分類1変性性認知症3分で読めます医師査読済 · 2026年8月25日

アルツハイマー型認知症とは?

最も多い認知症。脳にアミロイドβが蓄積する

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

穏やかな光の差し込む居間で、高齢の女性と家族が一緒に写真を眺めている温かい情景
記憶が少しずつ遠ざかっても、共に過ごす時間は確かにそこにある
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

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体験談・具体的な事例

同じ話を一日に何度も繰り返すようになった母親を心配し、もの忘れ外来に付き添った50代の息子が、診察室で聞かされた病名。

半年ほど前から、母(78)は同じ話を一日に三度も四度も繰り返すようになった。「さっき言ったでしょう」と指摘しても、本人は初めて話すつもりで平然としている。 きっかけは、実家に立ち寄った息子が、食卓に同じ日付の電気代の領収書が何枚も重ねて置かれているのに気づいたことだった。通帳を確認すると、同じ振込を二週続けて行っている一方で、別の支払いはすっかり忘れて延滞の督促状が届いていた。本人に指摘すると「歳のせいで少し忘れっぽくなっただけ」と取り合わず、不機嫌になって話をそらした。 もの忘れ外来を受診すると、長谷川式認知症スケールは30点満点中18点。数分前に提示された三つの単語を後から思い出す課題がほとんどできず、今日の日付も曖昧だった。頭部MRIでは側頭葉内側部、とりわけ海馬の萎縮が両側性に目立ち、脳血流検査では頭頂葉から後部帯状回にかけての血流低下が確認された。 診断はアルツハイマー型認知症。医師からは「新しい出来事を覚える力から徐々に失われていく、緩やかに進む変化です」と説明された。息子には、母の性格や物腰がこれまでとほとんど変わっていないことがかえって意外だったが、それもこの病気の初期に典型的な特徴だと知らされた。

基礎知識の解説

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も多く、全体の約60〜70%を占めます。脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、神経細胞が徐々に死滅することで記憶や思考力が低下します。発症は主に65歳以降ですが、若年性(65歳未満)のケースもあります。

主な症状

  • 1同じことを何度も聞いたり話したりする(エピソード記憶の障害)
  • 2最近の出来事を忘れるが、昔の記憶は比較的保たれる
  • 3日付・曜日・場所の感覚が薄れる(見当識障害)
  • 4物の置き場所を忘れる、探し物が増える
  • 5複雑な計算や段取りが難しくなる(実行機能障害)
  • 6言葉が出てこず、会話に詰まることが増える
  • 7趣味・活動への関心が薄れ、ふさぎこむことがある

症状の進行

初期発症〜数年
  • 最近の出来事を忘れる(エピソード記憶障害)

  • 同じことを何度も聞く・話す

  • 日付や曜日が分からなくなる

  • 慣れた場所で道に迷う

  • 財布や鍵の置き場所を頻繁に忘れる

中期3〜10年
  • 家族の名前や顔が分からなくなる

  • 着替えや食事など日常動作に介助が必要

  • 会話が成り立ちにくくなる(言葉が出ない)

  • 徘徊・幻覚・妄想(物盗られ妄想など)が現れる

  • 排泄の失敗が増える

後期10年以降
  • 寝たきりになることが多い

  • 言葉がほとんど出なくなる

  • 嚥下(飲み込み)が困難になる

  • 誤嚥性肺炎のリスクが高まる

  • 全面的な介護が必要

※ 進行速度・症状の現れ方は個人差が大きく、必ずしも順序通りに進むとは限りません。

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ご家族やご自身に当てはまる症状があれば、認知症を専門とする医師にオンラインで相談できます。

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原因・メカニズム

アミロイドβの蓄積

脳内でアミロイドβペプチドが異常に蓄積し、「老人斑」と呼ばれる沈着物を形成します。発症の10〜20年前からこの蓄積が始まるとされています。

神経細胞の死滅

続いてタウタンパク質の異常(神経原線維変化)が起こり、神経細胞が徐々に死滅していきます。

症状の広がり方

記憶の中枢である海馬が最初に障害を受けるため、記憶障害が初発症状として現れます。病変は徐々に脳全体に広がり、言語・判断・行動など様々な機能が失われていきます。

診断

問診・認知機能検査

MMSE・HDS-Rなどの検査でスクリーニングを行います。

画像検査

MRIで海馬の萎縮を確認し、PET検査でアミロイドの蓄積を可視化することも可能です。

血液検査

アミロイドβやタウを測定する新しい検査法も普及しつつあります。

鑑別診断

他の治療可能な認知症との鑑別が重要です。

治療・ケア

根治療法はまだありませんが、以下の対応で進行を緩やかにし、生活の質を保つことができます。

薬物療法

コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)やメマンチンが進行を遅らせます。抗アミロイド抗体薬(レカネマブ)は2023年9月に日本で承認(同年12月保険適用)され、早期での使用が始まっています。

非薬物療法

認知リハビリ・運動・音楽療法なども有効です。

生活支援

介護環境の整備と家族支援も不可欠です。

予後・経過

進行のペース

発症から進行のペースには個人差があり、一般的に診断後7〜10年程度で生活全般への支援が必要になります。

早期介入の効果

早期発見・早期介入により、QOLを長く保つことが可能です。

似た症状の疾患との違い

疾患名見分け方のポイント
レビー小体型認知症発症初期から認知機能の変動、具体的で構築された幻視、パーキンソニズム、REM睡眠行動障害といった中核症状が目立ち、記憶障害はアルツハイマー型より軽度で経過初期には前景に立たないことが多い。
前頭側頭型認知症記憶障害に先立って脱抑制・常同行動・共感低下などの人格・行動変化が前景に立ち、MRIでは海馬より前頭葉・側頭葉前方の萎縮が優位な点で区別できる。
正常圧水頭症小刻み・すり足歩行や尿失禁が認知機能低下と同時期かそれ以前に出現し、髄液排除試験(タップテスト)で症状が一時的に改善する点が鍵になる。
多発梗塞性認知症(血管性認知症)脳卒中エピソードに一致した階段状の悪化や、麻痺・構音障害などの局所神経症状を伴うことが多く、MRIで複数の梗塞巣・白質病変を認める点で、アルツハイマー型の緩徐進行性の経過と区別できる。

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