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分類1変性性認知症6分で読めます

脊髄小脳変性症に伴う認知症とは?

運動失調に伴って現れる認知機能障害

この記事は一般的な知識提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

体験談・具体的な事例

岡田博之さん(仮名・55歳)は、40代後半から「酔っぱらっているみたいな歩き方」を指摘されるようになりました。本人はお酒を一切飲みません。 最初は階段を踏み外すことが増え、まっすぐ歩けない。箸が持ちにくい。字が乱れる。耳鼻科・整形外科・内科と受診を重ねても異常がみつからず、ようやく神経内科にたどり着いたのは症状が出てから2年後のことでした。 神経内科での検査で、脳MRIに小脳の萎縮が確認されました。遺伝子検査の結果、「脊髄小脳変性症3型(マシャード・ジョセフ病)」と診断されました。父方の親族にも同様の症状を持つ人がいることがわかりました。 54歳になったころから、物忘れが目立ってきました。仕事の段取りがつかめない、人の顔と名前が結びつかない。妻の麻衣さんは「最初は運動症状だけだったのに、頭のほうも変わってきた」と感じました。神経内科では「脊髄小脳変性症に伴う認知機能障害」と説明を受けました。 博之さんは現在、電動車椅子を使用しながら在宅で生活しています。音声入力でメールや文章を作成し、地域のSCA(脊髄小脳変性症)患者会のオンライン活動に参加しています。「同じ病気の仲間がいることで、孤独じゃないと思えるようになった」と博之さんは言います。

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基礎知識の解説

脊髄小脳変性症に伴う認知症とは

脊髄小脳変性症(SCA)は、小脳・脊髄の神経細胞が変性する疾患群の総称です。主な症状は運動失調(ふらつき・手足の不器用さ)ですが、疾患の種類や進行度によって認知機能障害を伴うことがあります。遺伝性のものと孤発性のものがあり、40〜60以上のサブタイプが知られています。

主な症状

  • 1運動失調(歩行時のふらつき・バランス障害)
  • 2手の不器用さ・振戦
  • 3構音障害(ろれつが回りにくい)
  • 4眼球運動障害(眼振)
  • 5嚥下障害
  • 6認知機能低下(注意・実行機能・処理速度の低下)
  • 7前頭葉症状(無関心・計画性の低下)
  • 8抑うつ・不安

原因・メカニズム

SCAの原因は疾患サブタイプによって異なります。CAGリピートの伸長(SCA1/2/3/6/7/17等)、非コードCAGリピート(SCA8/10等)、点変異(SCA13/14/27等)が主な原因です。小脳・脊髄の神経細胞変性が運動症状の主体ですが、大脳皮質・前頭葉への変性が進行すると認知機能障害が出現します。SCA17やSCA2は特に認知症との合併が多いです。

診断

遺伝子検査(CAGリピート数等)で遺伝性SCАの確定診断が可能です。MRIで小脳・脳幹の萎縮を確認します。神経心理検査では前頭葉機能・注意・実行機能の評価が重要です。孤発性の場合、多系統萎縮症(MSA)との鑑別が必要です。

治療・ケア

根治療法はありません。運動失調に対してリハビリテーション(理学療法・作業療法)が有効で、機能の維持・転倒予防に重要です。タルチレリン水和物(TRH誘導体)が一部の孤発性SCAに有効です。認知機能障害への薬物療法のエビデンスは限られています。嚥下障害には言語聴覚士の介入が重要です。

予後・経過

サブタイプにより異なります。SCA3(最多)は発症から15〜20年の経過をたどります。認知機能障害の程度は運動症状と必ずしも平行せず、個人差が大きいです。誤嚥性肺炎・転倒骨折が予後を左右します。

この疾患の重要ポイント

  • SCАは40種類以上のサブタイプがあり、認知症を伴うかどうかはサブタイプによって異なる
  • 「酔っぱらったような歩き方」が若年者に出た場合、SCАを鑑別に挙げる
  • 遺伝性のサブタイプでは遺伝カウンセリングが必須
  • リハビリテーション(理学療法・作業療法・言語療法)が生活の質を長く保つ鍵
  • 患者会・ピアサポートが精神的支援として大きな役割を果たす
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