怒りや暴言の裏にある不安や苦痛を察する
BPSD(行動・心理症状)の原因を理解し、適切に対応
ケーススタディ
グループホームで働くEさんは、利用者のFさん(80歳、血管性認知症)が服を選ぶのに毎朝30分以上かかることに困っていました。Fさんにクローゼットを開けて「どれを着ますか?」と聞くと、Fさんは迷いに迷い、時には涙を流すこともありました。
Eさんは支援方法を変えました。事前に季節と天気に合わせた服を2着選び、「こちらの青いセーターと、こちらの白いカーディガン、どちらがいいですか?」と尋ねるようにしました。
すると、Fさんは迷うことなく「青がいいわ」と即座に選べるようになりました。着替えの時間も10分以内に短縮され、Fさん自身も「自分で選べた」という満足感を得られるようになったのです。
Fさん(80歳) - 血管性認知症、グループホーム入所中
多くの選択肢は混乱と不安を招きます。選択肢は2つまでに絞り、シンプルに選べるようにすることで、自己決定を支援できます。
詳しく知る
認知症になると、複数の情報を同時に処理する能力(ワーキングメモリ)が低下します。そのため、3つ以上の選択肢があると、それぞれを比較検討することが難しくなり、混乱や不安を引き起こします。
選択肢が多すぎることの問題点は、次のようなものがあります。
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決定疲れ: 選ぶこと自体が大きなストレスになり、疲労を感じます。
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不安と混乱: どれを選べばよいか分からず、不安になります。
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自信の喪失: 選べないことで「自分はダメだ」と感じてしまいます。
選択肢を2つに絞ることで、これらの問題を回避できます。2つであれば、「AかB」という単純な比較で済み、認知的な負担が少なくなります。
また、選択肢を提示する際は、次の工夫も有効です。
- 実物を見せる: 言葉だけでなく、実際の服や食べ物を見せます。
- 特徴を簡潔に: 「赤いリンゴ」「青い服」など、色や形で区別しやすくします。
- どちらも正解: どちらを選んでも問題ない選択肢を提示します。
こうすることで、本人は自分で決定する喜びと自信を保つことができます。
実践のステップ
選択肢は必ず2つまでに絞る
事前に適切な選択肢を選んでおく(季節、好み、状況に合わせて)
言葉だけでなく、実物を見せながら提示する
「こちらと、こちら、どちらがいいですか?」とシンプルに聞く
どちらを選んでも問題ない選択肢を用意する
決められない場合は、さりげなくおすすめを示す
注意点
選択肢を絞りすぎて、本人の意思を無視してしまわないよう注意が必要です。可能であれば、事前に好みや習慣を把握しておき、本人が喜びそうな選択肢を用意しましょう。また、「どちらでもいい」と答えた場合は、その意思を尊重することも大切です。
応用・バリエーション
食事の際も同様に、「ごはんとパン、どちらがいいですか?」「お茶とコーヒー、どちらにしますか?」と2択にすることで、スムーズに選べます。外出先でも「公園と喫茶店、どちらに行きますか?」と提案できます。
まとめ
選択肢は2つまでに絞る
多すぎる選択肢は混乱とストレスを招く
実物を見せながら提示する
どちらも正解となる選択肢を用意
自己決定の機会を大切に