地域のボランティアや行事に参加
役割を持つことで自己肯定感を維持
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
認知症の診断を機に、地域での役割をすべて辞退してしまうと、本人の自己肯定感の低下につながることがあります。無理のない範囲で、地域のボランティアや行事への参加を続けることが、「役に立っている」という感覚を保つ助けになります。
体験談
父(79歳、アルツハイマー型認知症)は、長年、地域の自治会活動に熱心に取り組んできた人でした。診断を受けてからは、「もう役に立てないだろう」と、私自身が本人に代わって、自治会の役職を辞退する手続きを進めようとしていました。
そのことを民生委員の方に伝えると、「すべてを辞退するのではなく、できる範囲での関わりを続けられないか、一緒に考えてみませんか」と提案されました。相談の結果、役職からは退きつつも、地域の清掃活動や、夏祭りの準備を手伝う係として、無理のない範囲で関わり続けてもらうことになりました。
最初は「迷惑をかけるのでは」と心配でしたが、実際に活動に参加した父は、周囲の方々に温かく迎えられ、簡単な作業を任されると、真剣な表情で取り組んでいました。「ありがとう、助かったよ」と声をかけられた父が、誇らしげな表情を見せたのが印象的でした。
すべてを取り上げるのではなく、できる形で役割を持ち続けることが、父の自己肯定感を保つ上で、これほど大切だったのだと気づかされました。
— 79歳の父(アルツハイマー型認知症)を介護する51歳息子
詳しく知る
なぜ地域での役割が重要なのか
なぜ地域での役割が重要なのか
長年、地域社会の中で何らかの役割を担ってきた人にとって、その役割は、自分の存在意義や自己肯定感と深く結びついていることがあります。認知症の診断を機に、すべての役割を一律に取り上げてしまうことは、本人から「自分は役に立てる存在だ」という感覚を奪うことにつながりかねません。
一方で、以前と全く同じ責任を担い続けることは、本人にも周囲にも負担が大きい場合があります。役職や責任の重さを調整しながら、無理のない範囲で地域との関わりを続けることが、本人の尊厳と安全のバランスを取る鍵になります。
地域での関わりを続ける工夫
地域での関わりを続ける工夫
1すべてではなく、できる部分を見極める
責任の重い役職からは退きつつも、清掃活動や行事の準備など、負担の少ない形での関わりを探しましょう。
2地域の関係者に事情を伝えて相談する
民生委員や自治会の関係者に、本人の状況を伝え、どのような関わり方であれば続けられるか、一緒に考えてもらいましょう。
3見守りのある環境で参加する
家族や、事情を理解している地域の方が近くにいる環境で参加することで、安全に配慮しながら関わりを続けられます。
4感謝の言葉を大切にする
地域の方から「ありがとう、助かったよ」といった感謝の言葉をかけてもらえる場面は、本人の自己肯定感を大きく支えます。
5本人の反応を見ながら調整する
負担が大きいと感じる様子が見られた場合は、無理をせず、関わり方をさらに調整しましょう。
💬 「すべて辞退させようとしていました」
💬 「すべて辞退させようとしていました」
介護経験者からのアドバイス
「『もう迷惑をかけるだけだろう』と、父に代わってすべての役割を辞退させようとしていました。でも、民生委員の方に相談したことで、できる形で関わりを続ける道があると気づきました。
実際に活動に参加し、感謝の言葉をかけられた父の誇らしげな表情を見て、役割を持ち続けることの大切さを実感しました。すべてを取り上げるのではなく、できることを一緒に探す視点が大切だと学びました。」
周囲の理解を得るための工夫
周囲の理解を得るための工夫
- 認知症についてオープンに伝え、理解を得ながら関わりを続ける
- 地域包括支援センターに相談し、認知症サポーターなど、理解のある協力者を探す
- 無理な役割を任されそうな場合は、家族が調整役として間に入る
こんな時は関わり方を見直すべき
こんな時は関わり方を見直すべき
- 活動中に強い混乱や疲労を示す
- 責任の重さが本人の負担になっている様子がある
- 周囲の理解が得られず、本人が居心地の悪さを感じている
こうした場合は、無理に続けさせようとせず、ケアマネジャーや地域の関係者と相談しながら、関わり方を見直しましょう。
まとめ:役割を通じて、自己肯定感を保つ
まとめ:役割を通じて、自己肯定感を保つ
認知症の診断を機に、地域での役割をすべて取り上げてしまうことは、本人の自己肯定感を損なうことがあります。無理のない範囲で、できる形での参加を続けることが、「自分は役に立てる」という感覚を保ち、本人の尊厳を支える力になります。
実践のステップ
責任の重い役職からは退きつつも清掃活動など負担の少ない関わり方を探す
民生委員や自治会の関係者に事情を伝えどのような関わり方が可能か相談する
家族や事情を理解している地域の人が近くにいる環境で参加する
地域の方からの感謝の言葉を大切にする
本人の様子を見ながら負担が大きければ関わり方を調整する
注意点
活動中に強い混乱や疲労を示す場合、責任の重さが本人の負担になっている様子がある場合、周囲の理解が得られず本人が居心地の悪さを感じている場合は、無理に続けさせようとせず、ケアマネジャーや地域の関係者と相談しながら関わり方を見直してください。
応用・バリエーション
地域活動への参加が難しい場合は、家庭内での役割(新聞を取ってくる、庭の水やりなど)を通じて、同じように『役に立っている』という感覚を保つ方法もあります。
まとめ
このヒントのポイント
地域での役割の喪失は自己肯定感の低下につながることがある
すべてではなくできる部分を見極めて関わりを続けることが大切
地域の関係者への相談と見守りのある環境での参加が鍵
感謝の言葉が本人の自己肯定感を大きく支える
負担が大きい様子があれば無理せず関わり方を見直す
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