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神経原線維変化型老年期認知症(PART)の重要ポイント
「アミロイド陰性の高齢者の記憶障害」はアルツハイマーではなくPARTの可能性がある——アミロイドPET検査が正確な診断と過剰治療の回避につながる
85歳以上では非常に多く見られる「加齢に伴うタウ病理」——「年のせいだから仕方ない」と放置せず、正確な診断に基づいたサポート体制を整える
アルツハイマーより緩徐な進行であることが多く、生活の質を保てる期間が長い傾向がある——残存機能を生かした活動の継続を支援することが重要である
タウPETでは内嗅皮質・海馬に限局した集積を示し、アルツハイマーの広範なタウ蓄積と区別できる——正確な病態把握が治療方針の決定を助ける
LATE(TDP-43病変)・血管性病変との複合病理が超高齢者では一般的——複数の病態を踏まえた総合的な管理が求められる
「診断名に振り回されず、本人が今日何をして喜んでいるかに目を向ける」——家族・介護者のこの視点が生活の質を守る最大の力となる
体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
神経原線維変化型老年期認知症(PART)とは
神経原線維変化型老年期認知症(PART:Primary Age-Related Tauopathy)は、85歳以上の超高齢者において脳の内嗅皮質・海馬を中心にタウタンパクが蓄積するが、アルツハイマー病に特徴的なアミロイドβの蓄積を伴わない状態である。2014年にCraryらによって疾患概念が提唱され、「年齢相応の老化」と「アルツハイマー病」の中間に位置する病態として位置づけられる。超高齢者の剖検例の多くにPART病変が認められ、85歳以上では非常に一般的な認知症原因の一つである。主症状は軽度〜中等度の記憶障害(エピソード記憶の低下・同じ話の繰り返し)・見当識障害であり、アルツハイマー病より緩徐な進行を示すことが多い。
主な症状
- 1エピソード記憶の低下(同じ話の繰り返し・最近の出来事の忘却)
- 2軽度〜中等度の記憶障害
- 3見当識障害(日時・曜日の混乱)
- 4比較的緩徐な進行(アルツハイマーより遅い傾向)
- 5日常生活動作(ADL)が比較的長く保たれることがある
- 6アミロイドPET陰性(アルツハイマーとの鑑別点)
- 7脳MRIでの海馬萎縮(側頭葉・頭頂葉の広範萎縮はアルツハイマーより軽度)
- 8精神症状(抑うつ・不安・睡眠障害)を伴う場合がある
- 9実行機能・注意の低下(進行に伴って出現)
- 10会話・コミュニケーション能力の比較的良好な保持(初期〜中期)
原因・メカニズム
原因・メカニズム
加齢に伴い、脳の内嗅皮質・海馬CA1領域・傍海馬回を中心にタウタンパクの過リン酸化が起き、神経原線維変化(NFT:Neurofibrillary Tangles)が蓄積する(ブラークステージ1〜4に相当)。この変化はアルツハイマー病のタウ病理と神経病理学的に類似しているが、アミロイドβは蓄積しないか、ごく少量にとどまる。2014年にCraryらはこの「純粋な老化に伴うタウ病理」をアルツハイマー病と区別すべき独立した疾患単位として提唱した。PARTのタウはIII型/IV型のリピートタウを主体とし、アルツハイマーのタウ(III+IV型混合)とは組成が若干異なる。超高齢者では LATE(TDP-43病変)・血管性病変との複合病理として認知症が生じることが多い。
診断
診断
アミロイドPET検査(またはCSF Aβ42測定)によるアミロイド陰性の確認が、アルツハイマー病との鑑別における最重要ステップである。タウPETでは内嗅皮質・海馬に限局した集積を認める(アルツハイマーのように側頭葉・頭頂葉への広範な集積は見られない)。脳MRIでは海馬萎縮を確認するが、アルツハイマーほどの広範な皮質萎縮は通常見られない。臨床的にPARTを示唆する条件は「85歳以上」「緩徐な記憶障害」「MRIで海馬萎縮」「アミロイドPET陰性」の組み合わせであり、2014年のCrary JFらのActa Neuropathol論文がコンセンサスな診断基準を提示している。確定診断は病理解剖(剖検)による。
治療・ケア
治療・ケア
根治療法は存在せず、対症療法が中心となる。アルツハイマー病治療薬(コリンエステラーゼ阻害薬・メマンチン)のPARTへの有効性を示す大規模試験はないが、合併するアルツハイマー病変や行動症状への対症的効果を期待して使用されることがある。非薬物療法(認知リハビリテーション・運動療法・音楽療法・デイサービスでの社会活動)が残存機能の維持と生活の質の向上に有効である。睡眠障害・抑うつに対しては薬物療法(SSRIの少量投与・睡眠衛生指導)を用いる。転倒予防・栄養管理・口腔ケアが重症化予防の重要な要点となる。
予後・経過
予後・経過
アルツハイマー病より緩徐に進行することが多いとされるが、個人差が大きく、発症年齢が超高齢であるため心血管疾患・感染症・転倒骨折など認知症以外の疾患が予後を大きく左右する。PART単独では日常生活動作を比較的長く保てる例もあり、適切なデイサービス利用・家族支援・在宅医療の組み合わせによって在宅生活の継続が可能な場合が多い。LATE・血管性病変との複合病理例では進行が速くなることがある。
神経原線維変化型老年期認知症(PART)の重要ポイント
「アミロイド陰性の高齢者の記憶障害」はアルツハイマーではなくPARTの可能性がある——アミロイドPET検査が正確な診断と過剰治療の回避につながる
85歳以上では非常に多く見られる「加齢に伴うタウ病理」——「年のせいだから仕方ない」と放置せず、正確な診断に基づいたサポート体制を整える
アルツハイマーより緩徐な進行であることが多く、生活の質を保てる期間が長い傾向がある——残存機能を生かした活動の継続を支援することが重要である
タウPETでは内嗅皮質・海馬に限局した集積を示し、アルツハイマーの広範なタウ蓄積と区別できる——正確な病態把握が治療方針の決定を助ける
LATE(TDP-43病変)・血管性病変との複合病理が超高齢者では一般的——複数の病態を踏まえた総合的な管理が求められる
「診断名に振り回されず、本人が今日何をして喜んでいるかに目を向ける」——家族・介護者のこの視点が生活の質を守る最大の力となる
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