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否定や訂正をせず、相手の世界観に寄り添う

事実の指摘より感情の共有を優先し、信頼関係を築く

事実の訂正より、相手の感情や世界観を尊重することが大切です。否定せずに寄り添うことで、不安や混乱を防げます。

ケーススタディ

施設で暮らす長谷川博さん(78歳)は、毎朝「これから仕事に行かなきゃ」と玄関に向かおうとします。実際には20年前に退職されているのですが、職員が「もう仕事は辞められましたよ」と説明すると、激しく怒り出してしまいました。

担当の介護福祉士が対応を変えました。「そうですか、お仕事に行かれるんですね。でも今日は土曜日なのでお休みですよ。一緒にお茶でも飲みませんか?」と声をかけると、長谷川博さんは「そうか、今日は休みか」と納得され、穏やかにデイルームに向かわれました。

長谷川博さんの「仕事に行く」という発言を否定せず、自然な形で別の活動に誘導することで、混乱や不安を避けることができたのです。

長谷川博さん78歳) - レビー小体型認知症、元会社員、特別養護老人ホーム入所中

詳しく知る

認知症のある方は、過去と現在が混ざり合った独自の世界で生きていることがあります。これは「時間の見当識障害」によるもので、本人にとってはその世界が現実です。

この世界観を「間違っている」と否定すると、本人は混乱し、不安や怒りを感じます。「自分の言っていることを信じてもらえない」という思いが、さらに精神的な苦痛を生みます。

大切なのは、事実の訂正ではなく、本人の感情に寄り添うことです。「仕事に行く」という発言の背景には、「役に立ちたい」「何かをしなければ」という気持ちがあるかもしれません。その気持ちを受け止め、共感を示すことが、信頼関係につながります。

ただし、全てを肯定する必要はありません。安全を守る必要がある場合(外出しようとする、危険な行動をとろうとするなど)は、理由をつけて自然に別の活動に誘導することが有効です。

実践のステップ

  1. 相手の発言や行動を否定する言葉(「違う」「もう○○じゃない」など)を避ける

  2. 「そうですか」「そうなんですね」と、まず受け止める

  3. 本人の気持ちや意図を想像する(「役に立ちたい」「家に帰りたい」など)

  4. 自然な形で別の話題や活動に誘導する

  5. 安全が確保できるなら、本人のペースに合わせる

注意点

ただし、本人や他者の安全に関わる場合は、上手に誘導する必要があります。例えば「外出したい」という場合、「今日は寒いから明日にしましょう」「一緒に行きましょう、準備をしてから」などと声をかけ、時間をかけて気持ちを切り替えてもらいます。

応用・バリエーション

時には、本人の世界観に完全に入り込んで会話することも有効です。例えば「お仕事、お疲れ様でした」「今日はどうでしたか?」と声をかけることで、本人の自尊心が保たれ、満足感を得られることがあります。

まとめ

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