分類3|感染症によるもの約5分で読めます
ライム病とは?
マダニ媒介の細菌感染による神経症状
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
三浦康介さん(仮名・41歳)は山岳ガイドとして働いていました。数ヶ月前から倦怠感・関節痛・頭痛が続いていましたが、「山仕事の疲れ」と思っていました。
やがて、以前のような仕事ができなくなっていることに気づきました。登山ルートを間違える。複数の予約客の管理が混乱する。「最近どうした?」と心配した同僚が受診を勧めました。
内科を受診した際、「マダニに刺されたことは?」という質問に「しょっちゅう」と答えた康介さんに、医師がライム病の血液検査を勧めました。抗ボレリア抗体が陽性でした。「神経ライム病」と診断されました。
ドキシサイクリン(抗菌薬)の内服を開始し、3ヶ月後には倦怠感・関節痛は大幅に改善しました。しかし、認知機能の「もや(ブレインフォグ)」は完全には消えず、「以前と同じ仕事をするには時間がかかる」という状態が続いています。
「ライム病が神経症状を引き起こすと知っていたら、もっと早く受診していた」と康介さんは言います。野外活動に従事する人々へのライム病・神経ライム病の周知が重要だと、康介さんは今、山の仲間たちに伝えています。
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基礎知識の解説
ライム病とは
ライム病は、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)という細菌を媒介するマダニに刺されることで感染する感染症です。初期の特徴的な皮膚症状(遊走性紅斑)を見逃した場合、数ヶ月〜数年後に神経・心臓・関節に影響が及びます。神経ライム病では認知機能障害・脳炎・髄膜炎などが起きます。
主な症状
- 1初期:遊走性紅斑(ダニ刺咬後の輪状の赤い発疹)
- 2初期:発熱・倦怠感・関節痛・頭痛
- 3後期:認知機能障害(記憶・注意・処理速度の低下)
- 4後期:ブレインフォグ(思考のもや)
- 5後期:末梢神経障害(手足のしびれ・疼痛)
- 6後期:脳炎・髄膜炎
- 7後期:顔面神経麻痺
- 8後期:関節炎
原因・メカニズム
マダニが吸血する際にボレリア菌が皮膚に注入され、血流を通じて全身に広がります。神経系では、髄膜・末梢神経・脳実質に炎症を引き起こします。慢性化すると免疫反応の持続が神経損傷をもたらし、認知機能障害が残る場合があります。
診断
血液検査(ELISA・ウェスタンブロット)でボレリア抗体を確認します。神経ライム病が疑われる場合は脳脊髄液検査が必要です。マダニ刺咬の既往と野外活動歴が診断の重要な手がかりです。
治療・ケア
早期:ドキシサイクリン内服(2〜3週間)が有効です。神経ライム病:セフトリアキソン静注(2〜4週間)が第一選択です。適切な抗菌薬治療で多くの症状は改善しますが、治療後も症状が残る「治療後ライム病症候群(PTLDS)」が一部に生じます。
予後・経過
早期治療で完全回復が期待できます。神経ライム病は治療後も認知機能の「もや」が残ることがありますが、多くは改善します。PTLDSは2〜6ヶ月で改善することが多いです。
この疾患の重要ポイント
- •野外活動後に「輪状の赤い発疹」が出たら迷わず受診——遊走性紅斑がライム病の最初のサイン
- •「マダニ刺咬の既往+認知機能低下・倦怠感」はライム病を鑑別に入れる
- •日本でも北海道・長野・東北などでライム病が報告されている
- •早期治療で完治できる「治る認知症」の一つ——見逃しは後期神経症状につながる
- •野外活動時の長袖・長ズボン・虫よけ剤使用が最善の予防
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