一人で抱え込まず、家族や専門職に相談
介護の悩みを共有し、負担を軽減
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
「自分が何とかしなければ」という思い込みは、介護者を孤立させ、心身の負担を増大させることがあります。家族や専門職に、具体的な困りごとを言葉にして相談することが、負担を分かち合い、解決策を見つける第一歩になります。
体験談
父(82歳、アルツハイマー型認知症)の介護を始めてから、私は「自分が家族なのだから、自分でなんとかしなければ」という思いが強く、誰かに助けを求めることを避けていました。夫にも「大丈夫、任せて」とだけ伝え、実際の大変さを詳しく話すことはありませんでした。
ある日、些細なことがきっかけで涙が止まらなくなり、自分でも驚くほど感情が抑えられなくなりました。心配した夫が「一人で抱え込みすぎだよ、話してほしかった」と言ってくれたことで、初めて自分がどれほど追い詰められていたかに気づきました。
それから、ケアマネジャーさんに、実際の困りごとを具体的に相談するようにしました。「トイレの介助がつらい」「夜眠れない」といった、これまで一人で我慢していたことを言葉にしただけで、いくつかの解決策や、利用できるサービスを教えてもらえました。
家族にも、良い部分だけでなく、大変な部分もきちんと伝えるようにしたところ、夫や兄弟が協力してくれる場面が増えました。「一人で頑張るのが家族の務め」という思い込みを手放したことで、ようやく肩の荷が少し軽くなりました。
— 82歳の父(アルツハイマー型認知症)を介護する54歳娘
詳しく知る
なぜ一人で抱え込んでしまうのか
なぜ一人で抱え込んでしまうのか
家族の介護は、「自分がやるべきこと」「弱音を吐いてはいけない」という責任感や思い込みから、一人で抱え込んでしまいやすい領域です。特に、他の家族に迷惑をかけたくない、専門職に相談するほどのことではないと感じてしまうことで、助けを求めるタイミングを逃してしまうことがあります。
しかし、介護の負担を一人で背負い続けると、心身の疲労が限界を超え、うつ状態や、本人への不適切な対応につながるリスクが高まります。困りごとを具体的に言葉にして共有することは、負担を分かち合うだけでなく、自分では気づけなかった解決策を見つけるきっかけにもなります。
相談する際の工夫
相談する際の工夫
1具体的な困りごとを言葉にする
「大変」という漠然とした表現ではなく、「夜中に何度も起こされて眠れない」「トイレの介助が身体的につらい」など、具体的な内容を伝えましょう。
2家族間で役割分担を話し合う
介護を一人だけで担うのではなく、できる範囲で家族それぞれが分担できることを話し合いましょう。遠方に住む家族でも、金銭的な支援や、電話での話し相手など、できる関わり方があります。
3ケアマネジャーに率直に伝える
ケアマネジャーは、介護保険サービスの調整だけでなく、介護者自身の悩みの相談相手でもあります。遠慮せず、困っていることを伝えましょう。
4地域包括支援センターを活用する
介護保険サービス以外の悩み(家族関係、経済的な不安など)についても、地域包括支援センターで相談に乗ってもらえることがあります。
5定期的に気持ちを吐き出す機会を作る
家族、友人、専門職など、誰か一人でも、定期的に本音を話せる相手を持つことを意識しましょう。
💬 「弱音を吐いてはいけないと思っていました」
💬 「弱音を吐いてはいけないと思っていました」
介護経験者からのアドバイス
「家族の介護は自分の役目だと思い込み、弱音を吐くことに抵抗がありました。でも、限界まで我慢した結果、涙が止まらなくなるほど追い詰められてしまいました。
具体的な困りごとを言葉にして相談するようになってから、家族の協力も増え、解決策も見えてきました。一人で抱え込むことが、必ずしも家族への愛情の証ではないのだと気づかされました。」
相談先の例
相談先の例
- ケアマネジャー(介護保険サービスの調整、日々の悩み相談)
- 地域包括支援センター(総合的な相談窓口)
- かかりつけ医、訪問看護師(医療的な相談)
- 家族会、介護者同士のコミュニティ(同じ立場の人との共有)
- 精神科・心療内科(介護者自身の心の不調への対応)
こんな時は専門家への相談を急ぐべき
こんな時は専門家への相談を急ぐべき
- 涙が止まらない、感情の起伏が激しくなったと感じる
- 本人に対して、これまでにない強い苛立ちや衝動を感じる
- 眠れない日が続き、心身の不調を感じている
こうしたサインが見られたら、様子を見ずに、早めに専門家に相談してください。
まとめ:一人で抱え込まないことが、介護を続ける力になる
まとめ:一人で抱え込まないことが、介護を続ける力になる
「自分が何とかしなければ」という思い込みは、介護者を孤立させ、限界を超えるまで頑張らせてしまうことがあります。家族や専門職に、具体的な困りごとを言葉にして相談することが、負担を分かち合い、無理なく介護を続けるための力になります。
実践のステップ
『大変』ではなく具体的な困りごと(夜間の睡眠不足、身体的な負担など)を言葉にして伝える
家族間でできる範囲の役割分担を話し合う
ケアマネジャーに率直に困りごとを伝える
介護保険サービス以外の悩みも地域包括支援センターに相談する
定期的に本音を話せる相手を持つ
注意点
涙が止まらない、感情の起伏が激しくなったと感じる場合、本人に対してこれまでにない強い苛立ちや衝動を感じる場合、眠れない日が続き心身の不調を感じている場合は、様子を見ずに、早めに専門家に相談してください。
応用・バリエーション
対面での相談が難しい場合は、電話相談窓口や、オンラインの介護者コミュニティを活用する方法もあります。まずは気軽に利用できる窓口から試してみましょう。
まとめ
このヒントのポイント
『自分が何とかしなければ』という思い込みが孤立を招くことがある
具体的な困りごとを言葉にすることで解決策が見つかりやすくなる
ケアマネジャーや地域包括支援センターは日々の悩みの相談先にもなる
家族間の役割分担も遠方からできる形がある
感情の起伏や睡眠不足が続く場合は早めに専門家に相談する
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