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基礎知識の解説
レビー小体型認知症とは
レビー小体型認知症(DLB: Dementia with Lewy Bodies)は、認知症全体の15〜20%を占めるアルツハイマー型に次いで多い変性性認知症です。脳内の神経細胞にαシヌクレインからなる「レビー小体」が広範囲に蓄積し、認知・精神・運動・自律神経の四領域にわたる多彩な症状を呈します。特徴は、リアルで鮮明な幻視、時間帯によって大きく揺れ動く認知機能の変動、パーキンソン症状(小刻み歩行・筋固縮)、REM 睡眠行動障害(夢に合わせて叫ぶ・暴れる)の四つです。パーキンソン病認知症(PDD)とは連続スペクトラムと考えられており、認知症が先行する場合に DLB と診断します。好発年齢は 70〜80 歳代で男性にやや多いとされています。
主な症状
- 1鮮明でリアルな幻視(人・動物・虫・小さな子供などが繰り返し見える)
- 2認知機能の顕著な日内・日間変動(良い時間帯と混乱する時間帯が交互に出現)
- 3パーキンソン症状:小刻み歩行・無動・筋固縮(初期は振戦が目立たないことも多い)
- 4REM 睡眠行動障害:睡眠中に夢の内容に合わせて大声を出す・手足をばたつかせる
- 5繰り返す原因不明の転倒・失神・立ちくらみ(自律神経障害による起立性低血圧)
- 6自律神経症状:頑固な便秘・発汗異常・血圧変動
- 7うつ状態・強い不安感・アパシー(無気力)
- 8抗精神病薬への過敏反応:少量でも重篤なパーキンソン症状悪化・意識障害・転倒が生じる(危険)
- 9嗅覚低下(アルツハイマーよりも早期から出現しやすい)
- 10注意機能・視空間認知の低下(アルツハイマー型より前面に出やすい)
症状の進行
リアルな幻視(人や動物が見える)
寝ている間に大声を出す・暴れる(REM睡眠行動異常症)
日によって認知機能が大きく変動する
立ちくらみや失神(自律神経障害)
動作が遅くなる・手が震える(パーキンソン症状)
転倒リスクが高まる
幻視への反応が強くなる(怖がる・話しかける)
抑うつや無気力が目立つ
日常動作に介助が増える
歩行困難・寝たきりに近い状態
嚥下障害による誤嚥性肺炎が増える
言葉でのコミュニケーションが困難
全面的な身体介護が必要
※ 進行速度・症状の現れ方は個人差が大きく、必ずしも順序通りに進むとは限りません。
原因・メカニズム
原因・メカニズム
αシヌクレインというタンパク質が神経細胞内で異常に凝集・折り畳みを起こし、「レビー小体」と呼ばれる封入体を形成します。レビー小体は大脳新皮質(前頭葉・頭頂葉・後頭葉)・辺縁系・脳幹(黒質・迷走神経背側核)・自律神経節に広がります。黒質のドーパミン神経が変性するとパーキンソン症状が出現し、コリン神経(Meynert 基底核)の障害が認知機能・注意機能を低下させます。後頭葉の視覚処理野が侵されると幻視が起こりやすくなり、睡眠調節に関わる脳幹網様体の障害が REM 睡眠行動障害の原因となります。αシヌクレインの病理変化はパーキンソン病(PD)・多系統萎縮症(MSA)と共通するシヌクレイノパチーの範疇に入ります。
診断
診断
2017年の DLB コンソーシアム第4次コンセンサス報告(McKeith IG et al., Neurology 2017)に基づいて診断します。「確実」の臨床診断には2つの中核症状、または1つの中核症状+1つのバイオマーカーが必要です。
幻視(鮮明でリアル)・認知機能変動・パーキンソン症状・REM 睡眠行動障害(多くは DLB 発症の 10 年以上前から出現する)。
① DaT スキャン(123I-FP-CIT SPECT):線条体ドーパミントランスポーターの取り込み低下 ② 心臓 MIBG シンチグラフィ:心/縦隔比(H/M 比)の低下(交感神経変性を反映)③ ポリソムノグラフィー:REM 睡眠中の筋緊張消失なし(RBD の確認)。
認知機能検査ではアルツハイマー型と比較して視空間認知・注意機能の低下が目立ちます。
治療・ケア
治療・ケア
根治療法はなく症候別対症療法が中心です。
コリンエステラーゼ阻害薬のドネペジル(5〜10mg/日)が認知機能と幻視の改善に有効で、DLB への保険適用があります。ガランタミン・リバスチグミンも使用されます。
L-ドーパを低用量(100〜150mg/日)から慎重に開始します。ドーパミンアゴニストはより慎重な使用が必要です。
クロナゼパム(0.5mg 就寝前)が有効ですが、転倒リスクに注意。メラトニン(0.5〜3mg)も選択肢となります。
ハロペリドール等の定型抗精神病薬はレビー小体型では致死的な過敏反応(高度のパーキンソン症状悪化・意識障害・高体温)を引き起こすことがあるため、原則禁忌です。クエチアピンなど非定型抗精神病薬も慎重に使用します。
生活リズムの規則化、照明の調整(暗い場所で幻視が増悪するため)、環境の単純化が幻視軽減に役立ちます。
予後・経過
予後・経過
平均罹患期間はアルツハイマー型と同程度の 7〜8 年とされますが、個人差が大きく 3〜20 年の幅があります。認知機能の変動と幻視は早期から出現し、パーキンソン症状は中期以降に前面に出ることが多いです。転倒による骨折・誤嚥性肺炎・自律神経障害(脱水・感染)が予後を悪化させる主な要因です。抗精神病薬の誤投与による急速悪化にも注意が必要です。家族介護者の心理的負担が大きく、症状の変動に振り回される消耗感に対するサポートが特に重要です。
レビー小体型認知症の重要ポイント
「幻視」は本人にはリアルな体験——「そんなものいない」と否定せず、「怖かったね」と共感的に対応する
認知機能の日内変動はレビー小体型の本質——「良い時間帯」(多くは午前中)を活かしたケアを計画する
抗精神病薬(ハロペリドール・クロルプロマジン等)は原則禁忌——重篤な副作用で急速悪化するリスクがある
REM 睡眠行動障害(夢を演じる寝言・寝暴れ)はDLB発症の 10 年以上前から出現しうる最初のサイン
DaT スキャンと心臓 MIBG シンチグラフィが診断を強く支持するバイオマーカー——受診前に検査の説明をしておく
パーキンソン病との鑑別ポイント:認知症が先行(≤1年以内にパーキンソン症状)なら DLB、運動症状が先行するなら PD
ドネペジルはアルツハイマー型同様に DLB にも保険適用あり——認知症状だけでなく幻視の改善効果も期待できる
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