分類3|感染症によるもの約5分で読めます
脳膿瘍とは?
細菌感染による脳の膿の塊が引き起こす障害
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
松本博志さん(仮名・49歳)は、虫歯を長年放置していました。ある日から頭痛が続き、発熱が出ました。最初は「かぜかな」と思っていましたが、右手が動かしにくくなり、言葉がつかえるようになったため、救急を受診しました。
頭部CTで脳の左前頭葉に直径3cmほどの「リング状増強効果を持つ病変」が見つかりました。造影剤を使ったMRIでは、病変の中心が低信号、周囲が高信号に輝く「リングサイン」が確認されました。これは膿(うみ)が脳内に溜まった「脳膿瘍」の典型的な所見でした。
「お口の中の細菌が血流に乗って脳に到達した可能性がある」と担当医から説明を受けました。開頭手術で膿を排除し、抗菌薬治療を続けました。
手術から3ヶ月後、博志さんの言語・運動機能はかなり回復しましたが、集中力の低下・短期記憶の問題が残りました。「歯科治療をちゃんと受けていれば」という後悔が、博志さんの口癖になりました。担当医から「歯周病・虫歯の菌が脳に届くことは稀だが、起きることがある。今後も口腔内の管理を大切に」と言われました。
広告
基礎知識の解説
脳膿瘍とは
脳膿瘍は、細菌・真菌・原虫などが脳実質内に感染し、膿(うみ)が貯留した病態です。耳・鼻・口腔の感染巣からの直接波及、または血行性(歯科・肺・皮膚の感染源)によって生じます。急性発症の頭痛・発熱・神経症状が特徴で、適切な治療(手術・抗菌薬)により多くは回復しますが、後遺症として認知機能障害が残ることがあります。
主な症状
- 1頭痛(急性〜亜急性)
- 2発熱(感染のある例。免疫低下では発熱が乏しい場合も)
- 3局所神経症状(麻痺・失語・視野障害)
- 4てんかん発作
- 5意識障害(重篤例)
- 6認知機能低下(後遺症)
- 7性格変化・実行機能障害(前頭葉病変)
原因・メカニズム
細菌性脳膿瘍の多くは、副鼻腔炎・中耳炎・歯科感染症からの直接波及、または心内膜炎・肺膿瘍などからの血行性播種によって生じます。免疫低下患者では真菌(アスペルギルス・クリプトコッカス)や原虫(トキソプラズマ)による膿瘍も生じます。脳組織内での感染は局所炎症・壊死・膿腔形成へと進行します。
診断
MRIのリング状増強効果(輪状の造影増強)と拡散強調画像の高信号が特徴的です。脳腫瘍との鑑別が重要です。血液・膿の培養検査で起因菌を同定します。感染源(口腔・耳・鼻・心臓)を徹底的に検索します。
治療・ケア
外科的ドレナージ(開頭または定位的穿刺)による膿の排除が基本です。原因菌に応じた長期抗菌薬治療(4〜8週間)を行います。てんかん予防薬を投与します。免疫低下の基礎疾患があれば同時に管理します。
予後・経過
早期発見・適切な治療で死亡率は10〜30%(重篤例)に低下しています。後遺症(てんかん・認知障害・麻痺)は病変の大きさ・部位によって異なります。再発予防のため感染源(口腔・耳・鼻)の根本的な治療が必要です。
この疾患の重要ポイント
- •「歯科・耳・鼻の感染症を放置しない」——脳膿瘍の最大の予防
- •「リング状増強効果」がCT・MRIで見られたら脳膿瘍と脳腫瘍の鑑別が最優先
- •免疫低下患者(HIV・ステロイド使用者)では真菌・原虫による脳膿瘍も念頭に
- •治療可能な疾患であるため、早期診断・早期手術が後遺症を最小限にする
- •後遺症(認知障害・てんかん)が残る場合は長期フォローとリハビリが重要
広告