分類3|感染症によるもの約5分で読めます
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)とは?
麻疹ウイルスが原因の遅発性脳炎
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
田所雅人さん(仮名・14歳)は中学2年生でした。少し前から勉強に集中できなくなり、ぼんやりしていることが増えていました。担任の先生は「最近なんか様子がおかしい」と親に連絡してきました。
やがて、雅人さんに奇妙な「揺れ」が出るようになりました。1〜2分おきに、頭が前に倒れるような動作が繰り返されるのです。本人は「勝手に体が動く」と言いました。神経内科での検査で、脳波に「高振幅の棘徐波複合が周期的に出現する」という特徴的なパターンが確認されました。
脳脊髄液の麻疹ウイルス抗体が強陽性でした。「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」——幼少期の麻疹(はしか)感染後、数年〜十数年後に発症する致死性の遅発性脳炎でした。
「幼少期の麻疹ワクチン記録を確認すると、当時1回しか接種されていなかった」と母親は言いました。
SSPEに対する根治療法はありません。雅人さんは徐々に知能・運動機能が低下し、てんかん発作が増え、2年後に植物状態となりました。「麻疹ワクチンを2回きちんと打っていれば」という思いが、家族の心に残り続けています。
広告
基礎知識の解説
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)とは
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、幼少期の麻疹(はしか)感染後、変異した麻疹ウイルスが脳内に潜伏し、感染から6〜15年後に再活性化して進行性の脳炎を引き起こす遅発性ウイルス感染症です。主に学童期〜青年期に発症し、認知機能低下・行動異常・ミオクローヌス・てんかん発作を経て死亡します。麻疹ワクチンで予防可能です。
主な症状
- 1第1期:性格変化・学業成績低下・集中力低下
- 2第2期:ミオクローヌス(定期的な体のぴくつき)・知能低下
- 3第2期:脳波の特徴的なパターン(ラドマエヤー複合)
- 4第3期:認知症・不随意運動・視力低下
- 5第4期:筋固縮・昏睡・植物状態
- 6幻覚・行動異常(初期)
- 7てんかん発作
- 8急速な神経学的悪化
原因・メカニズム
麻疹ウイルスが中枢神経系に侵入し、宿主の免疫監視を逃れて潜伏します。変異した欠損型ウイルスが脳内で持続感染し、脳全体にわたる炎症・神経細胞の死滅を引き起こします。なぜ一部の人だけがSSPEを発症するかは完全には解明されていませんが、2歳未満での麻疹感染が最大の危険因子です。
診断
脳脊髄液と血清の麻疹ウイルス抗体の著明な上昇が特徴的です。脳波では周期性高振幅複合(ラドマエヤー複合)が確認されます。MRIで白質病変・脳萎縮が進行とともに確認されます。
治療・ケア
根治療法はありません。イノシンプラノベックス(IMP)とインターフェロンα髄腔内投与が進行を遅らせる可能性があると言われますが、効果は限定的です。てんかん管理・栄養管理・褥瘡予防などの対症的ケアが主体です。
予後・経過
多くの場合、発症から1〜3年で植物状態・死亡に至ります。まれに長期的な寛解例がありますが、回復例は稀です。
この疾患の重要ポイント
- •「麻疹後SSPEを予防できる唯一の手段は麻疹ワクチン(2回接種)」——予防医療の重要性を示す典型例
- •発症から死亡まで1〜3年——子ども・若者が対象になるため、家族への心理的支援が極めて重要
- •脳波のラドマエヤー複合と血清・髄液の麻疹抗体上昇が診断の手がかり
- •2歳未満での麻疹感染がリスク——ワクチン接種適齢期前の乳幼児への麻疹感染を防ぐことが重要
- •根治療法がないため、診断後は緩和ケアとご家族へのサポートが中心
広告