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食器の色や形を工夫して視認性を上げる

認知機能の低下を環境で補う

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

白い食器に白い食べ物のように、コントラストの低い組み合わせは、食べ物の存在に気づきにくくなる原因になることがあります。色や形にコントラストをつけた食器を選ぶことで、認知機能の低下を環境面で補うことができます。

体験談

祖母(84歳、アルツハイマー型認知症)の食事量が、以前と比べて明らかに減っていることに気づいたのは、白いお茶碗に白いご飯を、白いお皿に白身魚の煮物を盛り付けていたときでした。あるとき、祖母が「これ、どこにあるの?」と、目の前にあるはずのご飯を指差せずに困っている様子を見て、はっとしました。

見え方に問題があるのかと思い調べてみると、白い食器に白い食べ物を乗せると、コントラストが低く、認知症のある方には食べ物の境界が見えにくくなることがあると知りました。半信半疑で、祖母の食器を、色のはっきりした赤やブルーの器に変えてみたところ、驚くほど反応が変わりました。ご飯もおかずも、はっきりと認識できるようになったようで、迷わず箸を伸ばすようになったのです。

さらに、汁物にも同じ色の器を使うのをやめ、汁椀と茶碗の色を変えることで、それぞれの存在に気づきやすくなったようでした。「見えていないのかもしれない」という視点を持てただけで、これまでの『食欲がない』という思い込みが、実は『見えづらくて食べられなかった』だけだったのかもしれないと気づかされました。

84歳の祖母(アルツハイマー型認知症)と同居する孫

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なぜ食器の色や形が食事に影響するのか

認知症が進行すると、視覚から得た情報を正しく処理し、意味づけする力(視空間認知)が低下することがあります。特に、色や明るさのコントラストが低い組み合わせ(白い食器に白いご飯、白い食器に白身魚など)は、健常な人には自然に見分けられても、認知症のある方には食べ物と食器の境界が分かりにくくなることがあります。

この結果、食べ物が目の前にあっても認識できず、「食欲がない」「食べる気力がない」ように見えてしまうことがありますが、実際には見え方の問題が原因になっている場合があります。食器の色や形を工夫することは、こうした視覚的な認知の困難を環境面で補う、負担の少ない工夫です。

食器選びの工夫

1食べ物とコントラストのある色の食器を選ぶ

白いご飯には赤や青など色のはっきりした茶碗を、白身魚など白っぽいおかずには、対照的な色の皿を使いましょう。

2テーブルクロスやランチョンマットとのコントラストも意識する

白いテーブルに白い食器を置くと、食器そのものの存在も認識しにくくなることがあります。テーブルと食器の色にも差をつけましょう。

3汁物と主食で異なる色の器を使う

同じ色の食器を並べると、それぞれの存在に気づきにくくなることがあります。汁椀と茶碗の色を変えることで、区別しやすくなります。

4シンプルな柄・形の食器を選ぶ

複雑な模様の食器は、食べ物との境界をかえって分かりにくくすることがあります。無地でシンプルなデザインを基本にしましょう。

5縁が高めの食器を使う

食べ物をすくう際の目安になりやすく、こぼれにくいという実用面のメリットもあります。

💬 「食欲がないと思い込んでいました」

介護経験者からのアドバイス

「祖母がご飯を残すようになったとき、単純に食欲が落ちたんだと思っていました。でも、食器の色を変えただけで、まるで別人のように食べ始めたのを見て、本当に驚きました。

『見えていないかもしれない』という視点を持てるかどうかで、対応がまったく変わるんだと実感しました。食欲不振を疑う前に、一度食器の色を見直してみる価値は十分にあると思います。」

その他の視覚的な工夫

  • テーブルの照明を明るくし、影で見えにくくならないようにする
  • 食事中に不要な物をテーブルに置かず、食べ物に注目しやすくする
  • 一度に多くの品数を並べすぎず、シンプルな配置にする

こんな時は医療機関に相談

  • 食器を工夫しても食事量の改善が見られない
  • 視力そのものの低下(白内障など)が疑われる
  • 食べ物の認識だけでなく、日常生活の他の場面でも見え方の異常が疑われる

こうした場合は、環境の工夫だけで対応せず、眼科やかかりつけ医に相談し、視力や認知機能について評価を受けることを検討してください。

まとめ:「食べない」の前に「見えているか」を考える

食事量の減少は、食欲の問題だけでなく、視覚的な認知の困難が原因になっていることがあります。食器の色や形にコントラストをつける工夫は、手間をかけずに始められる環境調整であり、本人の「食べる力」を引き出す助けになります。

実践のステップ

  1. 白いご飯には色のはっきりした茶碗を、白っぽいおかずには対照的な色の皿を使う

  2. テーブルクロスやランチョンマットと食器の色にも差をつける

  3. 汁椀と茶碗で異なる色の器を使い、それぞれの存在に気づきやすくする

  4. 複雑な柄を避け、無地でシンプルな食器を基本にする

  5. テーブルの照明を明るくし、食事中は不要な物を片付けてシンプルな配置にする

注意点

食器を工夫しても食事量の改善が見られない場合、視力そのものの低下(白内障など)が疑われる場合、他の場面でも見え方の異常が疑われる場合は、環境の工夫だけで対応せず、眼科やかかりつけ医に相談してください。

応用・バリエーション

視力低下と認知機能低下が併存している場合は、食器のコントラストに加えて、照明の明るさや位置の調整も併せて行うとより効果的です。

まとめ

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最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編)認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版協同医書出版社 (2023)

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