分類2|血管性認知症約5分で読めます
脳出血後認知症とは?
脳出血の後遺症として生じる認知機能障害
この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
体験談・具体的な事例
吉田猛さん(仮名・64歳)は工場の班長として元気に働いていました。ある朝、突然「頭が割れるように痛い」と訴えて倒れ、救急搬送されました。診断は高血圧性脳出血——左の被殻(大脳基底核)に出血が起きていました。
緊急手術で一命を取り留め、3ヶ月の入院リハビリを経て自宅に戻ってきましたが、妻の京子さんの目には「元の猛とは違う人」に見えました。右半身に麻痺が残り、言葉が出にくい(失語)。何より、以前は積極的だった夫が、何事にも無気力で「どうでもいい」という態度になっていました。
記憶の問題も出てきました。昨日のことを覚えていない、薬を飲んだかどうかわからない。計算ができなくなり、お金の管理も難しくなりました。
「脳出血の後遺症として認知症の症状が出ることは珍しくない」と担当医から説明を受けました。出血した部位と周辺の脳組織が壊れたこと、さらに出血後の脳の腫れや炎症が広い範囲に影響していることが原因と言われました。
京子さんは介護保険を申請し、訪問リハビリ・ヘルパーサービスを組み合わせながら在宅生活を継続しています。「元の猛には戻らないかもしれないけど、今の猛と一緒に生きていく」と京子さんは決意しています。
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基礎知識の解説
脳出血後認知症とは
脳出血後認知症は、脳出血(高血圧性・アミロイドアンギオパチー性など)の後遺症として生じる認知機能障害です。出血部位・量・周囲への影響によって症状の程度は大きく異なります。運動麻痺・失語などの局所症状と認知症が合併することが多く、急性期リハビリが回復の鍵となります。
主な症状
- 1記憶障害(新しい情報の記銘が困難)
- 2実行機能障害(計画・段取りの困難)
- 3注意力・集中力の低下
- 4感情の平板化・無気力・抑うつ
- 5失語(左半球出血の場合)
- 6空間認識障害(右半球出血の場合)
- 7運動麻痺・感覚障害との合併
- 8せん妄(急性期)
原因・メカニズム
脳出血により血腫が形成されると、周囲の脳組織が直接壊れるほか、血腫による圧迫・浮腫・炎症が周辺の広い範囲に影響します。出血部位が記憶・認知に関わる白質連絡線維を損傷すると、離れた部位の機能も低下します(離断症候群)。血腫吸収後も神経細胞の死滅による障害が残ります。
診断
頭部CT・MRIで出血部位と範囲を確認します。急性期以後に神経心理検査で認知機能を評価します。脳出血の原因(高血圧性かアミロイドアンギオパチーか)の鑑別が再出血予防のために重要です。
治療・ケア
急性期はリハビリテーションの早期開始が最重要です。再出血予防のための血圧管理が予後を左右します。認知症症状にはコリンエステラーゼ阻害薬が使われることがありますが、効果は限定的です。介護保険・障害者手帳の活用で多職種支援を構築します。
予後・経過
出血部位・量・年齢・合併症により予後は大きく異なります。急性期リハビリの集中的な実施が回復を最大化します。再出血のリスクがあり、血圧管理が長期的に重要です。
この疾患の重要ポイント
- •脳出血後の「無気力・意欲低下」は認知症症状の一つ——怠けではなく脳の障害
- •出血部位によって症状が異なる——左半球は言語、右半球は空間認識に影響
- •再出血予防のための血圧管理が最も重要な長期的課題
- •急性期リハビリを早期・集中的に行うことが回復を最大化する
- •「元に戻る」より「今できることを最大化する」という視点での支援が重要
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