分類8|その他・稀な遺伝性疾患約5分で読めます
ニーマン・ピック病とは?
コレステロール代謝異常による神経変性
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
坂口真理さん(仮名・19歳)は幼い頃から「ふらふらする」「階段を上るのが苦手」という症状がありました。高校生になって、突然笑ったときに「がくっ」と膝が折れて転倒するようになりました(笑い発作に伴う脱力)。
神経科を受診すると「垂直方向の眼球運動障害」が指摘されました。上下を向こうとすると眼球がうまく動かない。また、記憶力が低下してきており、学校の勉強についていけなくなっていました。
遺伝子検査でNPC1遺伝子の変異が確認され、「ニーマン・ピック病C型(NPC)」と診断されました。「コレステロールの細胞内輸送が障害され、ニューロンにコレステロール・スフィンゴリピドが蓄積する疾患です」と説明を受けました。
ミグルスタット(基質合成抑制薬)の治療が開始されました。「神経症状の進行を遅らせる効果が期待されます」との言葉が、真理さんと家族の希望になりました。
「笑ったときに転ぶ。友達に説明するのが難しい」と真理さんは言います。「でも病名がわかったことで、自分に何が起きているかを理解できた。それだけでも少し楽になりました」
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基礎知識の解説
ニーマン・ピック病とは
ニーマン・ピック病C型(NPC)は、NPC1またはNPC2遺伝子変異によりコレステロール・スフィンゴリピドの細胞内輸送が障害され、脳神経細胞に脂質が蓄積するライソゾーム蓄積症です。垂直性核上性眼球運動障害(特に下方注視困難)・失調・認知機能低下・笑い発作に伴う脱力(カタプレキシー様)が特徴です。
主な症状
- 1垂直性眼球運動障害(上下を向けない)
- 2小脳失調(ふらつき・歩行障害)
- 3認知機能低下・学習障害
- 4笑いに伴うカタプレキシー様脱力
- 5構音障害・嚥下障害
- 6てんかん発作
- 7精神症状(精神病様症状・うつ)
- 8肝脾腫大(乳幼児期に多い)
原因・メカニズム
NPC1タンパクはエンドソーム・ライソゾームからのコレステロール輸送を担います。変異によりコレステロール・スフィンゴミエリンが細胞内に蓄積し、特にプルキンエ細胞(小脳)・ニューロンが障害されます。コレステロール蓄積が神経細胞の機能・生存を障害し、小脳萎縮・神経変性が進行します。
診断
皮膚線維芽細胞でのフィリピンステイン(コレステロール蓄積の蛍光染色)が古典的診断法です。血漿オキシステロール・7-ケトコレステロール・lyso-SM509が感度の高いバイオマーカーです。NPC1/NPC2遺伝子解析で確定診断します。「垂直性眼球運動障害+失調」の若年発症はNPCを必ず疑います。
治療・ケア
ミグルスタット(基質合成抑制薬)が神経症状の進行を遅らせる効果が認められています(欧州・日本で承認)。てんかん・カタプレキシーの対症療法を行います。リハビリテーション(理学療法・言語療法)が機能維持に重要です。
予後・経過
発症年齢・症状の重さにより予後は大きく異なります。青年期発症の場合、20〜30代での死亡が多いです。ミグルスタットにより神経症状の進行を緩やかにすることが可能です。
この疾患の重要ポイント
- •「垂直性眼球運動障害+失調+笑いで転ぶ(カタプレキシー様)」の若年者はNPCを疑う
- •「笑うと転ぶ」という症状はカタプレキシーと似るが、それ自体がNPCの診断手がかりになる
- •皮膚生検(フィリピンステイン)または血漿バイオマーカーが診断の第一歩
- •ミグルスタットが日本でも承認——早期診断・早期治療開始が神経予後を改善
- •常染色体劣性遺伝——家族への遺伝子カウンセリングが重要
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