体験談・具体的な事例
基礎知識の解説
パーキンソン病による認知症とは
パーキンソン病に伴う認知症(PDD)は、パーキンソン病の運動症状が発症してから1年以上経過した後に認知症が現れた状態を指します。レビー小体型認知症と同じ病理(αシヌクレインの蓄積)を持ちながら、症状の出現順序によって診断が区別されます。パーキンソン病患者の約30〜40%に発症します。
主な症状
- 1思考・動作の処理速度の低下(緩慢な反応)
- 2注意力・集中力の波(変動する覚醒度)
- 3視覚空間認識の障害
- 4実行機能障害(計画・段取りの困難)
- 5幻視(小人・動物・虫など)
- 6レム睡眠行動障害(夢を伴う激しい寝言・動作)
- 7抑うつ・無関心・不安
- 8既存のパーキンソン症状(振戦・筋固縮・歩行障害)の悪化
原因・メカニズム
αシヌクレインが脳幹から大脳皮質に向かって広がり、レビー小体として神経細胞に蓄積します。認知機能に関わるアセチルコリン系・ドーパミン系の両方が障害されることで、運動症状と認知症の両方が生じます。アルツハイマー病変(アミロイド・タウ)が合併することもあります。
診断
パーキンソン病の診断から1年以上後に認知症が発症したことを確認します。認知機能検査、神経心理検査(視覚空間・注意・実行機能重視)を行います。DaTスキャンでドーパミン神経の変性を確認し、心臓MIBGシンチで自律神経障害を評価します。レビー小体型認知症との鑑別は「症状の出現順序」が決め手です。
治療・ケア
コリンエステラーゼ阻害薬(リバスチグミン貼付剤が適応)が認知・行動症状に有効です。パーキンソン症状の治療薬(L-ドーパ)は継続しながら、精神症状との兼ね合いで慎重に調整します。抗精神病薬は原則禁忌(クエチアピンは例外的に使用することがある)。睡眠環境の整備とクロナゼパムがRBDに有効です。
予後・経過
PDDの発症後、平均余命は2〜5年程度です。転倒・誤嚥・肺炎が予後を悪化させます。認知症発症前から適切なリハビリ・運動療法を継続することが、進行を緩やかにする効果があります。
パーキンソン病による認知症の重要ポイント
「パーキンソン病」の後に認知症が出た場合はPDD、認知症が先行した場合はレビー小体型認知症——1年ルールで区別
リバスチグミン貼付剤が認知症に適応を持つ唯一の薬(パーキンソン病に伴う認知症)
抗精神病薬はパーキンソン症状を著しく悪化させる危険があり、原則禁忌
転倒リスクが非常に高く、住環境の整備(段差解消・手すり設置)が急務
長年のパーキンソン病介護に加わる認知症——介護者の燃え尽きへの支援が特に重要