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分類4代謝・内分泌・栄養の異常5分で読めます

低ナトリウム血症とは?

血液中のナトリウム低下による脳機能障害

この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

川島恵子さん(仮名・81歳)は「水を飲むのは体にいい」という思い込みから、毎日2リットル以上の水を飲む習慣がありました。利尿薬も服用していたため、ナトリウムの排泄が促進されていました。 ある日から、恵子さんは「ぼんやりして会話が噛み合わない」状態になりました。娘の由美子さんが気づいて救急へ——血液検査でナトリウム値が120mEq/L(正常:135〜145)まで低下していました。「重篤な低ナトリウム血症」でした。 入院して生理食塩水の点滴を慎重に行いました。「慎重に」という言葉には理由がありました。「低ナトリウム血症を急速に補正すると、橋中心性髄鞘崩壊症(CPM)という重篤な神経障害が起きる危険がある」と担当医が説明しました。 ゆっくりとナトリウムを補正していくと、恵子さんの意識は徐々に回復してきました。「水を飲みすぎていたことが問題でした。高齢者は腎臓の調節能力が低下しているので、過剰な水分摂取は逆に危険です」と指導を受けました。 「水が体にいいと思っていたのに」と由美子さんは驚きました。「適切な量が大切で、過剰は毒にもなる」——この経験は家族全員の健康観を変えました。

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基礎知識の解説

低ナトリウム血症とは

低ナトリウム血症(血清Na<135mEq/L)は高齢者に多く見られる電解質異常で、認知機能障害・意識障害・けいれんを引き起こします。利尿薬・SIADH(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群)・過剰な水分摂取・心不全・肝硬変などが原因となります。適切な補正で症状が改善する「治る認知症」の一つです。

主な症状

  • 1倦怠感・脱力感
  • 2頭痛・吐き気
  • 3認知機能低下・混乱・ぼんやり感
  • 4見当識障害
  • 5筋痙攣・ミオクローヌス
  • 6てんかん発作(重篤な低Na)
  • 7意識障害・昏睡(重篤例)
  • 8歩行障害・転倒リスク増加

原因・メカニズム

ナトリウムは細胞外液の主要な陽イオンであり、細胞膜を挟んだ浸透圧勾配を維持します。血清Na低下により浸透圧が下がると、水が細胞内に移行して細胞が膨張します。特に脳細胞(神経細胞・グリア)が膨張すると脳浮腫となり、神経機能が障害されます。

診断

血清ナトリウム値の測定が基本です。原因特定のために尿Na・尿浸透圧・血漿浸透圧を測定します。甲状腺・副腎機能、利尿薬使用歴、水分摂取量を確認します。

治療・ケア

軽度〜中等度(症状なし〜軽症):水分制限・原因治療。症状がある場合:生理食塩水の慎重な補正(最初の24時間で8〜10mEq/L以内)。急速補正は橋中心性髄鞘崩壊(CPM)のリスクがあるため禁忌。利尿薬の見直し・SIADH治療(バプタン製剤)が必要な場合もあります。

予後・経過

適切な補正で症状は回復します。急速補正による橋中心性髄鞘崩壊(CPM)は不可逆的な神経障害をもたらすことがあります。原因の根本的な治療が再発予防に必要です。

この疾患の重要ポイント

  • 高齢者の「ぼんやり・混乱」は電解質(特にナトリウム)異常を早期に確認する
  • 利尿薬服用中の高齢者は低ナトリウム血症の高リスク群——定期的な電解質確認が重要
  • 「水を飲みすぎると低ナトリウム血症になる」——高齢者への過剰な水分摂取指導は危険
  • 急速補正によるCPMは不可逆的——慎重なゆっくりした補正が原則
  • SIADH(SIADHは多くの薬剤・疾患で引き起こされる)を見逃さない
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