体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
神経原線維変化型老年期認知症(PART)とは
神経原線維変化型老年期認知症(PART:Primary Age-Related Tauopathy)は、超高齢者において脳内にタウタンパクが蓄積するが、アルツハイマー病に特徴的なアミロイドβの蓄積を伴わない状態です。「年齢相応の老化」と「アルツハイマー病」の中間に位置する概念で、85歳以上では非常に多く認められます。
主な症状
- 1軽度〜中等度の記憶障害
- 2エピソード記憶の低下(同じ話の繰り返し)
- 3見当識障害
- 4比較的緩徐な進行
- 5アルツハイマーより「穏やかな経過」が多い
- 6日常生活は比較的長く保たれることがある
- 7精神症状(抑うつ・不安)を伴う場合がある
原因・メカニズム
加齢に伴い、脳の内嗅皮質・海馬を中心にタウタンパクの神経原線維変化が蓄積します(ブラークステージ1〜4に相当)。アミロイドβは蓄積しないか、ごく少量です。「純粋な老化によるタウ病理」という概念で、アルツハイマー病とは異なる疾患単位として2014年に提唱されました。超高齢者の剖検例の多くにPART病変が見られます。
診断
アミロイドPET検査(または脳脊髄液のアミロイドβ測定)でアミロイド陰性を確認した上で、タウPETまたは剖検でタウ蓄積を確認します。臨床的には「85歳以上」「緩徐な記憶障害」「MRIで海馬萎縮」「アミロイドPET陰性」の組み合わせからPARTを疑います。
治療・ケア
根治療法はなく、対症療法が中心です。アルツハイマー治療薬(コリンエステラーゼ阻害薬)の効果は限定的とされますが、合併するアルツハイマー病変に対して使用されることがあります。非薬物療法(認知リハ・運動・社会活動)が生活の質の維持に有効です。
予後・経過
アルツハイマー病より緩徐に進行することが多いとされますが、個人差が大きく、高齢であることから他の疾患(心血管・感染症)が予後を左右します。
神経原線維変化型老年期認知症(PART)の重要ポイント
「アミロイド陰性の高齢者の認知症」は、アルツハイマーではなくPARTの可能性がある
超高齢者(85歳以上)では非常に多く見られる「加齢に伴うタウ病理」
アミロイドPET検査でアルツハイマーと鑑別できる——過剰治療の回避に重要
アルツハイマーより緩徐な進行であることが多く、生活の質を保てる期間が長い傾向
「老化」と「認知症」の境界領域——「年のせいだから仕方ない」と放置せず、サポート体制を整える