も書けるようになりました。「早期発見・早期治療が大切な疾患です。あの眼科の先生に感謝しています」と祐介さんは言います。

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基礎知識の解説

ウィルソン病とは

ウィルソン病は、ATP7B遺伝子の変異により銅の胆汁排泄が障害され、肝臓・脳・角膜などに銅が蓄積する常染色体劣性遺伝の代謝疾患です。10〜40代に発症することが多く、神経症状(振戦・構音障害・認知機能障害)・肝症状・眼症状(カイザー・フライシャー輪)が特徴です。早期治療で進行を止められる「治る認知症」の一つです。

主な症状

  • 1神経症状:振戦・ジストニア・構音障害
  • 2神経症状:歩行障害・協調運動障害
  • 3認知機能低下・実行機能障害
  • 4精神症状:人格変化・抑うつ・精神病様症状
  • 5肝症状:肝炎・肝硬変・肝不全
  • 6カイザー・フライシャー輪(角膜の銅沈着)
  • 7溶血性貧血
  • 8腎障害(ファンコーニ症候群)

原因・メカニズム

ATP7B遺伝子変異により肝細胞内の銅輸送体が機能しなくなり、銅の胆汁への分泌が障害されます。余剰の銅が肝臓に蓄積し、さらに血液を介して脳(基底核・視床)・角膜・腎臓に沈着します。銅は酸化ストレスを引き起こし、神経細胞・肝細胞を障害します。

診断

血清セルロプラスミン低値・24時間尿中銅排泄増加・カイザー・フライシャー輪の確認で臨床診断します。ATP7B遺伝子検査で確定診断します。肝生検での銅定量も有用です。「10〜40代の神経症状・精神症状」は必ずウィルソン病を鑑別に入れます。

治療・ケア

銅キレート療法(D-ペニシラミン・トリエンチン)または亜鉛製剤(亜鉛は銅の腸管吸収を阻害)が治療の中心です。食事での銅制限(レバー・貝類・ナッツ・チョコレートを制限)も重要です。肝不全が進行した場合は肝移植が根治療法です。

予後・経過

早期発見・早期治療で神経・肝症状の大幅な改善が期待できます。治療を中断すると急激な悪化(急性肝不全・神経症状の増悪)が起きることがあり、一生涯の継続が必要です。

この疾患の重要ポイント

  • 「若年者の神経症状・精神症状」は必ずウィルソン病を除外する
  • カイザー・フライシャー輪(角膜の茶色い輪)が診断の重要なサイン——細隙灯検査で確認
  • 治療可能な代謝性疾患——早期治療で神経・肝障害の回復が期待できる
  • 治療を一生続けることが必要——自己中断による急激な悪化に注意
  • 家族(兄弟姉妹)への遺伝子検査・スクリーニングが感染者の早期発見につながる
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