分類1変性性認知症8分で読めます医師査読済 · 2026年4月

アルツハイマー型認知症とは?

最も多い認知症。脳にアミロイドβが蓄積する

穏やかな光の差し込む居間で、高齢の女性と家族が一緒に写真を眺めている温かい情景
記憶が少しずつ遠ざかっても、共に過ごす時間は確かにそこにある
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

田中みよ子さん(仮名・75歳)の変化に最初に気づいたのは、娘の恵子さんでした。 「お母さん、昨日も同じこと言ってたよ」。何気なく言ったその言葉に、みよ子さんは少し傷ついた様子を見せましたが、翌日にはまた同じ話を繰り返しました。近所のスーパーへの道を間違え、自宅の鍵をしまった場所が分からなくなる。そんなことが続くようになったのは、2年ほど前からのことです。 恵子さんが本当に心配になったのは、母が長年続けていた俳句の教室を突然「もうやめる」と言い出したときでした。理由を聞いても「なんとなく」と繰り返すだけ。後から教室の仲間に聞くと、みよ子さんは毎回同じ俳句を発表しており、自分でも気づいていなかったようでした。 もの忘れ外来を受診すると、MRI検査で海馬の萎縮が見つかり、認知機能検査でも記憶力の低下が確認されました。診断は「アルツハイマー型認知症の初期」。みよ子さんは「そんなはずはない」と最初は受け入れられませんでしたが、恵子さんが「一緒に向き合っていこう」と手を握ると、静かに涙をこぼしました。 今は薬物療法を始めながら、週2回のデイサービスに通っています。俳句は続けています。先生が毎回そっと前回の作品を教えてくれるので、みよ子さんは「また良い句が浮かんだ」と笑顔で発表できるのです。

基礎知識の解説

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も多く、全体の約60〜70%を占めます。脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、神経細胞が徐々に死滅することで記憶や思考力が低下します。発症は主に65歳以降ですが、若年性(65歳未満)のケースもあります。

主な症状

  • 1同じことを何度も聞いたり話したりする(エピソード記憶の障害)
  • 2最近の出来事を忘れるが、昔の記憶は比較的保たれる
  • 3日付・曜日・場所の感覚が薄れる(見当識障害)
  • 4物の置き場所を忘れる、探し物が増える
  • 5複雑な計算や段取りが難しくなる(実行機能障害)
  • 6言葉が出てこず、会話に詰まることが増える
  • 7趣味・活動への関心が薄れ、ふさぎこむことがある

症状の進行

初期発症〜数年
  • 最近の出来事を忘れる(エピソード記憶障害)

  • 同じことを何度も聞く・話す

  • 日付や曜日が分からなくなる

  • 慣れた場所で道に迷う

  • 財布や鍵の置き場所を頻繁に忘れる

中期3〜10年
  • 家族の名前や顔が分からなくなる

  • 着替えや食事など日常動作に介助が必要

  • 会話が成り立ちにくくなる(言葉が出ない)

  • 徘徊・幻覚・妄想(物盗られ妄想など)が現れる

  • 排泄の失敗が増える

後期10年以降
  • 寝たきりになることが多い

  • 言葉がほとんど出なくなる

  • 嚥下(飲み込み)が困難になる

  • 誤嚥性肺炎のリスクが高まる

  • 全面的な介護が必要

※ 進行速度・症状の現れ方は個人差が大きく、必ずしも順序通りに進むとは限りません。

原因・メカニズム

脳内でアミロイドβペプチドが異常に蓄積し「老人斑」を形成します。これに続いてタウタンパク質の異常(神経原線維変化)が起こり、神経細胞が死滅します。記憶の中枢である海馬が最初に障害を受けるため、記憶障害が初発症状として現れます。病変は徐々に脳全体に広がり、言語・判断・行動など様々な機能が失われていきます。発症の10〜20年前からアミロイドの蓄積が始まるとされています。

診断

問診と認知機能検査(MMSE・HDS-Rなど)でスクリーニングを行います。MRIで海馬の萎縮を確認し、PET検査でアミロイドの蓄積を可視化することも可能です。血液検査でアミロイドβやタウを測定する新しい検査法も普及しつつあります。他の治療可能な認知症との鑑別が重要です。

治療・ケア

根治療法はまだありませんが、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)やメマンチンが進行を遅らせます。2024年には抗アミロイド抗体薬(レカネマブ)が日本でも承認され、早期での使用が始まっています。非薬物療法として認知リハビリ・運動・音楽療法なども有効です。介護環境の整備と家族支援も不可欠です。

予後・経過

発症から進行のペースには個人差があり、一般的に診断後7〜10年程度で生活全般への支援が必要になります。早期発見・早期介入により、QOLを長く保つことが可能です。

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