分類4|代謝・内分泌・栄養の異常約5分で読めます
甲状腺機能亢進症とは?
甲状腺ホルモン過剰による脳への影響
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
坂本茂さん(仮名・72歳)は、妻の陽子さんから「なんか最近落ち着きがない」と言われていました。以前は穏やかだったのに、ちょっとしたことでイライラする。食欲があるのに体重が減る。汗っかきになり、夜よく眠れない。
最初は「高齢者のうつ」かと思って精神科を受診しましたが、血液検査でTSHが低値・FT4が高値——甲状腺機能亢進症でした。
高齢者の甲状腺機能亢進症は、若年者に特徴的な「動悸・発汗・手の震え」が目立たず、「無関心型甲状腺機能亢進症(アパシーチック型)」として現れることが多いと説明されました。茂さんも動悸はなく、むしろ「気力がない・集中できない」という認知症様の症状が前面に出ていました。
バセドウ病(自己免疫性甲状腺機能亢進症)と診断され、抗甲状腺薬(チアマゾール)の内服を開始しました。2ヶ月後、甲状腺ホルモン値が正常化するにつれ、茂さんの認知機能・情緒も改善していきました。
「甲状腺の薬を飲み始めたら、別人のように落ち着いた」と陽子さんは言います。「もし認知症だったら、と思うと…。血液検査一つで解決できてよかった」
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基礎知識の解説
甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、甲状腺ホルモンの過剰が脳に影響し、認知機能障害・精神症状を引き起こすことがあります。高齢者では典型的な亢進症状(動悸・手の震え・眼球突出)が出にくく、「アパシー型」として無気力・認知症様症状として現れることがあります。
主な症状
- 1認知機能低下(集中力・記憶力の低下)
- 2焦燥感・易怒性・不安
- 3無気力・抑うつ(高齢者に多いアパシー型)
- 4体重減少(食欲はある)
- 5動悸・頻脈(高齢者では出にくい)
- 6発汗・暑がり
- 7手の振戦
- 8筋力低下・倦怠感
原因・メカニズム
甲状腺ホルモン過剰は代謝を全体的に亢進させ、脳内のカテコールアミン系を過活性化します。神経の興奮性が高まり、睡眠障害・焦燥・認知機能障害が生じます。高齢者では心臓や筋肉への影響が大きく、心房細動・筋力低下が認知機能低下に拍車をかけることがあります。
診断
血液検査でTSH低値・FT4高値を確認します。抗TSH受容体抗体(TRAb)陽性でバセドウ病と診断します。認知症評価では必ず甲状腺機能を含める(「治る認知症」の除外)。
治療・ケア
抗甲状腺薬(チアマゾール・プロピルチオウラシル)が第一選択です。重症例や薬剤で管理困難な場合はアイソトープ治療(131I)・手術が選択肢となります。甲状腺機能正常化とともに認知・精神症状も改善します。
予後・経過
適切な治療で甲状腺機能が正常化すれば、認知症様症状も回復します。ただし高齢者では回復に時間がかかることがあります。
この疾患の重要ポイント
- •高齢者の甲状腺機能亢進症は動悸ではなく「無気力・認知症様症状」として現れるアパシー型に注意
- •TSH低値が甲状腺機能亢進症のスクリーニング検査として最も感度が高い
- •認知症疑いには甲状腺機能検査が必須——治せる可能性がある
- •体重減少しているのに食欲があるという「逆説的」な状態が甲状腺機能亢進症のヒント
- •治療で正常化すれば認知症様症状も回復する——早期発見・早期治療が重要
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