スキンシップで温もりと安心を伝える
手を握る、肩に触れるなどの接触で心を通わせる
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
言葉での会話が難しくなっても、手を握る、肩にそっと触れるといったスキンシップは、温もりと安心感を伝える大切な手段です。言葉に頼らないつながりが、本人との心の交流を保つ助けになります。
体験談
祖母(88歳、アルツハイマー型認知症、末期に近い段階)は、言葉での会話がほとんど難しくなり、こちらの問いかけにも反応が薄くなっていました。「もう何も伝わっていないのかもしれない」と、正直、面会に行っても何を話せばいいのか分からなくなっていた時期があります。
ある日、何を話しても反応がないので、ふと祖母の手をそっと握ってみました。すると、それまで宙を見つめていた祖母の目が、ゆっくりとこちらを向き、握った手を優しく握り返してくれたのです。言葉は出ませんでしたが、その瞬間、確かに祖母と心が通じ合ったように感じました。
それからは、面会のたびに、無理に言葉で話しかけようとするのをやめ、手を握ったり、肩にそっと触れたりしながら、静かに寄り添う時間を大切にするようになりました。時折、祖母が私の手を握り返してくれたり、穏やかな表情を見せてくれたりすることがあり、言葉がなくても、確かなつながりを感じられる瞬間がありました。
「話せなくなったら、もう通じ合えない」と思っていましたが、それは違うのだと、祖母との時間を通して教えられました。
— 88歳の祖母(アルツハイマー型認知症)の面会を続ける孫
詳しく知る
なぜ言葉が難しくなってもスキンシップが伝わるのか
なぜ言葉が難しくなってもスキンシップが伝わるのか
認知症が進行し、言葉での理解や表現が難しくなった段階でも、触れ合いによる安心感や温もりを感じる力は、比較的長く保たれると考えられています。皮膚を通した感覚は、言語を介さずに直接的に情緒に働きかけるためです。
言葉での会話が成立しにくくなると、「もう何も伝わらない」「通じ合えない」と感じてしまいがちですが、手を握る、肩に触れるといった身体的な接触を通じて、安心感や愛情を伝えることは十分に可能です。
スキンシップを取り入れる工夫
スキンシップを取り入れる工夫
1手を握る
両手で優しく包み込むように手を握ることで、温もりと安心感を伝えられます。強く握りすぎず、本人の反応を見ながら力加減を調整しましょう。
2肩や背中にそっと触れる
不安そうな様子のときや、話しかけても反応が薄いときは、肩や背中にそっと手を添えるだけでも、そばにいることを伝えられます。
3一緒に座って寄り添う
会話が難しくても、隣に座って同じ時間を過ごすこと自体が、安心感を伝える関わりになります。
4表情と声のトーンを添える
触れる際は、穏やかな表情と優しい声のトーンを合わせることで、より安心感が伝わりやすくなります。
💬 「言葉が出ないと、通じ合えないと思っていました」
💬 「言葉が出ないと、通じ合えないと思っていました」
介護経験者からのアドバイス
「祖母が話せなくなったとき、何を話せばいいのか分からず、面会に行くのがつらい時期がありました。でも、手を握るだけで、祖母が握り返してくれた瞬間、確かにつながっていると感じたんです。
言葉がすべてじゃないんだと、祖母が教えてくれました。今は無理に会話をしようとせず、ただそばにいて手を握る時間を大切にしています。」
スキンシップを行う際の注意点
スキンシップを行う際の注意点
- 本人の様子をよく観察し、嫌がる様子(手を引く、身をこわばらせるなど)が見られたら無理をしない
- 触れる前に「手を握ってもいいですか」など、穏やかに声をかけてから行う
- 性別や関係性によっては、本人が不快に感じる場合もあるため、様子を見ながら加減する
本人にとって心地よい距離感には個人差があります。すべての方が触れ合いを好むわけではないことも念頭に置きましょう。
こんな時は専門家に相談
こんな時は専門家に相談
- スキンシップに対して強い拒否や不快な反応が続く
- 皮膚の状態(褥瘡や炎症など)に気になる変化がある
- 触れることでかえって不安や興奮が強まる様子が見られる
こうした場合は、無理に続けず、ケアマネジャーや看護師、かかりつけ医に相談してください。
まとめ:言葉がなくても、心は通じ合える
まとめ:言葉がなくても、心は通じ合える
言葉での会話が難しくなっても、手を握る、そっと触れるといったスキンシップを通じて、温もりと安心感を伝えることができます。言葉に頼らないつながりを大切にすることが、最期まで本人との心の交流を保つ助けになります。
実践のステップ
両手で優しく包み込むように手を握り、力加減は本人の反応を見ながら調整する
反応が薄いときや不安そうなときは肩や背中にそっと手を添える
会話が難しくても隣に座って同じ時間を過ごす
触れる際は穏やかな表情と優しい声のトーンを添える
触れる前に『手を握ってもいいですか』と声をかけてから行う
嫌がる様子が見られたら無理をせず距離を調整する
注意点
スキンシップに対して強い拒否や不快な反応が続く場合、皮膚の状態に気になる変化がある場合、触れることでかえって不安や興奮が強まる場合は、無理に続けず、ケアマネジャーや看護師、かかりつけ医に相談してください。
応用・バリエーション
本人が特定の触れ方(手より肩を好むなど)に反応が良い場合は、その方法を優先しましょう。ペットや柔らかい毛布など、人以外の温もりが安心感につながる場合もあります。
まとめ
このヒントのポイント
言葉が難しくなっても触れ合いによる安心感は伝わりやすい
手を握る、肩に触れるなどのスキンシップが有効
穏やかな表情や声のトーンを合わせるとより伝わりやすい
本人の反応をよく観察し、嫌がる様子があれば無理をしない
強い拒否や皮膚の変化がある場合は専門家に相談する
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