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刃物や鋭利なものは安全な場所に保管

怪我のリスクを減らす管理

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

包丁やハサミなどの刃物は、判断力や手先の感覚の低下により、見守りのない状況では思わぬ怪我につながることがあります。刃物を安全な場所に保管しつつ、見守りのもとでできる工夫を用意することが、意欲と安全の両方を大切にする対応です。

体験談

母(80歳、アルツハイマー型認知症)は、長年台所に立ってきた人で、今でも時々「お手伝いしたい」と包丁を手に取ろうとすることがあります。ある日、目を離した隙に、母が包丁でりんごの皮をむこうとしているのを見つけ、慌てて駆け寄りました。手元がおぼつかず、あわや指を切りそうになる場面でした。

「まだ料理ができるはず」という思いから、包丁もキッチンバサミも、以前と変わらず引き出しに入れたままにしていました。しかし、この出来事をきっかけに、ケアマネジャーさんに相談すると、「刃物は、本人の意欲を大切にしつつも、見守りのない状況では手の届かない場所に保管することをお勧めします」とアドバイスされました。

それから、包丁やキッチンバサミ、カッターナイフなどの刃物は、鍵のかかる引き出しにまとめて保管し、母が料理を手伝いたいときは、私が見守りながら、あらかじめ切っておいた食材を使ってもらう形に変えました。

完全に台所仕事から遠ざけるのではなく、「見守りのもとでできること」を工夫することで、母の意欲を大切にしながら、安全も確保できるようになりました。刃物の管理は、本人の自尊心と安全のバランスを考える良い機会になりました。

— 80歳の母(アルツハイマー型認知症)を介護する51歳娘

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なぜ刃物の管理を見直す必要があるのか

長年、料理や裁縫などで刃物を使い慣れてきた方でも、認知症が進行すると、刃先の向きへの注意力や、力加減の調整といった、安全に刃物を使うために必要な判断力が低下することがあります。本人には「まだできる」という感覚が残っていることも多く、見守りのない状況で刃物を使おうとして、思わぬ怪我につながることがあります。

刃物を完全に取り上げることは、本人の自尊心や役割意識を傷つける可能性があるため、「安全な保管」と「見守りのもとでの活用」を組み合わせたバランスの取れた対応が求められます。具体的な工夫は下の実践のステップを参考にしてください。

💬 「まだできるはずと思い込んでいました」

介護経験者からのアドバイス

「母が長年台所に立ってきた人だからこそ、包丁を使うことに特に警戒していませんでした。でも、あの日のヒヤリとした瞬間で、考えを改めました。

刃物を管理しつつ、見守りのもとでできることを用意するようにしてからは、母の『役に立ちたい』という気持ちも尊重しながら、安全も確保できるようになりました。禁止するだけが答えではないと学びました。」

家庭内の刃物を洗い出す視点

台所用品だけでなく、裁縫箱のハサミ、工具箱のカッター、爪切りなど、意外なところに刃物があることがあります。一度家中を見直し、リスクのある物を洗い出してみましょう。

実践のステップ

  1. 包丁・キッチンバサミ・カッターナイフなど家庭内の刃物を洗い出し鍵のかかる場所に保管する

  2. 料理や裁縫への意欲がある場合は見守りのもとでできる作業を用意する

  3. 安全性の高い調理はさみや安全カッターなど代替品への切り替えを検討する

  4. 使用後は刃物を本人の手の届かない場所にすぐ戻す習慣を徹底する

  5. 『一緒にやりましょう』など役割を残しつつ安全を確保する伝え方をする

注意点

すでに刃物による怪我が発生した場合、刃物へのこだわりが強く管理を変えても取り出そうとする行動が続く場合、判断力の低下が急激に進み日常生活の他の場面にも危険が及んでいる場合は、家庭内の対応だけで抱え込まず、かかりつけ医やケアマネジャーに相談してください。

こんな場合は当てはまらないことも

長年台所を任されてきた方にとって、刃物を取り上げられることは、単なる安全対策ではなく『もう任せてもらえない』という役割の喪失や、信頼を失ったという深い喪失感につながることがあります。安全を優先するあまり本人の意欲や自尊心を大きく損なわないよう、『危ないから禁止』ではなく『一緒にやりましょう』という関わり方を、管理方法とセットで考えてください。

応用・バリエーション

本人が刃物を取り上げられることに強い抵抗を示す場合は、いきなり全て隠すのではなく、使用頻度の低い物から徐々に整理する、あるいは見た目の変化が少ない収納方法を選ぶなど、段階的な移行を検討しましょう。

まとめ

関連するヒント

根拠について:刃物の施錠管理と見守り下での活用の両立が安全と意欲維持の両方に資するという考え方はパーソン・センタード・ケアの理念に基づく実践知として共有されているが、効果を厳密に検証した研究は限定的である。

最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編). 認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版. 協同医書出版社 (2023)

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