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車椅子・杖の使い方を練習

安全な移動補助具の活用

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

車椅子や杖は、用意するだけでなく、正しい調整と使い方の練習が必要です。適切に使えていないと、かえって転倒などの事故につながることがあります。専門家の指導を受けながら練習することが、安全な移動の基本です。

体験談

祖父(86歳、アルツハイマー型認知症、脚力の低下あり)に杖を用意したとき、「これを使ってね」と手渡すだけで、あとは本人任せにしていました。しかし祖父は、杖の長さが合っていないまま、いつも通り足を踏み出すタイミングと杖をつくタイミングがバラバラで、かえって転びそうになる場面が何度もありました。

リハビリの理学療法士さんの訪問時に相談すると、「杖は、ただ渡すだけでなく、正しい長さの調整と、使い方の練習が必要です」と言われ、思っていた以上に奥が深いことに驚きました。

理学療法士さんの指導のもと、祖父の身長に合わせて杖の長さを調整し、「杖、悪い方の足、良い方の足」という順番で足を運ぶ練習を、何度も一緒に繰り返しました。最初はぎこちなかった祖父の動きも、練習を重ねるうちに、リズムを掴んできたようでした。

道具を用意するだけで満足していた自分を反省しました。正しい使い方を一緒に練習することで、初めて道具が本来の役割を果たせるのだと実感しました。それ以来、外出前には必ず杖の高さと使い方を確認する習慣がついています。

— 86歳の祖父(アルツハイマー型認知症)を介護する孫

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なぜ使い方の練習が必要なのか

杖や車椅子といった移動補助具は、正しく調整され、適切な使い方をして初めて、本来の安全性を発揮します。長さが合っていない杖や、使い方が定まらないまま使用すると、バランスを崩しやすくなり、かえって転倒のリスクを高めてしまうことがあります。

また、認知症があると、新しい動作の手順を覚えることが難しく、一度説明しただけでは正しい使い方が定着しないことも少なくありません。繰り返しの練習と、体で覚えるまでの継続的なサポートが必要です。具体的な工夫は下の実践のステップを参考にしてください。

💬 「渡すだけで満足していました」

介護経験者からのアドバイス

「杖を用意すれば、あとは本人が使いこなしてくれるものだと思い込んでいました。実際には、正しい長さや使い方が分かっていないと、かえって危険なんだと知って驚きました。

専門家の指導のもとで一緒に練習するようになってから、祖父の歩き方が明らかに安定しました。道具を『用意する』ことと『使えるようにする』ことは別なのだと学びました。」

車椅子を使う場合の注意点

  • ブレーキの位置と使い方を、介助者・本人双方が理解しておく
  • 段差やスロープでは、無理に急がず、ゆっくり移動する
  • フットレストの上げ下げを忘れず、足の巻き込み事故を防ぐ

実践のステップ

  1. 杖の長さや車椅子のフィッティングを理学療法士や福祉用具専門相談員に調整してもらう

  2. 『杖、悪い方の足、良い方の足』など動作の順番を声に出しながら繰り返し練習する

  3. 手すりのある廊下など安全な環境で練習する

  4. 外出前に毎回、杖の高さや車椅子のブレーキの状態を確認する

  5. 体調や筋力の変化に応じて定期的に専門家に補助具を見直してもらう

注意点

杖や車椅子の使用にもかかわらず転倒やヒヤリハットが続く場合、使い方がなかなか定着しない場合、体力や筋力の低下が進み今の補助具が合わなくなってきた場合は、自己判断で使い続けず、理学療法士やケアマネジャーに相談してください。

こんな場合は当てはまらないことも

記憶障害が強い場合、前回練習した『杖の使い方』を翌日には覚えていないことがあり、練習を積み重ねて徐々に身につけるという前提そのものが成立しにくいことがあります。その場合は、本人に動作を覚えてもらうことよりも、介助者が毎回同じ手順で声をかけ、動作を都度サポートする方が現実的なこともあります。

応用・バリエーション

認知機能の低下により手順を覚えるのが難しい場合は、介助者が常に隣について声をかけながら誘導する方法や、四点杖など、より安定性の高い補助具への切り替えも検討しましょう。

まとめ

関連するヒント

根拠について:移動補助具の適切な調整と使用練習が転倒予防に資するという考え方はリハビリテーション医学において広く支持されているが、必要な補助具や練習方法は個人の身体状況により異なる。

最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編). 認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版. 協同医書出版社 (2023)

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