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分類4代謝・内分泌・栄養の異常6分で読めます

肝性脳症とは?

肝硬変などで毒素が脳に回る状態

この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

今井守さん(仮名・62歳)は20年以上続くアルコール性肝硬変でした。「少し飲んでも大丈夫」と思っていた守さんに、ある日から変化が現れました。 夜になると別人のように混乱し、「ここはどこだ」「誰かが来る」と騒ぎます。日中は眠そうで、会話がかみ合わない。文字を書かせると「羽ばたき振戦(手がバタバタと震える動き)」が見られます。 病院に連れていくと、血液検査でアンモニア値が著明に上昇していました。「肝性脳症」の診断でした。肝臓が機能しなくなることで体内の毒素(特にアンモニア)が脳に達し、脳の機能を障害しているとのことでした。 ラクツロース(アンモニアを腸から排出させる薬)とリファキシミン(腸内のアンモニア産生菌を減らす抗菌薬)の投与で、守さんの状態は数日で改善しました。 「治る認知症の一つですが、肝臓の根本的な問題を解決しなければ、また繰り返します」と担当医は言いました。断酒を強く勧められた守さんは、今回の経験をきっかけに断酒外来に通い始めました。妻の幸子さんは「あの混乱状態を見て、もう二度と飲ませたくないと思いました」と語ります。

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基礎知識の解説

肝性脳症とは

肝性脳症は、肝硬変・急性肝不全などによる肝機能の著しい低下で、腸管由来のアンモニアなどの毒素が脳に達し、神経機能を障害する状態です。認知機能障害・意識障害・羽ばたき振戦(アステリクシス)が特徴で、肝機能の改善・アンモニア低下により多くの場合に回復します。

主な症状

  • 1認知機能障害(集中力低下・記憶障害)
  • 2睡眠覚醒リズムの逆転(昼眠い・夜混乱)
  • 3見当識障害・混乱・せん妄
  • 4羽ばたき振戦(手を伸ばしたときの粗大な振戦)
  • 5構音障害
  • 6性格変化・易怒性
  • 7重篤例:意識消失・昏睡
  • 8書字障害(書き方が乱れる)

原因・メカニズム

腸内細菌が食事中のタンパクからアンモニアを産生し、通常は肝臓で尿素に変換されます。肝硬変でこの解毒機能が失われると、アンモニアが血液脳関門を通過して脳に蓄積します。アンモニアはアストロサイト(脳の神経支持細胞)を腫脹させ、グルタミン酸系・GABA系の神経伝達を障害します。

診断

血中アンモニア値の上昇が診断の根拠となりますが、値と症状の重症度が必ずしも一致しないことに注意します。脳波でδ波・三相波の増加が確認されます。肝機能検査(ビリルビン・PT・アルブミン)で肝予備能を評価します。他の意識障害の原因を除外します。

治療・ケア

急性期:誘因(消化管出血・感染・便秘・タンパク過剰摂取)の除去が最重要です。ラクツロース(アンモニアの腸からの排出促進)・リファキシミン(腸内アンモニア産生菌の抑制)が第一選択です。分岐鎖アミノ酸製剤が栄養療法として有効です。根本治療は肝移植です。

予後・経過

誘因除去と薬物療法で多くの場合に急性期は回復しますが、肝硬変が進行するとともに繰り返します。最善の根本治療は肝移植です。繰り返す肝性脳症は長期的な認知機能障害を残すことがあります。

この疾患の重要ポイント

  • 「夜に混乱・昼に傾眠+アンモニア高値」は肝性脳症の典型的なパターン
  • 「羽ばたき振戦(アステリクシス)」は肝性脳症に特徴的な神経所見
  • 誘因(便秘・感染・タンパク過剰・消化管出血)の除去が治療の第一歩
  • ラクツロース・リファキシミンで改善する治療可能な「認知症」——早期介入が重要
  • 根本的な解決は断酒・肝機能改善・肝移植——繰り返す肝性脳症は認知機能に累積的なダメージを与える
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