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一口大に切り、食べやすい形状にする

咀嚼・嚥下機能に合わせた工夫で誤嚥を防ぐ

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

噛む力や飲み込む力(咀嚼・嚥下機能)は、外見からは分かりにくく、進行とともに気づかないうちに低下していきます。食材を小さく、食べやすい形状に切ることは、誤嚥や窒息を防ぐための基本的で重要な工夫です。

体験談

母(83歳、アルツハイマー型認知症)の食事介助をしていたある日、大きめに切ったから揚げを口に入れた母が、急に激しくむせ込みました。慌てて背中をさすり、なんとか吐き出させることができましたが、その瞬間は本当に肝が冷えました。

それまで、母の食欲が落ちないようにと、見た目や食べ応えを重視して、料理を大きめに切って出していました。しかし、この出来事をきっかけに訪問看護師さんに相談したところ、「噛む力や飲み込む力(嚥下機能)は、見た目では分かりにくいですが、進行とともに徐々に低下していきます。今の母様の状態には、もう少し小さく、食べやすい大きさに切る必要があるかもしれません」と教えられました。

それから、肉や野菜は一口大よりもさらに小さめに切り、繊維の多い食材は繊維を断ち切る方向に包丁を入れる、皮は取り除くなど、細かい工夫を重ねるようにしました。最初は「小さく切ると味気なくなるのでは」と心配しましたが、母はむしろ以前よりも落ち着いて食事を楽しめるようになり、むせ込む回数も明らかに減りました。

「まだ大丈夫だろう」という思い込みが、実は危険と隣り合わせだったのだと、あの日のむせ込みが教えてくれました。

83歳の母(アルツハイマー型認知症)の食事介助をする54歳娘

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なぜ食べやすい大きさに切ることが重要なのか

加齢や認知症の進行に伴い、食べ物を噛み砕く力(咀嚼機能)や、噛んだ食べ物を安全に飲み込む力(嚥下機能)は徐々に低下していきます。これらの機能低下は外見からは分かりにくく、「まだ大丈夫だろう」という思い込みから、食材の大きさや硬さの調整が後手に回ってしまうことがあります。

大きすぎる、あるいは硬すぎる食材は、うまく噛み砕けないまま飲み込まれ、喉に詰まる窒息事故や、気管に入り込む誤嚥性肺炎のリスクを高めます。食材の切り方を本人の咀嚼・嚥下機能に合わせて調整することは、事故予防の基本かつ重要な工夫です。

食べやすい形状にする工夫

1一口大よりさらに小さく切る

目安として、一口大(2〜3cm角)よりもさらに小さく、1〜1.5cm程度に切ることで、噛む負担を減らせます。特に嚥下機能が低下している場合は、より細かくする必要があります。

2繊維を断ち切る方向に切る

肉や繊維質の野菜(ごぼう、たけのこなど)は、繊維に沿って切るとかみ切りにくくなります。繊維を断ち切る方向(繊維に対して直角)に包丁を入れることで、噛みやすくなります。

3皮や筋、種を取り除く

トマトの皮、豆類の薄皮、果物の種など、口の中に残りやすい部分は事前に取り除いておきましょう。

4加熱時間を長くして柔らかくする

野菜は通常より長めに加熱し、箸やフォークで簡単につぶれるくらいの柔らかさを目安にすると安全です。

5パサつきやすい食材にはとろみやあんをかける

パンや焼き魚など、パサつきやすい食材は、口の中でまとまりにくく、むせの原因になります。あんかけやソースを活用してまとまりやすくしましょう。

💬 「小さく切ると味気なくなると思っていました」

介護経験者からのアドバイス

「大きく切った方が『ちゃんと食べている』満足感があると思い込んでいましたが、実際にはそれが命に関わるリスクになっていたと知って、本当に怖くなりました。

小さく切ることで見た目が寂しくならないよう、彩りや盛り付けを工夫するようにしています。安全と食欲の両方を大切にできる工夫はいろいろあるので、諦めずに試してみてほしいです。」

食事中に気をつけたいサイン

  • 食事中や食後にむせることが増えた
  • 口の中に食べ物をため込んで飲み込まない
  • 食事に時間がかかるようになった
  • 食後に声がガラガラする(湿性嗄声)

こうしたサインが見られる場合は、咀嚼・嚥下機能がさらに低下しているサインかもしれません。

こんな時は医療機関に相談

  • 食材を小さく切っても、むせ込みが頻繁に起こる
  • 食後に発熱を繰り返す(誤嚥性肺炎の可能性)
  • 飲み込みにくさが急激に進んだ

こうした場合は、家庭での工夫だけで対応せず、かかりつけ医や言語聴覚士、栄養士に相談し、食事形態について専門的な評価を受けてください。

まとめ:見た目では分からない変化に、切り方で備える

咀嚼・嚥下機能の低下は、日々の生活の中では気づきにくいものです。「まだ大丈夫」と思い込まず、食材を小さく、食べやすい形状に切る工夫を日常的に取り入れることが、誤嚥や窒息といった重大な事故を防ぐ基本になります。

実践のステップ

  1. 食材は一口大よりさらに小さめ(1〜1.5cm程度)に切る

  2. 肉や繊維質の野菜は繊維を断ち切る方向に包丁を入れる

  3. 皮や筋、種など口の中に残りやすい部分は事前に取り除く

  4. 野菜は普段より長めに加熱し、柔らかさを確保する

  5. パサつきやすい食材にはあんかけやソースでまとまりを持たせる

  6. むせ込みや食べ物のため込みなど、咀嚼・嚥下機能低下のサインを日常的に観察する

注意点

食材を小さく切る工夫をしてもむせ込みが頻繁に起こる場合、食後に発熱を繰り返す場合、飲み込みにくさが急激に進んだ場合は、誤嚥性肺炎のリスクがあります。自己判断で様子を見ず、かかりつけ医や言語聴覚士に相談してください。

応用・バリエーション

咀嚼・嚥下機能がさらに低下している場合は、刻み食やミキサー食、市販の嚥下調整食など、より本人の状態に合わせた食事形態への切り替えを、栄養士や言語聴覚士と相談しながら検討しましょう。

まとめ

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最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編)認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版協同医書出版社 (2023)

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