症状のことや介護の悩みを、認知症を専門とする医師に直接相談できます。お試し相談 ¥1,000・48時間以内に回答。
嗜銀顆粒性認知症の重要ポイント
「穏やかだった人が突然怒りやすくなった」という高齢者はAGDの可能性がある——性格が悪くなったのではなく疾患の症状として理解する
易怒性のあと直後に忘れるというパターンがAGDに特徴的——繰り返し起こっても叱責や謝罪を求めない
アミロイドPET陰性が純粋型AGDの鑑別の手がかり——「アルツハイマーではない」と言われたときに鑑別に挙がる
生前診断が難しく確定は病理解剖のみ——脳バンクへの登録・病理解剖は本人・家族の選択肢として知っておく価値がある
日常生活能力が比較的長く保たれる——早い段階から過度な制限をかけず本人の自立を尊重する
アルツハイマー病変との合併例が多い——合併型ではコリンエステラーゼ阻害薬が有効な場合もある
体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
嗜銀顆粒性認知症とは
嗜銀顆粒性認知症(AGD: Argyrophilic Grain Disease)は、脳の辺縁系(特に海馬傍回・扁桃体・視床下核)に4Rタウを含む嗜銀顆粒が蓄積する神経変性疾患です。80歳以上の高齢者に多く、軽度〜中等度の認知障害と「易怒性(些細なことで激しく怒り、直後に忘れる)」が特徴的です。アミロイドPETが陰性であることが鑑別の手がかりとなりますが、生前の確定診断は困難で、病理解剖で初めて確認されることが多い疾患です。高齢者剖検例の約5〜20%にAGD病変が認められており、晩年の認知症の「隠れた原因」として注目されています。
主な症状
- 1易怒性——些細なことで激しく怒り、直後には何事もなかったように忘れている(特徴的)
- 2感情の不安定さ(怒り・不安・涙もろさが急激に出現し、すぐ消える)
- 3軽度〜中等度の記憶障害(エピソード記憶の低下があるが、生活能力は比較的長く保たれる)
- 4見当識障害(日時・場所の混乱)
- 5頑固さ・融通の利かなさ(同じことへの固執)
- 6妄想(物盗られ妄想など)
- 7視覚空間認知は比較的保たれる
- 8日常生活動作(買い物・家事)が比較的長く維持される(アルツハイマーとの違い)
- 9MMSE軽度低下範囲(24〜27点程度)にとどまることが多い
- 10アルツハイマー型より緩徐な進行経過
原因・メカニズム
原因・メカニズム
4リピートタウ(4R-タウ)が辺縁系——特に海馬傍回・扁桃体・視床下核——の神経細胞周辺に嗜銀顆粒(argyrophilic grains)として蓄積します。嗜銀顆粒は通常のヘマトキシリン・エオジン染色では確認が難しく、Gallyas-Braak銀染色によって初めて明瞭に描出されます。近年注目されているARTAG(age-related tau astrogliopathy:加齢関連タウアストログリオパチー)との関連も指摘されており、高齢脳に生じる4Rタウ病理の一つとして位置づけられています。アルツハイマー病変(アミロイドβ・神経原線維変化)と合併する混在型が多く、純粋型AGDではアミロイドPETが陰性となることが鑑別の手がかりとなります。高齢者の認知症剖検例の約5〜20%にAGD病変が認められています。
診断
診断
生前診断は困難で、現時点では確定診断に病理解剖が必要です。Ferrer I et al.(Neurologia 2008)のAGD病理診断基準では、Gallyas-Braak染色による嗜銀顆粒の確認と、それが海馬傍回・扁桃体に優位に分布することが必須とされています。
生前に疑う手がかりは「80歳以上の高齢発症・易怒性を伴う軽度認知症・アミロイドPET陰性」の組み合わせです。MRIで海馬・扁桃体周辺の萎縮を認めることがありますが、アルツハイマーとの鑑別はMRI単独では困難です。アミロイドPET(PIB-PET等)が陰性であれば純粋型AGDの可能性が高まりますが、合併型では陽性になることもあります。家族が病理解剖の希望を持つ場合は、生前から担当医に相談しておくことで連携が円滑になります。
治療・ケア
治療・ケア
根治療法はなく、対症療法が中心です。
刺激を減らした落ち着いた環境・穏やかでゆっくりした話し方・反論せずに受け流す対応が基本です。易怒性が出たときには論争せず、一時的に距離を置くことが有効です。
必要に応じて少量の非定型抗精神病薬(クエチアピン等)や気分安定薬を使用します。ただし高齢者では転倒・過鎮静のリスクがあるため最低用量から慎重に使用します。
純粋型AGDには一般に効果が乏しいですが、アルツハイマー病変が合併している場合は有効なことがあります。
「急に怒りやすくなった」という変化は家族を深く傷つけます。これが病気の症状であること、本人が意図して怒っているのではないことを理解してもらう心理教育が重要です。
予後・経過
予後・経過
アルツハイマー病より緩徐に進行することが多く、比較的長く日常生活動作が保たれます。純粋型では認知機能の低下が軽度にとどまる場合もあります。ただし高齢発症のため、感染症・転倒・心血管疾患などの合併症が予後を左右します。アルツハイマー病変を合併する混在型では進行が速い傾向があります。
嗜銀顆粒性認知症の重要ポイント
「穏やかだった人が突然怒りやすくなった」という高齢者はAGDの可能性がある——性格が悪くなったのではなく疾患の症状として理解する
易怒性のあと直後に忘れるというパターンがAGDに特徴的——繰り返し起こっても叱責や謝罪を求めない
アミロイドPET陰性が純粋型AGDの鑑別の手がかり——「アルツハイマーではない」と言われたときに鑑別に挙がる
生前診断が難しく確定は病理解剖のみ——脳バンクへの登録・病理解剖は本人・家族の選択肢として知っておく価値がある
日常生活能力が比較的長く保たれる——早い段階から過度な制限をかけず本人の自立を尊重する
アルツハイマー病変との合併例が多い——合併型ではコリンエステラーゼ阻害薬が有効な場合もある
嗜銀顆粒性認知症についてもっと詳しく相談したい方へ
嗜銀顆粒性認知症に関するご疑問や、ご自身・ご家族の状況に合わせた相談を、認知症を専門とする医師に直接お聞きいただけます。
お試し相談 ¥1,000(初回1回限定)・48時間以内に医師が回答