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基礎知識の解説
脳血管炎とは
脳血管炎(中枢神経系血管炎)は、脳・脊髄の血管壁に炎症が生じる疾患です。脳のみに限局した原発性中枢神経系血管炎(PACNS)と、SLE・ベーチェット・ANCA関連血管炎・サルコイドーシスなど全身性疾患に伴う二次性血管炎に大別されます。慢性・亜急性の頭痛・認知機能低下・脳梗塞様症状を呈し、MRAの「数珠状血管狭窄」が特徴的所見です。確定診断には脳生検が必要で、プレドニゾロン+シクロホスファミドによる免疫療法が有効です。
主な症状
- 1慢性〜亜急性の頭痛(最多症状・拍動性・一般鎮痛薬無効)
- 2認知機能低下(記憶・注意・処理速度・実行機能)
- 3一過性脳虚血発作(TIA)・脳梗塞(反復性)
- 4精神症状(混乱・人格変化・易怒性)
- 5けいれん発作
- 6局所神経症状(片麻痺・感覚障害・失語・複視)
- 7意識障害(傾眠〜昏迷)
- 8視力障害(虚血性視神経症・皮質盲)
- 9脊髄症(下肢脱力・排尿障害)
- 10発熱・体重減少(全身性血管炎合併例)
原因・メカニズム
原因・メカニズム
PACNSの病理学的分類は「肉芽腫性PACNS(最多型)」と「リンパ球浸潤型PACNS」に大別されます。肉芽腫性では血管壁にCD68陽性マクロファージと多核巨細胞が浸潤して肉芽腫を形成し、血管壁の壊死・管腔狭窄を引き起こします。リンパ球浸潤型ではCD3陽性T細胞が主体で、壊死性変化は少なく管腔狭窄が主体です。いずれも小〜中動脈の血管壁炎症が管腔狭窄・閉塞を引き起こし、虚血性脳病変を生じさせます。免疫複合体が小血管壁に沈着すると補体が活性化し、さらに血管内皮傷害と管腔狭窄が進行します。可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)はMRAで類似の血管狭窄パターンを示しますが、RCVSは血管攣縮が可逆的(4〜12週で正常化)で病理組織に炎症細胞浸潤を認めず、治療方針が全く異なります(免疫抑制薬は不要、カルシウム拮抗薬を用いる)。
診断
診断
Calabrese & Mallek 1988のPACNS診断基準が世界標準で使用されます。①後天性の神経学的症状(頭痛・認知機能低下・局所症状)、②脳血管造影(DSA)またはCNS組織生検での血管炎確認、③全身性疾患・感染症・薬剤・悪性腫瘍の除外、④症状がCNSに限局することの4条件を満たします。DSA(脳血管造影)は感度40〜90%・特異度は低く(血管攣縮・動脈硬化でも類似所見)、単独では確定診断に不十分です。脳生検は感度75%でGold Standardであり、biopsy部位(活動病変の選択)が感度に大きく影響します。RCVSとの鑑別では、「突然発症・雷鳴頭痛・可逆性血管狭窄(4〜12週で正常化)」がRCVSを示唆し、慢性頭痛・白質病変・CSF炎症・進行性認知障害がPACNSを示唆します。全身性自己免疫(抗dsDNA・ANCA・抗カルジオリピン・血清ACE)と感染症(梅毒・HIV・結核・ヘルペス)のスクリーニングで二次性血管炎を先に除外することが重要です。
治療・ケア
治療・ケア
プレドニゾロン1mg/kg/日(最大60〜80mg)から治療を開始します。軽症〜中等症では単独ステロイドで6〜12ヶ月かけてテーパリングします。重症例(多発脳梗塞・急速進行・脳生検で肉芽腫性変化)にはシクロホスファミドパルス(500〜1000mg/m²、月1回×6回)を併用します。シクロホスファミド終了後の寛解維持にはメトトレキサート(15〜25mg/週)またはアザチオプリン(2mg/kg/日)を12〜18ヶ月使用します。免疫抑制中の日和見感染予防としてST合剤(バクタ配合錠、1錠/日)を予防投与します。抗けいれん薬・抗血小板薬・高血圧管理も脳梗塞再発予防に重要です。PML(進行性多巣性白質脳症)リスクを考慮した定期的なJCV抗体モニタリングも長期管理において検討されます。
予後・経過
予後・経過
早期診断・早期治療により多くの場合で頭痛の消失とMRA所見の改善が得られます。しかし治療が遅れると虚血性脳梗塞が蓄積し、不可逆的な認知障害・身体障害が残存します。治療後の再発率は約25〜30%とされ、長期の維持療法と定期MRI・MRAフォローが必要です。PACNS全体の予後はやや多様で、脊髄病変・脳幹病変を有する例では回復が限定的なことがあります。
脳血管炎の重要ポイント
「若〜中年の慢性頭痛+認知機能低下+MRAの数珠状血管狭窄」はPACNSを鑑別リストの筆頭に挙げる
全身性自己免疫疾患・感染症・悪性腫瘍の除外が先決——二次性血管炎の原因検索を必ず先行させる
Calabrese & Mallek 1988基準でPACNS診断を確認——DSAは感度高いが特異度低いため脳生検(Gold Standard)で確定する
RCVSとの鑑別が重要:RCVSは雷鳴頭痛・可逆性血管狭窄・炎症なし、PACNSは慢性頭痛・白質病変・CSF炎症あり
重症例(多発梗塞・急速進行)にはプレドニゾロン+シクロホスファミドパルス(750mg/m²×6回)を迷わず使用
免疫抑制中はST合剤(バクタ)で日和見感染(PCP・PML)を予防し、定期的な血算・肝腎機能モニタリングを行う
治療後も3〜6ヶ月ごとにMRI/MRAで再燃を早期検知し、維持療法(MTX・アザチオプリン)の継続判断を行う
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