「何をやっても聞かない」と感じたときは、2分の無料チェックで、受診時に伝えるべきことを整理できます。

2分でチェック
🚽排泄•3分で読める

失禁時は責めずに、さりげなく対応

プライドを傷つけない介助

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

失禁は本人にとって強い羞恥心や自己否定感を伴う出来事です。驚いた反応や責める言葉を避け、さりげなく、日常の延長のように対応することが、本人のプライドと尊厳を守ることにつながります。

体験談

母(79歳、アルツハイマー型認知症)が初めて失禁したとき、私は驚きと戸惑いから、つい「あら、どうしたの」と大きな声を出してしまいました。母は顔を真っ赤にして、その場から動けなくなり、「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度も謝りました。その様子を見て、自分の反応がどれほど母を傷つけたかに気づき、深く後悔しました。

それ以来、失禁があったときは、できるだけ表情や声のトーンを変えず、「あら、着替えましょうか」と、まるで何でもないことのように振る舞うよう心がけました。母を責めるような言葉は一切使わず、さりげなく着替えを手伝い、汚れた衣類もその場で目立たないようにさっと片付けるようにしました。

訪問看護師さんからも、「失禁は本人にとって最も傷つきやすい出来事の一つです。淡々と、日常の延長のように対応することが、本人の尊厳を守ることにつながります」と教えられました。

完璧に平静を装うのは簡単ではありませんでしたが、母が以前のように委縮した様子を見せなくなったことで、この対応の大切さを実感しています。

— 79歳の母(アルツハイマー型認知症)を介護する52歳娘

詳しく知る

なぜさりげない対応が大切なのか

失禁は、多くの人にとって長年「自分で完全にコントロールできて当たり前」とされてきた身体機能です。それが思うようにいかなくなることは、本人にとって強い羞恥心や、自分の尊厳が損なわれたと感じる出来事になり得ます。

認知症があっても、こうした感情そのものは保たれていることが多く、介護者の驚いた反応や責めるような言葉は、本人に深い傷を残すことがあります。逆に、介護者が動揺せず、日常の延長のように淡々と対応することで、本人の羞恥心を最小限に抑え、安心感を保つことができます。具体的な対応方法は下の実践のステップを参考にしてください。

💬 「大きな声を出してしまい、後悔しました」

介護経験者からのアドバイス

「最初の失禁のとき、驚いて大きな声を出してしまい、母をひどく傷つけてしまいました。あの時の母の表情は、今でも忘れられません。

淡々と対応することを意識するようになってから、母が委縮する様子が減りました。介護する側にも心の余裕が必要ですが、まず『驚かない』と決めておくだけでも、とっさの反応はずいぶん変わると思います。」

介護者自身の気持ちの整理

失禁への対応が続くと、介護者自身も疲労や苛立ちを感じることは自然なことです。その気持ちを本人にぶつけないよう、とっさに気持ちを切り替える方法や、負担が大きいと感じたときの対応をあらかじめ決めておくことも大切です。具体的な工夫は下の実践のステップを参考にしてください。

実践のステップ

  1. 失禁に気づいても驚いた表情や大きな声を出さない

  2. 責める言葉を使わず『着替えましょうか』など次の行動を促す言葉に切り替える

  3. 汚れた衣類やシーツは他の家族や来客の目に触れないよう手早く片付ける

  4. 『大丈夫ですよ』など安心感を伝える一言を添える

  5. 定時のトイレ誘導など予防的な工夫も組み合わせる

  6. 深呼吸に加え、いったんその場を離れて水を飲むなど、とっさに気持ちを切り替える行動を事前に決めておく

  7. 『あら、着替えましょうか』のような対応の決まり文句を用意し、感情が動いても手順で体を動かせるようにしておく

  8. 同じ場面で苛立ちが強く繰り返し出る場合は負担が限界に近づいているサインと捉え、家族内で交代する・ケアマネジャーに相談するなど負担そのものを減らす対応を検討する

注意点

失禁の頻度が急激に増えた場合、失禁後に本人が強い自己否定感や気分の落ち込みを示している場合、発熱や排尿時の痛みなど尿路感染症を疑わせる症状を伴う場合は、かかりつけ医やケアマネジャーに相談してください。

こんな場合は当てはまらないことも

さりげなく対応することは多くの方にとって尊厳を守る関わり方ですが、中には『気づいていないふりをされている』『ちゃんと向き合ってもらえていない』と感じ、かえって寂しさや不信感を抱く方もいます。本人が『どう対応してほしいか』は人によって異なるため、一つの方法にこだわらず、本人の反応を見ながら関わり方の温度感を調整してください。

応用・バリエーション

本人が失敗を強く気にする性格の場合は、事後対応だけでなく、失禁が起こる前のタイミング(一定時間ごと)でさりげなくトイレに誘導する予防的な関わりを重視すると、失敗自体を減らせることがあります。

まとめ

関連するヒント

根拠について:失禁への非難的でない対応が本人の尊厳と心理的安定を守るという考え方はパーソン・センタード・ケアの理念に基づく実践知として広く共有されているが、効果を厳密に検証した比較研究は限定的である。

最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編). 認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版. 協同医書出版社 (2023)

本サイトの医療コンテンツは医師による査読を経て公開しています。

監修ポリシーを確認する →