分類4|代謝・内分泌・栄養の異常約5分で読めます
ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)とは?
ナイアシン不足による皮膚・神経・消化器症状
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
阿部哲男さん(仮名・58歳)はアルコール依存症で長年入退院を繰り返していました。ある入院中に、担当の若い研修医が「皮膚がおかしい」と気づきました。首・腕・手の甲など日光が当たる部分の皮膚が黒ずんで荒れているのです。
同時に、下痢が続いており、記憶の混乱・混迷状態も見られました。「皮膚炎・下痢・認知症の三徴がそろっています。ペラグラを疑います」と研修医が言いました。
指導医の確認の上、ナイアシン(ビタミンB3)の補充を開始しました。数日後、混乱は改善し、皮膚の状態も徐々に良くなっていきました。
「アルコール依存症の患者さんには、さまざまなビタミン欠乏が重なっています。ペラグラは今は稀ですが、アルコール依存症患者や極端な偏食の方では見られることがある」と指導医は説明しました。
哲男さんのケースは、病棟のカンファレンスで「見落としやすい治療可能な疾患」として取り上げられました。「三つの D(皮膚炎・下痢・認知症)を覚えておくと診断の手がかりになる」——若い医師たちにとって大切な学びとなりました。
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基礎知識の解説
ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)とは
ペラグラ(ニコチン酸欠乏症)は、ビタミンB3(ナイアシン・ニコチン酸)の欠乏によって生じる疾患で、「三つのD」——皮膚炎(Dermatitis)・下痢(Diarrhea)・認知症(Dementia)——が特徴的です。アルコール依存症・トウモロコシ主食の地域・吸収障害・ハルトナップ病(トリプトファン輸送異常)などで発症します。ナイアシンの補充で症状が改善する「治る認知症」の一つです。
主な症状
- 1皮膚炎:日光暴露部位の対称性皮膚炎(首・顔・手の甲)
- 2下痢:慢性下痢・腹痛・消化器症状
- 3認知症:記憶障害・混乱・見当識障害
- 4精神症状:抑うつ・不安・幻覚・せん妄
- 5口内炎・舌炎(赤い舌)
- 6倦怠感・体重減少
- 7四肢の感覚異常(末梢神経炎)
原因・メカニズム
ナイアシンはNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体として、エネルギー代謝・DNA修復・脂質合成に必須です。欠乏すると脳・皮膚・消化管など代謝の活発な組織が特に影響を受けます。アルコール依存症では摂取不足・吸収障害・ナイアシン利用障害が重なります。
診断
臨床診断が中心です(三つのDの確認)。尿中ナイアシン代謝物(N1-メチルニコチンアミド)の低下で欠乏を確認します。血清ナイアシン値は信頼性が低いです。他のビタミン欠乏症(B1・B2・B12)の合併確認が必要です。
治療・ケア
ナイアシン(ニコチン酸アミド)の経口補充(100〜300mg/日)が有効です。数日〜数週間で皮膚・消化器・精神症状が改善します。食事改善(肉・魚・豆類・ナッツ)と基礎疾患(アルコール依存症)の治療が必要です。
予後・経過
早期治療で症状は回復します。重篤な神経症状(認知症)が長期間続いた場合は完全回復が困難なことがあります。
この疾患の重要ポイント
- •「皮膚炎・下痢・認知症の三つのD」がペラグラの古典的三徴——覚えておくと診断の手がかりになる
- •アルコール依存症患者・極端な偏食者では複数のビタミン欠乏が重なっていることが多い
- •ナイアシン補充で劇的に改善する「治る認知症」の一例
- •現代の日本では稀だが、見落とすと重篤化するため知識として持っておく
- •トウモロコシ主食の地域・吸収障害(クローン病など)でも発症リスクがある
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