体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
ハンチントン病とは
ハンチントン病(HD)は、HTT遺伝子のCAGリピートの異常伸長によって引き起こされる、常染色体優性遺伝の神経変性疾患です。不随意運動(舞踏様運動)・認知機能低下・精神症状の3つが主要な症状で、発症は通常30〜50代です。子への遺伝確率は50%で、遺伝カウンセリングが不可欠です。
主な症状
- 1舞踏様運動(無意識の素早い不随意運動)
- 2歩行障害・バランス障害
- 3構音障害・嚥下障害
- 4認知機能低下(特に実行機能・注意・処理速度)
- 5記憶障害(エピソード記憶より処理速度・実行機能が先に低下)
- 6抑うつ・不安・イライラ
- 7脱抑制・衝動性・強迫症状
- 8精神症状(まれに統合失調症様症状)
原因・メカニズム
HTT遺伝子のCAGリピートが36回以上で発症リスクが高まり、40回以上でほぼ必発します。異常なハンチンチンタンパクが線条体(尾状核・被殻)の神経細胞に蓄積し、ミトコンドリア機能障害・興奮毒性・転写制御異常などを引き起こして神経細胞が死滅します。CAGリピート数が多いほど発症が早くなる傾向があります(遺伝的予測)。
診断
遺伝子検査(HTT遺伝子CAGリピート数の測定)で確定診断します。検査前には遺伝カウンセリングが必須で、結果の開示は本人の意思を尊重します。MRIでは線条体(尾状核)の萎縮が進行とともに確認されます。発症前診断(症状のない保因者の検査)も可能ですが、倫理的配慮が求められます。
治療・ケア
根治療法はありません。不随意運動にテトラベナジン(ハロペリドールなど)を使用します。精神症状にはSSRI・抗精神病薬を症状に応じて使用します。言語療法・嚥下リハ・作業療法による機能維持が重要です。遺伝カウンセリングと家族への心理的支援が不可欠です。
予後・経過
発症から平均10〜20年の経過で死亡します。誤嚥性肺炎・転倒・自殺が主な死亡原因です。若年発症型(ウェストファル型)は進行が速く、剛性・けいれんが前景に出ます。
ハンチントン病の重要ポイント
常染色体優性遺伝で、子への遺伝確率は50%——遺伝カウンセリングが診断と同様に重要
「不随意運動(舞踏様運動)+精神症状+認知機能低下」の3つ組が特徴
発症前診断が可能だが、知る権利・知らない権利の両方を尊重する必要がある
抑うつ・自殺リスクが高く、精神科的サポートが不可欠
若年発症(30〜40代)が多く、就労・子育て・経済問題への対応が重要