「一人で外出させていいか」「お金の管理を本人に任せていいか」など、安全に関わる判断を医師の視点から得られます。

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夜間はポータブルトイレで転倒防止

安全と自立のバランス

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医

夜間のトイレ移動は、暗さや寝ぼけによる転倒リスクが高まります。ポータブルトイレの導入は、本人の自立心に配慮しながら、夜間の安全を確保する現実的な選択肢です。

体験談

父(83歳、アルツハイマー型認知症、軽度の歩行不安定あり)は、夜中に何度もトイレに起きる習慣がありました。ある夜、私が物音で目を覚ますと、父が廊下の途中で座り込んでいました。暗い廊下を歩いている途中で転んでしまったのです。幸い大きな怪我はありませんでしたが、本当に肝を冷やしました。

それまでは「まだ自分でトイレに行けているのだから」と、夜間も特に対策をしていませんでした。しかしこの出来事をきっかけに、ケアマネジャーさんに相談し、寝室にポータブルトイレを設置することを勧められました。

最初、父は「トイレは我慢してでもちゃんと行きたい」と抵抗を示しました。プライドを傷つけているのかもしれないと感じましたが、「夜だけ、安全のために」と説明し、日中は今まで通りトイレを使ってもらう形で導入しました。

ポータブルトイレの周りには足元灯を設置し、手すり代わりになる据え置き型の台も置きました。夜間の転倒はそれ以来起きておらず、父も次第に慣れて、以前ほど抵抗を示さなくなりました。自立を大切にしたい気持ちと、安全を守りたい気持ちの間で、ちょうどいいバランスを見つけられたように感じます。

83歳の父(アルツハイマー型認知症)を介護する52歳息子

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なぜ夜間のトイレ移動が危険なのか

夜間は照明が消えていることが多く、視界が悪い中での移動になります。加えて、睡眠から覚めた直後は頭がはっきりしない状態(覚醒直後のもうろう状態)にあることが多く、判断力やバランス感覚が低下しています。認知症があると、こうした状態がより顕著になり、廊下や階段での転倒リスクが高まります。

転倒は骨折など重大な怪我につながることがあり、高齢者にとっては、その後の生活の質に大きく影響する重大なリスクです。夜間だけでもトイレまでの距離を短くする工夫は、こうしたリスクを減らす有効な対策の一つです。

ポータブルトイレを導入する工夫

1導入の目的を丁寧に説明する

「トイレに行けなくなったから」ではなく、「夜だけ、安全のために」という形で説明し、本人の自立心やプライドに配慮しましょう。

2日中は通常のトイレを使い続ける

夜間だけポータブルトイレを使う形にすることで、「まだ自分でトイレに行ける」という自尊心を保ちやすくなります。

3周辺環境を整える

ポータブルトイレの周りに足元灯を設置し、立ち上がりを支える手すりや据え置き型の台を用意しましょう。

4使いやすい位置に設置する

ベッドから見える位置、かつ移動距離が最小限で済む場所に設置すると、安全性がさらに高まります。

5臭いや音への配慮をする

消臭剤の使用や、使用後すぐに片付けるなど、本人が気兼ねなく使えるよう配慮しましょう。

💬 「プライドを傷つけるのではと悩みました」

介護経験者からのアドバイス

「ポータブルトイレを提案したとき、父が抵抗を示したのを見て、自尊心を傷つけてしまったのではと悩みました。でも、『夜だけ、安全のために』と伝え、日中は今まで通りにすることで、少しずつ受け入れてもらえました。

転倒の危険を考えると、多少の抵抗があっても、安全を優先する選択肢を用意しておくことの大切さを実感しています。」

導入がうまくいかない場合の工夫

  • 使い慣れた見た目に近いデザインの製品を選ぶ
  • 最初はお試しで数日だけ使ってもらい、様子を見る
  • 本人が信頼している家族やケアマネジャーから説明してもらう

こんな時は医療機関やケアマネジャーに相談

  • 夜間のトイレ移動中に転倒やヒヤリハットがあった
  • 夜間のトイレの回数が急激に増えた(頻尿の可能性)
  • ポータブルトイレの使用にも強い抵抗が続き、対応に困っている

こうした場合は、家庭内の工夫だけで抱え込まず、かかりつけ医やケアマネジャーに相談し、頻尿の原因評価や福祉用具の選定について助言を受けましょう。

まとめ:自立と安全、両方を大切にする

夜間のトイレ移動は、転倒という重大なリスクをはらんでいます。本人の自立心やプライドに配慮しながら、ポータブルトイレという選択肢を上手に取り入れることで、自立と安全のバランスを保つことができます。

実践のステップ

  1. 『夜だけ、安全のために』という形で導入の目的を丁寧に説明する

  2. 日中は通常のトイレを使い続け、自尊心を保てるようにする

  3. ポータブルトイレの周りに足元灯や手すり代わりの台を設置する

  4. ベッドから見える位置、移動距離が最小限で済む場所に設置する

  5. 消臭剤の使用や使用後すぐの片付けなど臭いへの配慮をする

  6. 抵抗が強い場合は使い慣れたデザインの製品を選ぶかお試し期間を設ける

注意点

夜間のトイレ移動中に転倒やヒヤリハットがあった場合、夜間のトイレの回数が急激に増えた場合、ポータブルトイレの使用にも強い抵抗が続く場合は、家庭内の工夫だけで抱え込まず、かかりつけ医やケアマネジャーに相談してください。

応用・バリエーション

歩行が比較的安定している場合は、ポータブルトイレの代わりに、寝室からトイレまでの動線に手すりやセンサーライトを設置する対策から始めるという選択肢もあります。

まとめ

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最終更新日:

参考文献

  1. [1]山口晴保(編)認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 第4版協同医書出版社 (2023)

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