転倒防止のため段差をなくし、手すりをつける
住環境の整備で事故を予防
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
長年住み慣れた家であっても、わずかな段差や手すりの不足が、転倒事故につながることがあります。段差の解消と手すりの設置は、住み慣れた環境だからこそ見落としがちな、基本的で重要な安全対策です。
体験談
母(80歳、アルツハイマー型認知症)と暮らす実家は、昔ながらの造りで、部屋と部屋の間に小さな段差がいくつもありました。長年住んでいる家だからと油断していましたが、ある日、リビングから廊下に出る際のわずか3センチほどの段差に母がつまずき、転倒してしまいました。幸い骨折はありませんでしたが、腰を強く打ち、しばらく歩くのもつらそうな様子でした。
「長年住んでいるから大丈夫」という思い込みがあったことを反省し、地域包括支援センターに相談したところ、福祉住環境コーディネーターの方に自宅を見てもらう機会を得ました。「わずかな段差でも、加齢や認知機能の低下によって、足が上がりにくくなっていたり、段差自体を認識しにくくなっていたりすることがあります」と説明を受け、思っていた以上に見落としがちなリスクだと知りました。
それから、段差にはスロープを設置し、廊下やトイレ、玄関には手すりを取り付けました。介護保険の住宅改修費支給制度を利用できることも教えてもらい、費用面の負担も軽減できました。
工事後、母は手すりを使いながら、以前より安定した様子で移動できるようになりました。「慣れた家だから安全」という思い込みが、実は一番の落とし穴だったのだと痛感しました。
— 80歳の母(アルツハイマー型認知症)と暮らす52歳娘
詳しく知る
なぜ住み慣れた家でも転倒が起こるのか
なぜ住み慣れた家でも転倒が起こるのか
長年暮らしてきた家は、間取りや段差が体に染み付いているため、安全だと思い込みがちです。しかし、加齢や認知症の進行に伴い、足を上げる高さの調整(すり足になりやすい)や、段差そのものを視覚的に認識する力が低下することがあります。
これまで問題なく通れていた場所でも、身体機能や認知機能の変化によって、突然リスクの高い場所に変わることがあります。「慣れているから大丈夫」という思い込みを手放し、定期的に住環境を見直す視点が必要です。具体的な工夫は下の実践のステップを参考にしてください。
💬 「慣れた家だから大丈夫だと思っていました」
💬 「慣れた家だから大丈夫だと思っていました」
介護経験者からのアドバイス
「長年住んでいる実家だから、危険な場所なんてないと思い込んでいました。でも、わずか3センチの段差で母が転倒したとき、その思い込みがどれほど危険だったかを痛感しました。
専門家に見てもらって初めて気づいた危険箇所がいくつもありました。『住み慣れているから安全』ではなく、定期的に見直す視点を持つことの大切さを学びました。」
実践のステップ
部屋の間の小さな段差にスロープを設置する
廊下・トイレ・浴室・玄関に手すりを取り付ける
滑りやすい床材やめくれやすい敷物を見直し、滑り止めを施す
廊下や階段の照明を明るくする
福祉住環境コーディネーターや理学療法士に自宅を見てもらう
介護保険の住宅改修費支給制度をケアマネジャーに相談してから活用する
注意点
環境を整えても転倒やヒヤリハットが繰り返される場合、歩行状態が急激に不安定になってきた場合、転倒後に痛みや腫れなど怪我が疑われる症状がある場合は、環境整備だけで対応せず、かかりつけ医や理学療法士に相談してください。
こんな場合は当てはまらないことも
賃貸住宅では大家の許可が下りず、手すり設置などの改修ができないことがあります。介護保険の住宅改修費支給にも上限(原則20万円まで)があり、大掛かりな改修は自己負担が大きくなる場合もあります。また、認知機能の状態によっては、新しく設置した手すりの位置や使い方自体を覚えられず、十分に活用されないこともあります。その場合は、環境を変えることに加えて、見守りの体制を厚くする方法も検討してください。
応用・バリエーション
賃貸住宅などで大きな改修が難しい場合は、置き型の手すりや、粘着式の滑り止めシートなど、工事を伴わない対策から始めることもできます。
まとめ
このヒントのポイント
住み慣れた家でも身体・認知機能の変化で転倒リスクが生じる
段差の解消と手すりの設置が基本的な対策
床材や照明の見直しも転倒予防に役立つ
介護保険の住宅改修費支給制度を活用できる場合がある
転倒が繰り返される場合は専門家に相談する
関連するヒント
根拠について:住環境整備(段差解消・手すり設置)が高齢者の転倒予防に資するという考え方は老年医学・リハビリテーションの分野で広く支持されているが、必要な対策は個人の身体状況により異なる。