静かで落ち着いた環境で会話する
騒音や刺激を減らし、集中しやすい場を作る
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
テレビの音や周囲の話し声など、雑音の多い環境は、認知症のある方の理解力や集中力を大きく妨げます。重要な会話は、静かで落ち着いた環境を整えてから行うことで、本人が話に集中しやすくなります。
体験談
父(81歳、アルツハイマー型認知症)に、今後のデイサービスの利用日数について大事な相談をしようとしたときのことです。リビングではテレビがつけっぱなしで、妹も台所で洗い物をしながら話に加わろうとし、私も父に説明しながら、つい早口になっていました。父は次第に表情が曇り、「もういい、わからない」と話を打ち切ってしまいました。
後日、ケアマネジャーさんに相談すると、「大事な話をするときは、テレビを消して、なるべく一対一で、静かな環境を作ってみてください」とアドバイスを受けました。
次にデイサービスの相談をする際は、テレビを消し、妹にも少し席を外してもらい、父と二人きりで、落ち着いた声のトーンでゆっくり話しました。すると父は、以前より落ち着いた様子で私の話に耳を傾け、「そうか、それなら安心だ」と、自分の意向も含めて答えてくれました。
同じ内容の話でも、環境を整えるだけで、父の理解度も、話し合いそのものの質も、まったく違うものになることを実感しました。それ以来、重要な話をするときは、まず静かな環境を整えることを心がけています。
— 81歳の父(アルツハイマー型認知症)を介護する53歳息子
詳しく知る
なぜ静かな環境が会話に重要なのか
なぜ静かな環境が会話に重要なのか
認知症になると、複数の情報を同時に処理する力(注意の分割・選択機能)が低下しやすくなります。健常な人であれば、テレビの音を聞き流しながら会話に集中することができますが、認知症のある方にとっては、テレビの音、家族の会話、生活音などがすべて同じように耳に入り、どの情報に注意を向ければよいか分からなくなってしまうことがあります。
その結果、会話の内容が正しく伝わらなかったり、疲労や混乱から「もういい」と話を切り上げてしまったりすることがあります。これは理解力そのものの問題というより、雑音の多い環境が理解を妨げていることが原因である場合が少なくありません。
静かな環境を作る工夫
静かな環境を作る工夫
1テレビや音楽を消す
重要な話をする前に、テレビやラジオ、音楽などを消し、聴覚的な刺激を減らしましょう。
2一対一で話す
複数人が同時に話しかけると、誰の話に注意を向ければよいか分からなくなることがあります。重要な話は、できるだけ一対一で行いましょう。
3落ち着いた場所を選ぶ
人の出入りが多い場所や、生活音が響く台所などを避け、落ち着いて座れる静かな部屋を選びましょう。
4時間帯を選ぶ
疲れている時間帯や、夕方の落ち着かない時間帯(夕暮れ症候群が見られる場合)を避け、本人が比較的落ち着いている時間帯に話をしましょう。
💬 「同じ話でも、伝わり方がまるで違いました」
💬 「同じ話でも、伝わり方がまるで違いました」
介護経験者からのアドバイス
「テレビをつけたまま、複数人で話しかけていたときは、父はいつも困った顔で話を切り上げてしまっていました。でも、テレビを消して、二人きりで、落ち着いて話すようにしただけで、父の反応がまったく違ったんです。
『理解力が落ちた』と思っていたことの一部は、実は環境のせいだったのかもしれないと気づきました。大事な話をするときほど、まず環境を整えることを意識するようになりました。」
会話の環境を整える際のポイント
会話の環境を整える際のポイント
- 会話の前に、周囲の音や刺激を減らす一手間を惜しまない
- 本人の視界に入り、目線を合わせてから話し始める
- 会話中に他の家族が割り込まないよう、あらかじめ声をかけておく
こんな時は工夫を続けても難しい場合
こんな時は工夫を続けても難しい場合
静かな環境を整えても理解や反応が乏しい場合は、話す速さや情報量、目線や表情など、他の伝え方の工夫も合わせて見直してみましょう。
こんな時は専門家に相談
こんな時は専門家に相談
- 静かな環境を整えても、会話への反応がほとんど見られない
- 雑音や人混みに対して、以前よりも強い苛立ちや混乱を示すようになった
- 聴力の低下が疑われる
こうした場合は、認知機能の変化に加えて、聴力の問題など他の要因が関わっている可能性もあるため、耳鼻科やかかりつけ医への相談を検討しましょう。
まとめ:環境を整えることも、伝える工夫の一つ
まとめ:環境を整えることも、伝える工夫の一つ
言葉の選び方や話し方だけでなく、会話をする環境そのものが、認知症のある方の理解度に大きく影響します。テレビを消し、静かで落ち着いた場所で一対一で話すという一手間が、重要な話し合いの質を大きく変えることがあります。
実践のステップ
重要な話をする前にテレビやラジオ、音楽を消す
複数人で同時に話しかけず、できるだけ一対一で話す
人の出入りが多い場所を避け、落ち着いて座れる静かな部屋を選ぶ
本人が比較的落ち着いている時間帯を選んで話す
会話中に他の家族が割り込まないよう、あらかじめ声をかけておく
注意点
静かな環境を整えても会話への反応がほとんど見られない場合や、雑音・人混みへの苛立ちが以前より強くなった場合は、認知機能の変化だけでなく聴力の問題など他の要因が関わっている可能性があります。耳鼻科やかかりつけ医に相談してください。
応用・バリエーション
静かな環境を用意しても落ち着かない場合は、本人が慣れ親しんだ場所(いつも座る椅子など)を会話の場に選ぶと、安心感から集中しやすくなることがあります。
まとめ
このヒントのポイント
雑音の多い環境は認知症のある方の理解や集中を妨げやすい
重要な話はテレビを消し一対一で行うことが望ましい
落ち着いた場所と本人が落ち着いている時間帯を選ぶ
環境を整えることも伝え方の工夫の一つ
環境を整えても反応が乏しい場合は聴力など他の要因も確認する
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