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透析認知症(アルミ中毒など)とは?
透析治療に伴うアルミニウム蓄積による脳障害
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
内田光男さん(仮名・65歳)は10年間透析を受け続けていました。数年前から透析中に「しゃべりにくい」「手がぴくぴくする」という症状が出るようになり、最近は透析終了後にも混乱が残るようになりました。
担当の看護師が「最近、話し方がおかしい。ろれつが回りにくい感じがする」と主治医に報告しました。認知機能検査を行うと、以前より明らかに低下していました。
血液検査でアルミニウム濃度を測定すると、通常の数十倍の値が出ました。「透析認知症(アルミニウム脳症)」が疑われました。
かつて透析液に使用されていたアルミニウムは、透析患者の骨病変の治療にも用いられており、体内に蓄積してしまうことがあります。光男さんの場合、以前服用していたアルミニウム含有の胃薬(制酸薬)が長期にわたってアルミニウムを蓄積させた可能性があると考えられました。
デフェロキサミン(鉄キレート剤)によるアルミニウム除去療法が試みられました。症状の進行は止まりましたが、すでに生じた神経障害は残りました。
「アルミニウム含有制酸薬を透析患者に使ってはいけないという教育が今は徹底されている」と主治医は言います。「以前は知らずに使われていた薬が、こういった形で後遺症を残すことがあった」という歴史的な教訓が、この疾患には込められています。
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基礎知識の解説
透析認知症(アルミ中毒など)とは
透析認知症(アルミニウム脳症)は、長期透析患者でアルミニウムが脳に蓄積することで生じる認知機能障害・構音障害・ミオクローヌス・てんかんを特徴とする疾患です。過去にアルミニウム含有制酸薬や低品質透析液が原因でしたが、現在は透析液の高度精製・アルミニウム含有薬の回避により著しく減少しています。
主な症状
- 1構音障害(ろれつが回りにくい・どもる)
- 2認知機能低下(記憶・判断力)
- 3ミオクローヌス(ぴくつき)
- 4てんかん発作
- 5歩行障害・運動失調
- 6行動変容・人格変化
- 7透析中〜後に症状が悪化する傾向
原因・メカニズム
アルミニウムは骨・脳などに蓄積しやすい金属です。透析患者では腎臓からのアルミニウム排泄ができないため、口からの摂取(制酸薬・アルミニウム含有透析液)が直接蓄積につながります。脳内でアルミニウムは神経伝達・エネルギー代謝を障害し、神経細胞を死滅させます。
診断
血清アルミニウム濃度の著明な上昇(正常:5μg/L以下、透析認知症:100μg/L以上が多い)が診断の根拠です。デフェリオキサミン負荷試験(デスフェラール試験)でアルミニウム排泄量を確認します。脳波で前頭葉優位の徐波・棘波が確認されます。
治療・ケア
アルミニウム含有薬・製品の中止が最重要です。デフェロキサミン(DFO)によるアルミニウムキレート療法が症状の進行を抑制します。症状の完全回復は困難なことが多く、対症療法が中心になります。
予後・経過
発症後に治療しなければ進行し、数ヶ月〜数年で死亡します。早期発見・治療開始で進行を止められる場合がありますが、神経障害の回復は限定的です。
この疾患の重要ポイント
- •現代では希少だが、透析患者へのアルミニウム含有薬(制酸薬)の使用禁忌は今も重要な注意事項
- •「透析患者の構音障害+ミオクローヌス」はアルミニウム蓄積を疑う
- •透析液の高度精製が予防の鍵——医療の進歩が疾患を激減させた歴史的な例
- •血清アルミニウム測定が診断の第一歩——定期モニタリングが重要
- •「過去に使われていた薬が後遺症を残した」——薬剤の安全性評価の継続的な重要性
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