定期的な血液検査や画像検査で全身状態を把握
合併症の早期発見と予防
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
認知症があると、体の不調をうまく言葉で伝えられず、他の病気の発見が遅れることがあります。定期的な血液検査や画像検査を通じて全身状態を把握することが、合併症や併存疾患の早期発見につながります。
体験談
母(81歳、アルツハイマー型認知症)は、認知症の診断を受けてからというもの、通院の中心が「もの忘れ外来」になり、それ以外の定期的な健康診断は、なんとなく後回しになっていました。本人が体の不調をうまく訴えられないこともあり、「特に変わった様子もないから大丈夫だろう」と、私も油断していました。
ある時、なんとなく元気がない様子が続いたため、久しぶりに全身の血液検査を受けたところ、貧血がかなり進んでいることが分かりました。詳しく調べると、消化管からの慢性的な出血が原因で、内視鏡検査によってポリープが見つかり、治療が必要な状態でした。
医師からは、「認知症があると、体の不調をうまく言葉で伝えられないことが多いので、定期的な血液検査や画像検査で、全身の状態を客観的に把握することが大切です」と説明を受けました。
認知症の治療にばかり気を取られ、他の病気のリスクへの意識が薄れていたことを反省しました。それ以来、認知症の受診と並行して、年に一度は全身の健康診断を受けるようにしています。
— 81歳の母(アルツハイマー型認知症)を介護する53歳娘
詳しく知る
なぜ全身の検査が見落とされがちなのか
なぜ全身の検査が見落とされがちなのか
認知症の診断を受けると、通院の意識が「もの忘れ外来」に集中しがちになり、それ以外の健康診断や検査が後回しになることがあります。また、認知症のある方は、体のどこかに不調があっても、「痛い」「だるい」といった感覚をうまく言葉で伝えられないことが多く、周囲が異変に気づきにくいという特有の難しさがあります。
この結果、貧血、糖尿病、腎機能の低下、がんなど、本来であれば早期発見・早期治療が可能な病気が、症状がかなり進行するまで見過ごされてしまうことがあります。定期的な血液検査や画像検査は、本人の訴えに頼らずに、客観的な数値やデータから体の状態を把握するための重要な手段です。具体的な工夫は下の実践のステップを参考にしてください。
💬 「認知症の治療にばかり気を取られていました」
💬 「認知症の治療にばかり気を取られていました」
介護経験者からのアドバイス
「もの忘れ外来に通うことに気を取られ、他の健康診断をすっかり後回しにしていました。貧血が進んでいたと分かったときは、本当に反省しました。
定期的な血液検査を再開してからは、母の体調の変化にも気づきやすくなり、安心感が増しました。認知症の治療と並行して、全身の健康にも目を向けることの大切さを学びました。」
検査を継続するための工夫
検査を継続するための工夫
- かかりつけ医に、認知症の受診時に併せて基本的な血液検査を依頼できないか相談する
- 自治体の特定健診やがん検診の案内を活用する
- 検査結果は家族が保管し、経年的な変化を追えるようにする
実践のステップ
貧血・肝機能・腎機能・血糖値などの基本的な血液検査を年に1〜2回受ける
年齢相応のがん検診(胃がん・大腸がん検診など)を継続する
本人が言葉で伝えられない不調を表情や様子の変化として記録する
認知症の主治医と他の持病の医師の間で検査結果を共有する
採血や画像検査への不安を減らすため事前説明や家族の付き添いを工夫する
注意点
食欲不振・体重減少・活気の低下が続く場合、顔色が悪い・息切れしやすいなど貧血を疑わせる様子がある場合、いつもと違う痛みや不快感を示す仕草が見られる場合は、様子を見過ぎず、かかりつけ医に相談し必要な検査を受けてください。
こんな場合は当てはまらないことも
この項目は認知症の診断後も定期的な血液検査・画像検査を継続することを勧める内容だが、他の持病ですでに定期的な採血や画像検査を受けている場合は、重複した検査を新たに追加する必要はなく、その検査結果を認知症の主治医とも共有し、全身状態の把握に活用することを優先してほしい。
応用・バリエーション
検査そのものへの抵抗が強い場合は、訪問診療医に自宅での採血を依頼できる場合があります。かかりつけ医やケアマネジャーに相談してみましょう。
まとめ
このヒントのポイント
認知症があると体の不調を言葉で伝えられず他の病気の発見が遅れることがある
定期的な血液検査・画像検査で全身状態を客観的に把握する
がん検診など年齢相応の検診も継続することが望ましい
表情や様子の変化を記録すると検査のきっかけになる
貧血や体調変化のサインがあれば速やかに医療機関に相談する
関連するヒント
根拠について:認知症のある方は自覚症状を訴えにくく他疾患の発見が遅れやすいため定期的な検査による全身管理が重要という考え方は老年医学の分野で広く支持されている。