将来の介護計画を立て、不安を軽減
施設入所や看取りについても考える
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
将来の施設入所や看取りについて考えることは、本人を見捨てるようで避けたくなるものですが、漠然とした不安を抱え続けることは、介護者の負担を増大させます。早めに家族で話し合い、計画を立てておくことが、いざというときの安心につながります。
体験談
父(84歳、アルツハイマー型認知症)の在宅介護を続けている中で、私はこれまで「今のことで精一杯」と、将来のことを考えるのを避けてきました。施設入所や、万が一のときの看取りについて考えることは、どこか父を見捨てるようで、話題にすること自体に強い抵抗がありました。
しかし、ある日、父の症状が急に進行し、私自身が体調を崩して数日間動けなくなったとき、「もし自分がこのまま倒れてしまったら、父はどうなるのか」という現実的な不安に、初めて正面から向き合わざるを得なくなりました。
ケアマネジャーさんに相談し、家族で話し合う機会を持ちました。将来、在宅での介護が難しくなった場合の施設入所の希望や、延命治療についての父自身の考え、そして家族としての向き合い方について、時間をかけて話し合いました。
話し合いは決して楽なものではありませんでしたが、将来の方向性について、ある程度の合意ができたことで、漠然とした不安が、具体的な見通しに変わりました。「考えたくない」と避け続けるより、早めに向き合っておくことの方が、結果的に自分たちの安心につながるのだと気づきました。
— 84歳の父(アルツハイマー型認知症)を介護する56歳息子
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なぜ将来の計画を立てておくことが大切なのか
なぜ将来の計画を立てておくことが大切なのか
認知症の介護は、いつまで続くか、どのように進行するかを正確に予測することが難しいものです。「今のことで精一杯」という状況は自然なことですが、将来について考えることを避け続けると、いざ状況が変化したときに、突然の判断を迫られ、大きな混乱や後悔につながることがあります。
施設入所や看取りについて話し合うことは、本人を見捨てることではなく、本人の意思を尊重し、家族としてどう向き合っていくかを、落ち着いた状態であらかじめ考えておくための、大切な準備です。将来の計画を立てる具体的な工夫は、下の実践のステップを参考にしてください。
💬 「考えること自体に抵抗がありました」
💬 「考えること自体に抵抗がありました」
介護経験者からのアドバイス
「施設入所や看取りについて考えることは、父を見捨てるようで、ずっと避けてきました。でも、自分が倒れたときのことを想像して、初めて現実的に向き合う必要性を感じました。
話し合いは簡単なことではありませんでしたが、方向性が見えたことで、漠然とした不安がずいぶん軽くなりました。避け続けるより、早めに向き合っておく方が、結果的に安心につながると実感しています。」
話し合いを進める際の配慮
話し合いを進める際の配慮
- 本人の前で話す場合は、本人の尊厳を傷つけないよう、言葉選びに配慮する
- 一度ですべてを決めようとせず、時間をかけて段階的に話し合う
- 家族間で意見が分かれる場合は、ケアマネジャーなど第三者に間に入ってもらうことも検討する
実践のステップ
認知症が進行する前に本人の将来についての希望を聞いておく
将来の介護の方向性について家族間で話し合う機会を作る
地域の施設について費用や特徴の情報をあらかじめ集めておく
ケアマネジャーに今後起こりうる変化や選択肢について相談する
エンディングノートなどを活用し本人の希望を書き留めておく
注意点
家族間で将来の方針について意見が大きく分かれている場合、本人の意思確認が難しい段階まで進行してしまった場合、経済的な見通しについて不安がある場合は、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー、場合によっては弁護士や司法書士など、専門家を交えた話し合いを検討してください。
こんな場合は当てはまらないことも
将来の話を切り出すタイミングを誤ると、本人にとっては『もう見放されるのでは』という不安や、診断直後のショックが癒えないうちに追い打ちをかけることになりかねません。本人の心の準備が整っていない段階で無理に話し合いを進めるのではなく、日々の会話の延長で少しずつ、本人のペースに合わせて触れていくことが大切です。
応用・バリエーション
本人が話し合いに強い抵抗を示す場合は、一度に結論を出そうとせず、日常会話の中で少しずつ意向を確認していく方法も有効です。
まとめ
このヒントのポイント
将来を考えることを避け続けると突然の判断を迫られ混乱しやすい
本人の意思を早い段階で聞いておくことが大切
家族で話し合い施設の情報も事前に集めておく
ケアマネジャーやエンディングノートも将来の計画の助けになる
家族間の意見の相違や経済的不安がある場合は専門家を交える
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根拠について:将来の介護計画(アドバンス・ケア・プランニング)を早期に話し合うことが本人の意思尊重と家族の意思決定負担の軽減に資するという考え方は医療・介護の分野で広く支持されている。