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公共交通機関はラッシュを避ける

混雑時を避けてストレスを軽減

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

満員電車やバスなど、人が密集し騒がしい環境は、認知症のある方に強いストレスや混乱を与えることがあります。ラッシュ時を避け、比較的空いている時間帯を選ぶことで、公共交通機関での移動の負担を軽減できます。

体験談

父(81歳、アルツハイマー型認知症)と通院のため、平日の朝8時台の電車に乗ったことがありました。満員に近い車内で、大勢の人に囲まれ、父は次第に表情をこわばらせ、「降ろして、ここから出して」と大きな声を出し始めてしまいました。周囲の視線も気になり、私自身もパニックに近い状態になりながら、次の駅で慌てて降りました。

それ以来、電車での外出そのものに苦手意識を持つようになっていましたが、ケアマネジャーさんに相談すると、「ラッシュ時を避けて、比較的空いている時間帯を選んでみてください」とアドバイスされました。

次の通院では、あえて午前10時台の、比較的空いている時間の電車を選びました。座席にも余裕があり、父は落ち着いた様子で外の景色を眺めながら、穏やかに過ごすことができました。

同じ「電車に乗る」という行為でも、時間帯を変えるだけでこれほど違うのかと驚きました。それ以来、通院の予約時間も、できる限り混雑を避けられる時間帯に調整するようにしています。

— 81歳の父(アルツハイマー型認知症)を介護する53歳息子

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なぜ混雑が強いストレスになるのか

満員電車やバスの中は、多くの人が密集し、車内アナウンスや話し声、揺れなど、さまざまな刺激が同時に押し寄せる環境です。認知症のある方は、複数の刺激を同時に処理する力(注意の分割機能)が低下しやすく、こうした環境では通常以上に大きなストレスを感じることがあります。

また、体が密着するほどの混雑は、身体的な不快感や、逃げ場のない状況への恐怖感にもつながり、大きな声を出す、落ち着きなく動き回るといった行動として表れることがあります。ラッシュ時を避けるという単純な工夫が、こうしたストレスを大きく軽減する助けになります。具体的な工夫は下の実践のステップを参考にしてください。

💬 「電車に苦手意識を持ってしまいました」

介護経験者からのアドバイス

「満員電車で父がパニックのようになったとき、正直私自身も混乱してしまいました。それ以来、電車での外出を避けるようになっていましたが、時間帯を変えるだけでこんなに違うと知って、もっと早く気づけばよかったと思いました。

通院の予約時間を調整するという、ほんの少しの工夫で、父も私も外出への負担がぐっと減りました。」

移動手段の選択肢を広げる

公共交通機関にこだわらず、タクシーの利用や、自治体の福祉輸送サービス、家族の送迎など、複数の移動手段を状況に応じて使い分けることも検討しましょう。

実践のステップ

  1. 朝夕のラッシュ時間帯(7時台後半〜9時、17時台後半〜19時頃)を避けて移動する

  2. 通院などの予約時間を混雑時間帯にかからないよう調整する

  3. 始発駅からの乗車や優先席付近の利用など座れる可能性を高める工夫をする

  4. 混雑した場合に備え途中下車や休憩、タクシーへの切り替えなど代替手段を想定しておく

  5. 音の刺激が苦手な場合はイヤーマフなどで負担を軽減する

注意点

時間帯を調整しても公共交通機関の利用に強い不安や混乱が続く場合、外出そのものへの意欲が著しく低下している場合、移動手段の確保自体が難しく通院に支障が出ている場合は、ケアマネジャーに相談し利用できる福祉サービスについて情報を得てください。

こんな場合は当てはまらないことも

地方や公共交通機関の本数が少ない地域では、そもそも『混雑する時間帯を避けて選ぶ』余地自体がないことがあります。1日数本しかバスが来ない地域では、時間帯の調整よりも、福祉有償運送や介護タクシーなど別の移動手段を確保することの方が現実的な解決になる場合があります。

応用・バリエーション

公共交通機関の利用そのものが難しい場合は、自治体の福祉有償運送サービスやタクシー券の利用など、他の移動手段への切り替えも検討しましょう。

まとめ

関連するヒント

根拠について:混雑した環境が認知症のある方にストレスを与えやすいという考え方は認知症ケアの実践知として広く共有されているが、個人差が大きく、対応方法の効果を厳密に検証した研究は限定的である。

最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編). 認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版. 協同医書出版社 (2023)

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