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大脳皮質基底核変性症の重要ポイント
「片側の手だけがおかしい」「手が勝手に動く(他人の手徴候)」がCBSを疑う最初のサイン
症状の左右非対称性(片側優位)が診断の重要な手がかり——MRIでも反対側大脳半球の萎縮が確認される
PSPと同じ4リピートタウ病理を持ち、症状が重複することがある——確定診断は病理でのみ可能
失行(道具の使い方がわからない)は認知症とは別の症状——道具を渡しながら動作を一緒に誘導する介護が有効
AAC(補助代替コミュニケーション)を早期に導入し、言語機能が失われる前から練習を始める
進行が速いため、診断直後から作業療法・言語療法・嚥下評価を開始し、残存機能を最大限に活用する
体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
大脳皮質基底核変性症とは
大脳皮質基底核変性症(CBD)は、4リピートタウタンパク質が大脳皮質と基底核に非対称性に蓄積する神経変性疾患です。臨床的には「大脳皮質基底核症候群(CBS)」として診断され、片側の上肢を中心とした筋固縮・失行・他人の手徴候が特徴的です。進行性核上性麻痺(PSP)と同じタウ病理を持ち、鑑別が困難なことが多い稀少疾患で、推定罹患率は人口10万人あたり0.6〜0.9人です。
主な症状
- 1片側上肢の筋固縮・不器用さ(利き手側に現れることが多い)
- 2失行(道具の使い方がわからない、意図した動作ができない)
- 3他人の手徴候(手が意図と異なる動きをする「エイリアンハンドサイン」)
- 4ミオクローヌス(刺激や動作に誘発されるぴくつき)
- 5失語(語想起障害・非流暢性失語が前面に出る型もある)
- 6高次脳機能障害(失認・視空間認識障害・半側空間無視)
- 7認知症(前頭葉型の行動変容・実行機能低下)
- 8眼球運動障害(核上性注視麻痺:PSP重複例で顕著)
- 9嚥下障害(進行期に現れ、誤嚥性肺炎のリスクとなる)
- 10ジストニア(異常姿勢・筋緊張の亢進)
症状の進行
片側の腕や手の動きがぎこちなくなる(左右非対称が特徴)
「自分の手が勝手に動く」異人手症候群
皮質性感覚障害(触っても位置がわからない)
片側の動作の遅さ・筋固縮
片側から両側へ症状が拡大する
失行(道具の使い方がわからなくなる)が著明に
眼球運動障害・空間認知障害
失語(言葉が出にくい・理解が低下)
嚥下障害が出現し食事に時間がかかる
四肢の筋固縮が高度となり歩行不能・寝たきり
高度認知症・失語
嚥下困難により誤嚥性肺炎リスクが増大
全面的な介護が必要
発症から平均6〜8年で死亡
※ 進行速度・症状の現れ方は個人差が大きく、必ずしも順序通りに進むとは限りません。
原因・メカニズム
原因・メカニズム
大脳皮質基底核変性症の病理的本体は、4リピートタウ(アイソフォームH1ハプロタイプ)が大脳皮質(特に頭頂葉・前頭葉)と基底核(被殻・淡蒼球・黒質)に非対称性に蓄積することです。病理標本では「バルーンニューロン(腫大した神経細胞、アキュートスワルティング・コア)」の出現が特徴的であり、タウ陽性の糸状封入体(アストロサイティックプラーク)も確認されます。
PSP(進行性核上性麻痺)と同じ4リピートタウ病理を持ちながら、CBDでは大脳皮質への広がりが強いことが際立ちます。皮質脊髄路・大脳皮質-基底核-視床ループの障害が、失行・筋固縮・他人の手徴候を生じさせます。なお、CBDは病理診断名であり、臨床症候群(CBS)は他の病理(アルツハイマー病・PSP等)でも生じうるため、生前の確定診断は困難です。Höglinger et al. 2017 のコンセンサス基準でも、CBSはPSP-CBSと重複する概念として整理されています。
診断
診断
2013年にArmstrong et al. が提唱した診断基準では、「probable CBS」の診断に非対称性の肢体失行・筋固縮またはジストニア・ミオクローヌス・他人の手徴候・皮質感覚障害・行動症状のうち2つ以上を認めることが必要とされます。認知・行動症状が前景の表現型(fvFTD-CBS)や非流暢性失語が前景の表現型(naPPA-CBS)も識別されています。
MRIでは病変側の反対側大脳半球(特に頭頂葉・前頭葉)の非対称性萎縮が特徴的です。FDG-PETでは萎縮側の代謝低下が確認されます。L-ドーパへの反応は乏しく(パーキンソン病との鑑別点)、DaTスキャンでは片側優位のドーパミントランスポーター低下を認めます。確定診断は病理組織検査(死後脳)によってのみ可能であり、生前診断は「probable/possible CBS」にとどまります。
治療・ケア
治療・ケア
根治療法はなく、対症療法が中心です。L-ドーパ(200〜600mg/日)は一部の筋固縮に部分的な効果を示すことがありますが、多くの場合反応は限定的です。ミオクローヌスに対してはクロナゼパム 0.5〜1.0mg(眠気に注意しながら漸増)が有効です。ジストニアにはボツリヌス毒素注射が局所的に使用されることがあります。
作業療法は残存機能の最大限の活用を目標とし、自助具(片手用食器・ボタン補助器具)の導入、左手への動作移行訓練、意図しない動作への対処法の指導を行います。言語障害・コミュニケーション障害には言語聴覚士による評価と、AAC(補助代替コミュニケーション:コミュニケーションボード・音声出力機器)の早期導入が重要です。嚥下障害への対応(食形態の調整・姿勢指導・経管栄養の検討)は進行段階に応じて行います。
予後・経過
予後・経過
発症から平均6〜8年の経過をたどります。症状は徐々に反対側にも広がり、最終的には全身の運動障害・嚥下障害・認知症が現れます。誤嚥性肺炎・転倒による外傷・褥瘡感染が主な死亡原因です。PSPよりも若干進行が緩やかとされますが、個人差が大きく、残存機能の活用を目指した早期からのリハビリテーション介入が QOL に大きく影響します。
大脳皮質基底核変性症の重要ポイント
「片側の手だけがおかしい」「手が勝手に動く(他人の手徴候)」がCBSを疑う最初のサイン
症状の左右非対称性(片側優位)が診断の重要な手がかり——MRIでも反対側大脳半球の萎縮が確認される
PSPと同じ4リピートタウ病理を持ち、症状が重複することがある——確定診断は病理でのみ可能
失行(道具の使い方がわからない)は認知症とは別の症状——道具を渡しながら動作を一緒に誘導する介護が有効
AAC(補助代替コミュニケーション)を早期に導入し、言語機能が失われる前から練習を始める
進行が速いため、診断直後から作業療法・言語療法・嚥下評価を開始し、残存機能を最大限に活用する
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