分類1|変性性認知症約5分で読めます
嗜銀顆粒性認知症とは?
高齢者に多い、ゆっくり進行する認知症
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
山田静枝さん(仮名・83歳)は、近所では「穏やかなお婆さん」として知られていました。ところが80歳を過ぎたころから、性格が少しずつ変わっていきました。
「なんでこんなことするの!」——些細なことで激しく怒り、後から「さっき怒ったっけ?」と覚えていません。怒りやすくなったこと以外には、日常生活は比較的普通に送れていました。物忘れはあるものの、名前や日付はだいたいわかり、買い物もできます。
娘の美佐子さんが「認知症かもしれない」と連れていったもの忘れ外来では、認知機能検査は軽度低下の範囲内でした。「アルツハイマーとは言えないが、年齢相応以上の変化がある」という評価でした。
静枝さんが亡くなった後、解剖検査を希望した家族に、大学病院の病理医から説明がありました。脳内に「嗜銀顆粒(あぎんかりゅう)」と呼ばれる細かい粒状の病変がいくつも見つかり、「嗜銀顆粒性認知症」と診断されたということでした。生前の症状——易怒性・軽度の記憶障害・高齢発症——が見事に一致していました。
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基礎知識の解説
嗜銀顆粒性認知症とは
嗜銀顆粒性認知症(AGD)は、脳の辺縁系(特に海馬周辺)に「嗜銀顆粒(4R-タウを含む小粒状体)」が蓄積する神経変性疾患です。80歳以上の高齢者に多く、軽度〜中等度の認知症と「易怒性(ちょっとしたことで怒りやすい)」が特徴です。生前診断が難しく、病理解剖で初めて確認されることが多いです。
主な症状
- 1易怒性(些細なことで激しく怒る)
- 2感情の不安定さ(怒った後に忘れる)
- 3軽度〜中等度の記憶障害
- 4見当識障害(日時・場所)
- 5比較的長く保たれる生活能力
- 6頑固さ・融通の利かなさ
- 7妄想(物盗られ妄想など)
- 8アルツハイマー型より緩徐な進行
原因・メカニズム
4リピートタウが辺縁系(海馬傍回・扁桃体・視床下核)の神経細胞周辺に嗜銀顆粒として蓄積します。アルツハイマー病変(アミロイド・神経原線維変化)と合併することも多く、混在型が多いのが現実です。高齢者の認知症の剖検例の約5〜20%にAGD病変が認められます。
診断
生前診断は困難で、現時点では確定診断に病理解剖が必要です。MRIで海馬・扁桃体周辺の萎縮を認めることがありますが、アルツハイマーとの鑑別はMRI所見だけでは難しいです。「高齢者の易怒性を伴う軽度認知症」はAGDの可能性を念頭に置く必要があります。
治療・ケア
根治療法はなく、対症療法が中心です。易怒性・感情不安定に対しては環境調整(刺激を減らす、穏やかな対応)が基本です。必要に応じて少量の抗精神病薬や気分安定薬を使用します。アルツハイマーとの混在例ではコリンエステラーゼ阻害薬が有効な場合があります。
予後・経過
アルツハイマー病より緩徐に進行することが多く、比較的長く生活能力が保たれます。ただし高齢発症のため、感染症・転倒・心血管疾患などの合併症が予後を左右します。
この疾患の重要ポイント
- •「穏やかだった人が急に怒りやすくなった」という高齢者は、AGDの可能性がある
- •アルツハイマーとは異なるタウ病理(4R-タウ)だが、合併例が多い
- •生前診断が難しく、「軽度認知症+易怒性」という臨床像から疑うしかない
- •病理解剖(脳の解剖検査)で初めて確定診断が可能——脳の研究・理解の進展に貢献できる選択肢
- •高齢者の易怒性を「性格が悪くなった」と誤解せず、疾患の症状として理解する
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