体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
異染性白質ジストロフィーとは
異染性白質ジストロフィー(MLD)は、ARSA遺伝子変異によりアリルスルファターゼA酵素が欠損し、スルファチドが中枢・末梢神経のミエリンに蓄積する常染色体劣性のライソゾーム蓄積症です。乳児型(最も重症)・幼児型・成人型があり、成人型では精神症状・認知機能低下が先行するため精神疾患と誤診されやすいです。
主な症状
- 1成人型:精神症状(行動変容・認知機能低下)が先行
- 2成人型:痙性歩行・協調運動障害
- 3成人型:末梢神経障害(腱反射低下)
- 4成人型:言語・コミュニケーション障害
- 5乳児型:発達退行・歩行喪失・嚥下障害
- 6幼児型:認知退行・学習障害・行動変容
- 7全型:白質の広範な変性(MRI)
原因・メカニズム
ARSA酵素欠損によりスルファチドがミエリンを産生するオリゴデンドロサイト・シュワン細胞に蓄積します。ミエリンの変性・崩壊が大脳・小脳・脊髄・末梢神経に進行します。スルファチドが「異染性」(メタクロマジー)に染色されることが疾患名の由来です。
診断
血漿(または白血球)ARSA酵素活性の著明な低下で診断します。ARSA遺伝子解析で確定診断します。尿中スルファチド排泄増加が補助的指標です。MRIで大脳白質の広範な変性(蝶の羽パターン)が特徴的です。
治療・ケア
造血幹細胞移植(HSCT)が発症前または発症初期に行われた場合に有効です。遺伝子治療(ex vivo遺伝子補正HSCを用いた)が臨床試験段階にあり、発症前〜初期の患者に有望な結果が出ています。症状が進行した後は対症療法が主体です。
予後・経過
発症年齢・型によって予後が大きく異なります。乳児型は数年以内に死亡します。成人型は比較的緩徐ですが、最終的に重篤な障害に至ります。遺伝子治療が早期発症例の予後を変える可能性があります。
異染性白質ジストロフィーの重要ポイント
「若年成人の精神症状(行動変容・認知低下)+白質変性(MRI)」はMLDを疑う
成人型では精神症状が先行し、うつ病・統合失調症と誤診されやすい——早期に神経科受診を
ARSA酵素活性の血液検査が簡便なスクリーニング——「白質変性疾患を疑ったら酵素活性を測定」
遺伝子治療が新たな希望——発症前・初期での診断が治療の機会につながる
新生児スクリーニング(一部の国で実施)が早期診断・遺伝子治療の機会を最大化