夜間の徘徊には安全対策を
センサーライトや見守りで事故防止
医療監修
Yuya Kobayashi, MD, PhD
認知症専門外来・在宅診療医
夜間の徘徊は、転倒や事故、行方不明といった深刻なリスクにつながります。センサーライトやドアセンサーなどの見守り対策を整えることは、本人の安全を守ると同時に、介護者の不安を和らげる助けにもなります。
体験談
祖父(85歳、アルツハイマー型認知症)と同居して間もない頃、深夜に物音で目を覚ますと、祖父が玄関の鍵を開けようとしている場面に遭遇し、血の気が引きました。「会社に行く」と言い、こちらの説明もほとんど耳に入らない様子で、なんとか説得して寝室に戻ってもらいましたが、その夜は一睡もできませんでした。
それ以来、いつまた同じことが起こるか分からないという不安から、私自身も熟睡できない日々が続きました。地域包括支援センターに相談したところ、「まず安全対策を整えることが最優先です」とアドバイスされ、いくつかの対策を教えてもらいました。
玄関と勝手口に補助錠を追加し、ドアが開くとチャイムが鳴るセンサーを設置しました。また、祖父の寝室からトイレまでの動線にはセンサーライトを設置し、夜中に起き出しても私が気づけるようにしました。
完全に外出を防げるわけではありませんが、少なくとも祖父が動き出した瞬間に気づける体制が整ったことで、私自身の不安が大きく軽減されました。安全対策があることで、逆に少し安心して眠れるようになったのは、意外な効果でした。
— 85歳の祖父(アルツハイマー型認知症)と同居する孫
詳しく知る
なぜ夜間の徘徊が起こるのか
なぜ夜間の徘徊が起こるのか
認知症が進行すると、見当識障害により「今が夜であること」「ここが自宅であること」を正確に認識できなくなることがあります。過去の生活習慣(「会社に行く」など)の記憶が強く呼び起こされ、その行動を実行しようとして外出を試みることもあります。
また、不安感や落ち着かなさから、何かを探すように歩き回る(徘徊)行動が見られることもあります。夜間の徘徊は、転倒や交通事故、行方不明といった重大な事故につながるリスクがあり、安全対策が欠かせません。具体的な工夫は下の実践のステップを参考にしてください。
💬 「不安で眠れない日々が続きました」
💬 「不安で眠れない日々が続きました」
介護経験者からのアドバイス
「祖父が外に出ようとしていたのを見つけたときの恐怖は、今でも忘れられません。それ以来、いつまた同じことが起こるかと不安で、私自身が眠れなくなっていました。
センサーやGPSといった対策を整えてから、『何かあってもすぐに気づける』という安心感が生まれ、私自身の睡眠も少しずつ戻ってきました。対策は本人だけでなく、介護者自身を守るためでもあると実感しています。」
徘徊そのものへの対応も合わせて
徘徊そのものへの対応も合わせて
徘徊の背景には、不安や混乱、身体的な不快感(トイレに行きたい、寒い・暑いなど)が隠れていることがあります。安全対策と合わせて、日中の活動量を増やす、就寝前の環境を整えるなど、根本的な生活リズムの見直しも併せて行いましょう。
実践のステップ
玄関・窓に補助錠を設置し、本人が一人で開けにくい位置に取り付ける
ドアが開くと音で知らせるセンサーを設置する
寝室からトイレ・玄関までの動線にセンサーライトを設置する
衣類や靴に取り付けられる小型GPS発信機を活用する
自治体の見守りネットワーク(事前登録制度)に登録する
信頼できる近隣住民や自治会にあらかじめ状況を伝えておく
注意点
夜間の徘徊が頻繁に起こり家庭での対策だけでは対応しきれない場合、実際に外出し行方不明になったことがある場合、昼夜を問わず落ち着きのなさや不安が強い場合は、一人で抱え込まず、かかりつけ医やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談してください。
こんな場合は当てはまらないことも
夜間の対策を強化しすぎると、単にトイレに行きたいだけの正当な移動まで妨げてしまい、我慢による失禁や膀胱への負担につながることがあります。徘徊を防ぐことと、夜間のトイレ移動を安全に行えるようにすることは別の課題なので、動線を塞ぐのではなく、ポータブルトイレの設置など『安全に用を足せる』選択肢も併せて用意してください。
応用・バリエーション
本人が特定の時間帯(夕方から夜にかけてなど)に落ち着かなくなる場合は、その時間帯に軽い活動や会話を取り入れる、あるいは付き添いを強化するなど、時間帯に応じた対策も組み合わせましょう。
まとめ
このヒントのポイント
夜間の徘徊は見当識障害や過去の習慣の記憶により起こることがある
補助錠・センサー・GPS機器などの安全対策が事故防止に有効
地域の見守りネットワークや近隣への事前の周知も助けになる
安全対策は本人だけでなく介護者の安心にもつながる
頻発する場合や行方不明になったことがある場合は専門家に相談する
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根拠について:センサーやGPS機器を用いた見守り対策が夜間徘徊による事故リスクの軽減に資するという考え方は在宅介護の実践知として広く共有されているが、徘徊の背景要因への対応には個別の医学的評価が必要な場合がある。