分類8|その他・稀な遺伝性疾患約5分で読めます
ゴーシェ病とは?
グルコセレブロシドが臓器に蓄積する遺伝性疾患
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
谷川誠司さん(仮名・16歳)は、お腹が大きくなってきたと母親に心配されていました。肝臓と脾臓が著明に腫大しており、血液検査では血小板が非常に少なく、貧血もありました。
小児科での精査で「グルコセレブロシダーゼ(GBA)酵素活性」が著明に低下していることが判明しました。「ゴーシェ病(1型)」の診断でした。「脂質(グルコセレブロシド)が全身のマクロファージ(白血球の一種)に蓄積する遺伝性疾患です」と説明を受けました。
1型(最も多い型)は神経症状が出ないとのことで、酵素補充療法(イミグルセラーゼ)が開始されました。治療開始後、脾臓の腫大は著しく改善し、血小板も回復してきました。
「3型(慢性神経障害型)では認知機能低下・眼球運動障害・小脳症状が出ることがある」と説明を受けた時、「自分はなくて良かった」と安堵しながら、同じ病気で神経症状に苦しむ患者のことを思いました。
現在、誠司さんは月に1回の点滴を受けながら高校・大学と進学し、スポーツも楽しんでいます。「定期的な治療さえ続ければ、普通の生活ができる」という実感が日々の力になっています。
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基礎知識の解説
ゴーシェ病とは
ゴーシェ病は、GBA(酸性β-グルコシダーゼ)遺伝子変異による酵素欠損で、グルコセレブロシドがマクロファージ(ゴーシェ細胞)に蓄積する常染色体劣性のライソゾーム蓄積症です。1型(非神経障害型:最多)・2型(急性神経障害型)・3型(慢性神経障害型)に分類されます。3型では眼球運動障害・認知機能低下・小脳失調などの神経症状が出ます。
主な症状
- 11型:肝脾腫大・血小板減少・貧血・骨障害
- 22型(急性):生後6ヶ月以内に発症・脳幹症状・急速進行・致死的
- 33型(慢性):眼球運動障害(水平方向の注視麻痺)
- 43型:認知機能低下・知的障害
- 53型:小脳失調・てんかん発作
- 63型:脾臓腫大・骨障害(1型症状の合併)
- 7GBA変異はパーキンソン病の最多の遺伝的リスク因子でもある
原因・メカニズム
GBA酵素欠損によりグルコセレブロシドが全身のマクロファージに蓄積します(ゴーシェ細胞)。神経障害型(2・3型)では脳内の神経細胞にも蓄積が生じます。近年、GBA変異がパーキンソン病・レビー小体型認知症の遺伝的リスク因子として注目されています。
診断
血漿(または白血球)GBA酵素活性の低下で診断します。GBA遺伝子解析で変異を確認します。血漿グルコシルスフィンゴシン(lyso-Gb1)が病勢マーカーとして有用です。MRIで肝脾腫大・骨髄浸潤・脳病変(3型)を確認します。
治療・ケア
1・3型:酵素補充療法(ERT:イミグルセラーゼ・ベラグルセラーゼα)が有効です。基質合成抑制療法(SRT:ミグルスタット・エリグルスタット)も使用されます。神経症状(3型)への効果は限定的で、対症療法が主体です。2型は根治療法なし・緩和ケアが中心です。
予後・経過
1型はERTで良好な予後が期待できます。3型は神経症状の進行により予後が悪化します。2型は通常2歳以内に死亡します。GBA変異キャリアはパーキンソン病リスクが上昇するため、長期フォローが必要です。
この疾患の重要ポイント
- •「若年者の肝脾腫大+血球減少」はゴーシェ病を疑う
- •GBA変異はパーキンソン病・レビー小体型認知症の最多遺伝的リスク因子——ゴーシェ病患者の長期フォローが重要
- •1型は神経症状なし、3型は慢性神経障害——型の鑑別が治療方針と予後の予測に重要
- •ERT(酵素補充療法)が1型・3型の全身症状を大幅に改善——早期治療開始が重要
- •常染色体劣性遺伝——両親・兄弟への遺伝子検査を検討する
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